顧客がリアル店舗に求めるものとは?期待を裏切らない対策を徹底しよう
小売業界では、従来型のリアル店舗だけではなくECサイトも運営して商品販売をおこなう企業が増加しています。コロナ禍によって日本国内では、2020年にEC販売の需要が一気に増加していますが、今後もデジタル化の流れを汲んでECサイトによる売上増加の勢いは加速していくでしょう。
一方、勢いに押されて売上低迷や存続の危機にあるリアル店舗は、今後ECサイトに取って代わられるのでしょうか。
この記事では、消費者がリアル店舗に求めるものは何か、店舗側は消費者のニーズに応えて市場で勝ち残るためにどのように対策すべきかを解説します。
目次
コロナ禍とEC市場拡大によるリアル店舗への影響
2020年、新型コロナウイルスの流行により人々の生活は様変わりしました。人との接触制限、外出自粛や在宅勤務の推奨・要請といった感染対策によって、人々の消費行動にも変化が見られました。
これまでリアル店舗だけを経営していた店舗が売上の低迷から実店舗を閉店せざる負えなくなる状況が増加し、ECサイトを併せ持つ企業でもリアル店舗の規模縮小が余儀なくされる事例も増えています。このことから、今後消費者の行動に対応してEC販売への移行はさらに拡大傾向となり、省人化・無人化の流れは加速していくと予想されます。
しかし、株式会社電通デジタルがおこなった「リテールDX調査(2021年版・6業態)」の結果から、消費者はリアル店舗での消費行動を求めていることが明らかになりました。コロナ禍を理由にリアル店舗での消費活動を回避している消費者の約4割以上が、収束後にはリアル店舗で買い物をしたいと回答しています。
コロナやEC市場拡大の影響を受けている中でも、リアル店舗に価値を認める消費者が存在するとわかりました。では、リアル店舗の価値とはいったい何でしょうか。
消費者がリアル店舗に求めるものとは?
消費者が求めている価値とは、リアル店舗だからこそできる「体験」であると、以下の調査などから明らかになりました。株式会社電通デジタルが実施した「リテールDX調査・2021年版」によると、コロナ収束後に生活者がリアル店舗に求めるのは、実物に触れることによる「確信」と「驚き」であると考察しています。
また、2020年7月に出された「経済産業省|令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業(電子商取引に関する市場調査) 報告書」によると、リアル店舗を利用した消費者の約7割が「直接商品に触れる・試せる」ことを利点に挙げています。
これらの調査から分かるとおり、リアル店舗に対して不必要さを感じている消費者が急増しているわけではありません。消費者の多くはリアル店舗への来店を通して、そこでしか味わえない体験や感動、驚きを求めているのです。
参考:『コロナ収束後に生活者がリアル店舗に求めるのは、 実物に触れる体験を通じた「確信」と「驚き」』株式会社電通デジタル、リテール DX 調査(2021 年版・6 業態)を発表|PR Wire
参考:経済産業省 商務情報政策局 情報経済課『令和元年度 内外一体の経済成長戦略構築にかかる国際経済調査事業|(電子商取引に関する市場調査)』(経済産業省)
では、リアル店舗へ足を運ぶ消費者が期待している、ECサイトでは得られないメリットについて簡単に解説しましょう。
リアル店舗の世界観や雰囲気
消費者は、オンラインではわからない世界観や非日常的な雰囲気の「体感」をリアル店舗に求めています。店舗側としては伝えたいイメージや商品のコンセプトは何かを基に、消費者により良い体験を提供することで感動を与えられれば、店舗・商品の強固なファンを獲得できるでしょう。
知らない商品との出会い
インターネットで最安値を検索すれば必要な商品だけを効率よく購入できますが、「思いがけず買ってしまった」とリアル店舗で衝動買いをした経験がある人は多いのではないでしょうか。
衝動買いからわかるように、消費者は目当ての商品が決まっていても、さまざまな商品の中から掘り出し物を見つける驚きや新商品の発見を期待してリアル店舗へ来店します。
リアル店舗でしか得られない商品やサービス
オンラインショップでは「いつでもどこでも対応可能」という条件のもと、ある程度画一化された商品やサービスを提供しています。
消費者がリアル店舗に求めているのは型にはまっていない店舗限定商品やサービスです。例えば、当日の仕入れ状況によって変わるメニューや店舗限定商品など、足を運ばなければ買えない、食べられないといった「リアル店舗でしか体験できない商品」ふりがなを消費者は求めています。
店員や同行者とのコミュニケーション
コロナ禍では、対面コミュニケーションの重要性を実感した人も多いでしょう。コロナ禍を通じ、人が他人との関わりを求めていると体感した人もいるのではないでしょうか。
売場のスタッフや友人・家族といった同行者との直接的なやりとりは、リアル店舗で得られる、消費者にとって価値のある体験です。
店舗スタッフと消費者が良いコミュニケーションを取ることで、より強固なファンの獲得が期待でき、身近な人とリアル店舗に来店し楽しい体験をした消費者が「また利用したい」と思える店舗運営につながるでしょう。
商品に関するアドバイスや説明
消費者は「自分仕様にカスタマイズされた情報」を求めています。スタッフから得られる商品の詳しい説明、自分の好みに合う商品やサービスの提案、商品購入のアドバイスなどオンライン上では得難い、パーソナライズ化された対応を求めているのです。
消費者の満足度を高めるためにできること
さまざまなニーズをもつ消費者に対して、顧客満足度を高めるためにリアル店舗が対策できることは何でしょうか。今後の取り組みに活用できる4つのポイントを解説します。
ターゲット層に合ったコンセプトを守る
まず自社を利用している顧客を分析しターゲット層が求めるコンセプトをもとにリアル店舗作りや商品展開をしていきましょう。ターゲットに合わせたコンセプトや雰囲気を壊さないことで、リアル店舗へ足を運んでもらいやすくなります。
従業員の知識や接客の質を高める
消費者は商品知識やパーソナライズ化された情報を求めています。定期的に教育をおこなうなどしてスタッフの専門知識を高め、接客の品質向上を図り、人間力を生かして接客していきましょう。
フレッシュで価値がある商品・サービスを提供する
新商品・シーズン限定品などは口コミや情報が少ない分、商品にすぐ体験できる店頭販売の強みをアピールできれば集客にもつながるでしょう。
マンネリを防ぐためにも、トレンドや季節によって消費者ニーズに合った価値のある商品・サービスを選択しましょう。
在庫管理を徹底する
顧客がリアル店舗で買いたいと思ったときに商品が売り切れていればチャンスロスになります。ターゲット層に合わせた在庫を持ちましょう。店舗スタッフが在庫を把握できていれば、状況に合わせて柔軟な販売戦略を練ることも可能です。単に在庫を多く持つのではなく、戦略的な在庫管理が顧客の満足度アップにつながります。
まとめ:リアルな体験を通して満足度を高めよう
世界最大規模のEC企業といわれるAmazonも、リアル店舗の出店を開始しています。
今後EC市場のシェアが拡大しても、リアル店舗での「体験」は代えがたいものです。ECサイトとリアル店舗が同じ戦略で商品を販売するのではなく、オンライン・オフラインの利点を生かし、相互作用によって顧客満足度を向上させることが重要となるでしょう。