バーティカルマーチャンダイジングとは?メリットや注意点を解説

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バーティカルマーチャンダイジングとは?メリットや注意点を解説
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経営において「販売戦略がうまくいかない」「店舗ごとにマーケティング戦略がバラバラで売上が安定しない」と悩んでいる方は少なくないでしょう。

自社独自の価値を創造して店舗間のマーケティング戦略を統一するには、バーティカルマーチャンダイジングが効果的です。自社が一貫して商品化計画をおこなう仕組みを取り入れると、コストの削減や業務の効率化など、さまざまなメリットを得られます。

今回はバーティカルマーチャンダイジングの基本概念や、メリットについて解説します。複数店舗の販売戦略を最適化したい方や商品化における効率を高めたい方は、ぜひ参考にしてください。

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バーティカルマーチャンダイジングとは一貫した商品化計画を推進する手法

「バーティカルマーチャンダイジング」とは、商品が顧客の手に渡るまでの全工程に対して、企業が一貫した商品化計画を実行していく仕組みです。

商品を製造して実店舗やECサイトで販売するまでには、多くのプロセスが存在します。バーティカルマーチャンダイジングでは、各プロセスの管理や体制の整備を自社でおこなうため、業務の効率化、コスト削減などの効果が期待できるでしょう。

以下は、バーティカルマーチャンダイジングのプロセス例です。

バーティカルマーチャンダイジングのプロセス例

プロセス 一貫管理の具体例 得られる効果の例
商品企画/開発 自社商品を企画/開発する
  • 自社の顧客ニーズに合った商品を製造できる
  • ブランディング効果を得られる
製造 自社工場や協力工場での製造プロセスを管理する
  • 複数の拠点を設けても製造プロセスを整備しやすい
  • 商品の安定供給をおこないやすい など
品質管理 自社で独自に定めた品質基準をもとに商品の検査をおこなう
  • 品質・安全性を一定に保てる
  • 評価基準の変更時に一律で管理できる など
物流 独自の物流網を構築し、原材料の仕入れや顧客への商品配送に用いる
  • 物流業務のコストを削減できる
  • 配送作業が効率化される など
システム 社内のIT部門で基幹システムや効率化ツールの開発/保守をおこなう
  • 自社に合うオリジナルのシステムを開発できる
  • 機能の追加/修正を素早く実行できる など
EC販売 自社アプリでEC販売をおこなう
  • 顧客ニーズに合った販売方法を実現しやすい
  • 機能追加のスピードが上がる など
実店舗販売 直営店/FCを問わず、自社独自の出店基準や接客マニュアルを設定する
  • 出店分析による候補地の選定がしやすい
  • 販売員の接客スキルや販売知識を平準化できる など
原材料調達 担当者が現地に赴き、供給元との交渉や契約を直接おこなう
  • 高品質な原材料を安定確保できる
  • 原材料の仕入コストを削減できる など
貿易 輸入に関する貿易業務を自社で担う
  • 貿易業務のコスト削減
  • スムーズな供給体制の確立 など
カスタマーサービス 社内の専用部署で問い合わせや苦情受付、アフターフォローなどの対応をおこなう
  • 顧客からの意見を素早く商品開発や改善に落とし込める
  • クレーム発生時の対応を迅速におこなえる など

このように、バーティカルマーチャンダイジングを取り入れると、一貫性のある製造販売や販促施策を実現でき、さまざまなメリットが得られます。

マーチャンダイジングとは「商品化計画」のこと

マーチャンダイジングとは「顧客ニーズに見合う商品を適切な数量、価格、タイミングなどで提供するためにおこなう戦略的な活動」を指し、主に小売業や流通業で活用されています。商品開発から仕入れや販促、販売などマーチャンダイジングに含まれる業務はさまざまですが、それらの工程で重要視されるものが「5つの適正」です。

なお、マーチャンダイジングにはバーティカルマーチャンダイジング以外にもさまざまな種類があります。「5つの適正」の具体的な内容や、マーチャンダイジングの種類について詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。

マーケティングとバーティカルマーチャンダイジングの違い

バーティカルマーチャンダイジングと似た言葉に「マーケティング」があります。マーケティングとは、商品やサービスが売れる仕組みを構築するための活動の総称です。

マーケティングで重要なのは、顧客ニーズを満たす商品・サービスを作り出して顧客に購入してもらうこと。
一方、バーティカルマーチャンダイジングで重要なのは、自社で一貫管理した商品化計画によって、適切な商品を顧客に提供することです。そのためには、マーケティングによって「何を誰に、どうやって提供すれば売れるのか」を明確にし、その内容をもとに商品化計画を進める必要があります。

結論として、バーティカルマーチャンダイジングは「マーケティング」という大きなくくりの中に含まれた戦略の1つであるといえるでしょう。

バーティカルマーチャンダイジングで得られる4つのメリット

バーティカルマーチャンダイジングの主なメリットとして、以下の4つがあります。

  • 製造から販売までのコスト削減
  • スピーディな対応が可能
  • 商品の品質と安全性の確保
  • ブランドイメージの統一とブランド力の強化

それぞれのメリットを解説します。

バーティカルマーチャンダイジングのメリット1:製造から販売までのコスト削減

バーティカルマーチャンダイジングをおこなうメリットの1つ目は、コスト削減につながることです。

製造から販売までの内製化をおこなうと、外部委託にかけていた費用を削減できます。さらに、全販売チャネルの販売状況を把握することで過剰製造や無駄な在庫を防ぎ、製造コストを減らせるでしょう。
以下は、バーティカルマーチャンダイジングで得られるコスト削減効果の例です。

  • 自社の社員による原材料の仕入れ交渉や契約によって、買付の委託にかかる手数料を削減できる
  • 全販売チャネルの販売データの管理することで、必要な原材料の量を数年先まで予測でき、ロスを減らせる
  • 貿易や輸入にかかわる業務を自社で担うことで、低コストでスムーズな供給体制を確立できる など

バーティカルマーチャンダイジングのメリット2:スピーディな対応が可能

バーティカルマーチャンダイジングによる2つ目のメリットは、スピーディで効率的な対応が可能となることです。

全ての工程を自社が統括するため、スケジュールの調整や依頼プロセスを簡略化でき、業務フローの最適化も進みます。さらに、市場の変動や新しいトレンドに一貫した方針で迅速に対応し、柔軟に戦略を変更できるため、競争の激しい市場で有利に立ち回れることもメリットです。

バーティカルマーチャンダイジングをおこなうことで、次のようにスピーディな対応を取れるようになるでしょう。

  • 社内IT部門で会員向けアプリの開発をおこなうことで、顧客が求める機能を素早く追加できる
  • 商品の開発から製造までの工程を自社で管理できるため、トレンドを押さえた新商品の開発を効率的におこなえる
  • カスタマーサービスの内製化によって、クレームや問い合わせの対応スピードが速くなる など

バーティカルマーチャンダイジングのメリット3:商品の品質と安全性の確保

バーティカルマーチャンダイジングのメリットとして3つ目に挙げるのは、商品の品質と安全性を確保できる点です。

バーティカルマーチャンダイジングでは、自社が設定した基準で品質管理をおこなえるため、商品の原材料や製造環境などを一貫して把握できます。それにより、常に一定の品質や安全性を保持した商品を提供しやすくなります。
以下は、商品の品質と安全性につながる具体例です。

  • 現地での取引に直接自社が関わることで、適正な品質の原材料を確保できる
  • 自社独自の品質検査をおこなうことで、高品質な商品を安定的に提供できる など

バーティカルマーチャンダイジングのメリット4:ブランドイメージの統一とブランド力の強化

バーティカルマーチャンダイジングで得られる4つ目のメリットは、ブランドイメージを統一しやすくなり、ブランド力を強化できることです。

商品の製造から販売までを自社の責任でおこなうため、マーケティング戦略に一貫性が生まれます。統一されたブランドイメージを顧客に提供することで、自社の信頼性や認知度の向上が期待できるでしょう。

ブランドイメージの統一は、顧客との信頼関係の構築や他社との差別化、優良顧客の獲得につながります。また、ブランドの一貫性が確保されると、自社の商品に対する誇りや価値が強まり、従業員のモチベーションが高まることも期待できます。

結果として企業全体のブランド力が高まり、業界内での競争優位性を確立しやすくなるでしょう。以下は、バーティカルマーチャンダイジングによって得られるブランドイメージやブランド力に関するメリットの例です。

  • 一貫したコンセプトで商品展開や販促をおこなうことで、商品独自の価値を訴求できる
  • 全店舗で自社独自の接客研修をおこなうことで、満足感や好感度が高い顧客体験を提供できる など

バーティカルマーチャンダイジングを実行する際の注意点

バーティカルマーチャンダイジングを実行する際は、以下の2点に気をつけましょう。

  • 導入に多くのリソースが必要である
  • 現場の柔軟性が低下しやすい

これらの注意点について解説します。

バーティカルマーチャンダイジングの注意点1:導入に多くのリソースが必要である

バーティカルマーチャンダイジングの導入時には、一貫した商品化計画を実現するために多くのリソースを必要とします。

組織体制の見直しや新システムの導入にかかるコストが増大しやすいことに加え、人員配置などにもリソースがかかります。そのため、バーティカルマーチャンダイジングを実施するには、計画的なスケジュールと予算の管理が欠かせません。

バーティカルマーチャンダイジングの導入にかかる資金や必要な人材、期間などを充分に理解し、慎重に準備を進めましょう。

バーティカルマーチャンダイジングの注意点2:現場の柔軟性が低下しやすい

バーティカルマーチャンダイジングは一貫したトップダウン戦略であるため、商品化計画の各工程における現場の柔軟性が、制限される可能性があります。

効果的なマーケティングをおこなって顧客満足度を高めるには、各部門の役割と責任を明確にして、商品化計画の変更に関するガイドラインを共有することが欠かせません。そのためには定期的に現場スタッフとのミーティングを実施して、得られたフィードバックをもとに計画を見直し、一貫性を保ちながらも柔軟に対応できる体制を整えることが大切です。

まとめ:バーティカルマーチャンダイジングで一貫した商品化計画を実行しよう

  • バーティカルマーチャンダイジングとは、商品化計画を統一的に管理する手法
  • 商品化計画の各プロセスにコスト削減や品質確保など、さまざまなメリットがある
  • 実行する際は、計画的な導入と現場スタッフとの連携が欠かせない

バーティカルマーチャンダイジングは、小売・流通業に焦点を当てたマーケティング手法で、材料の仕入れから販売まで全てのプロセスを管理するものです。一貫管理によって得られるメリットは、主に以下の4つです。

  • 仕入れや製造、輸入などで発生するさまざまなコストの削減ができる
  • 商品開発や改善、カスタマーサービスなどの対応のスピード感が高まる
  • 商品の品質や安全性を確保しやすい
  • ブランドイメージの統一や、ブランド力の強化がおこなえる

ただし、バーティカルマーチャンダイジングの導入には、費用や人材、時間などのリソースが多く必要になるため、計画性を持っておこないましょう。また、トップダウン体制により現場の柔軟性が制限される可能性もあるため、現場スタッフと連携しながら最適なマーケティング戦略を考えることが大切です。

バーティカルマーチャンダイジングの導入には多くのリソースが必要ですが、一部の体制や仕組みを参考にするだけでも、効果が期待できます。まずは自社の商品化計画を整理して、取り組めそうなプロセスから一貫管理を検討してみましょう。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

タグ : バーティカルマーチャンダイジング マーチャンダイジング 商品化計画 販売戦略
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