スーパーのレイアウト改善で売上アップ!データ分析で配置を最適化しよう
スーパーマーケットにおけるレイアウトは、売上を左右する重要な役割を担っています。
そのため、スーパーの経営に携わる中で「レイアウトを改善したいが、なにから始めたらいいのかわからない」「レイアウトに役立つデータ分析がわからず困っている」などの悩みを抱える方も多いでしょう。
スーパーのレイアウトを考える際には、「自店舗の顧客にとって、どんなレイアウトが買い物しやすいか」を意識することが重要です。そのためには、データ分析を用いて、自店舗の顧客に対する理解度を深めましょう。
本記事ではレイアウトにおける基本的な考え方、顧客属性や購買傾向のデータ分析をレイアウトの改善にどう生かすか、などを解説します。スーパーのレイアウトに関する悩みを解決したい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
スーパーにおけるレイアウトの基本的な考え方
スーパーに来店する顧客の特徴やニーズを把握して理解を深めると、根拠に基づいたレイアウトが可能です。
ここでは、スーパーにおけるレイアウトの基本的な考え方を4つ紹介するので、改善時の参考にしてください。
「顧客が買い物をしやすいか」を意識することが大前提
スーパーのレイアウトを設計する際は、大前提として「顧客が買い物しやすいか」を意識しましょう。そのためには、顧客の客観的な声を集める必要があります。
顧客に買いやすいスーパーだと印象づけるには、意見や要望・クレームを分析してニーズを深く理解し、レイアウトの改善と工夫をすることが求められます。店頭アンケートや意見箱の設置、WEBサイトの「お客様フォーム」などを使って定性的なデータを収集し、分析結果をレイアウトに反映させましょう。
レイアウトが整っていて、自分の求める商品をスムーズに購入できるスーパーは、顧客にとって継続利用したい店舗となり、リピーターの増加につなげやすくなります。
「顧客属性」「購買傾向」をもとに店舗を最適化する
店舗を最適化するには、顧客属性と購買傾向をもとに、どの売り場を広げ、どのような商品配置にするかを考えましょう。
「顧客属性」とは、顧客の年齢、性別、職業、家族構成などをグループ分けしたものです。
顧客属性をもとに分析して、自店舗にどのような人が来店しているのかを把握できれば、ターゲット層の選定をおこないやすくなります。
顧客属性の分析に使えるデータを収集するには、以下のような手段を利用しましょう。
- 会員カード
- ID-POS
- スマホのアプリ
- アンケート など
「購買傾向」とは、顧客が購買した商品や価格、日時、個数などの情報を指します。購買傾向を収集するには、これらの手段が役立ちます。
- クレジットカード、キャッシュレス決済の購買データ
- ポイントカードの情報
- POSレジの購買データ など
顧客属性と購買傾向を把握すると、以下のような顧客に対する仮説が立てやすくなります。
- 自店舗で買い物をする顧客が、どんな売り場を快適だと感じるか
- どんな品ぞろえを「欲しいものが見つかりやすい」と思うか など
その仮説をもとにレイアウトを改善すれば、顧客に最適化された店舗を作りやすいでしょう。
顧客の動線や視線を意識した配置にする
顧客の動きや視線に合わせたレイアウトにすると、商品を見つけやすく、ストレスなく買い物をしてもらえるようになります。「動線分析」や「視線分析」をおこない、顧客の動線や視線を把握しましょう。
《動線分析と視線分析でわかること》
動線分析 | 店内の移動経路や滞在時間を分析することで、顧客の購買意欲が高いエリアを把握できる |
視線分析 | 顧客が商品陳列棚のどこに注目しているか、どの商品が選ばれやすいかなどを把握できる |
ただし、動線分析や視線分析には専用ツールが必要であり、導入には一定のコストがかかります。ツールの導入が難しい場合は、まず顧客分析によって顧客の特徴を把握しましょう。
動線分析・視線分析をおこなった場合のレイアウト工夫例
顧客の属性や購買傾向をつかんだ上で動線分析・視線分析をおこなうと、次のことが可能です。
《例:子育て世代の顧客が多い場合》
- 子どもの手が届く場所にアルコール飲料を配置しない
- 子どもの様子を見ながら買い物できるように、棚の低い段に人気商品を陳列する など
このようにターゲット層の仮説を立てることで、動線や陳列をどのように改善すればいいか判断しやすくなるでしょう。
売上アップにつながるレイアウトにする
売上アップにつながるレイアウトとは、顧客が計画していなかった「ついで買い」や「衝動買い」を増やす陳列方法にすることです。そのためには、顧客がどのように商品を購入しているのかを、下表の手法で分析しましょう。
分析名 | 概要 | 分析でわかること |
バスケット分析 | 顧客がレジに持ってくるバスケット(かご)を一つの単位として分析する手法 |
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購買データ分析 | 顧客の属性や購買傾向を分類して属性を分析する手法 |
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バスケット分析と顧客データ分析の結果をもとにした施策例
例えば、スーパーA店という店舗でバスケット分析と顧客データ分析をおこなった結果、以下のことがわかったとします。
《顧客データ分析でわかったこと》
- 金曜の18時以降に利用が多かったのは30~40代の男性客だった
- 30~40代の男性客が購入した商品カテゴリの上位が「生鮮品、酒類、総菜」だった。
《バスケット分析でわかったこと》
- 金曜の18時以降には「酒類」と「惣菜」が一緒に購入されている割合が高かった。
この結果から、
「金曜の夜は翌日が休みであるため、酒類とつまみを購入するビジネスマンが多い」
という仮説が考えられます。
さらに、その仮説に基づき、
- 「酒類コーナー付近に、つまみになりそうな総菜の売り場を配置し、ついで買いを狙う」
- 「お酒に合うおつまみ系の総菜をラインナップに加え、特設コーナーを配置する」
などのレイアウト案が立てられるでしょう。
このように、顧客属性と併売商品の分析データを活用すると、根拠に基づいた仮説でレイアウト改善ができ、売上アップにつながりやすくなります。
商圏のエリア特性を分析するとさらに仮説の精度が上がる
バスケット分析や顧客データ分析などで立てた仮説の精度を高めるには、自店舗の周辺にどんな人物が多いかも把握しましょう。
例えば、国勢調査のデータなどを用いた商圏分析で、スーパーA店の商圏に「商圏内に一人暮らしの男性が多い」という分析結果が出れば、「金曜の夜は、酒類とつまみを購入するビジネスマンが多い」という仮説の信ぴょう性が上がります。
このような場合、一人暮らしの男性向けに「総菜コーナーを広げて、小分けパックを増やす」「おひとり様用の食材コーナーを新設する」などのレイアウト改善策を立てるとよいでしょう。
レイアウトを考えるときには、地域特性も加味した、より精度の高い分析結果を判断材料にしましょう。
スーパーの売上を上げるレイアウトのポイント
ここでは、スーパーの売上を上げるレイアウトのポイントを2つ解説します。
わずかな複雑化で滞在時間を長くする
整理されたレイアウトは、顧客にとってスムーズに店内を巡回できるメリットがある一方、動線が単純すぎるために滞在時間が短くなるデメリットも含みます。
こうしたデメリットを解消させるためには、レイアウトをわずかに複雑化させて、商品を見る時間や機会、つまり「滞在時間」を増やし、購買のきっかけを作りましょう。
《デメリットを解消させるための工夫》
- 動線を遮る棚の設置を工夫し、巡回ルートを増やす
- あえて目玉商品を入口から離れた棚の低い位置に陳列して、店内を多く移動させる
レイアウトのわかりやすさは重要なポイントですが、多少の複雑さで滞在時間を調節することで、売上アップにつながります。快適さを損なわないような工夫を取り入れましょう。
レイアウトは「左回り」「右回り」の動線を使い分ける
これまで、人は左回り(反時計回り)のほうが自然に動けるというのが、マーケティングにおける一般的な認識でした。これを「左回りの法則」といいます。しかし、近年では右回り(時計回り)の方が人の購買意欲が高まりやすいという研究結果も発表されています。
どちらにもメリット・デメリットがあるため、レイアウトを改善する際には店内の広さや棚の配置も加味して、自店舗に合った方向を選びましょう。
左回り(反時計回り)は壁の商品棚に注目させやすい
店内動線を左回りにすると、壁側の商品棚が利き手に近くなり商品を手に取りやすくなります。さらに、視線も自然に利き手側に誘導できるので、購買を促しやすいといわれてきました。また、人は左回りに動くと精神的に安心しやすいという心理も働きます。
しかし、左回りの場合、人は右側ばかり見て左側に対して注目しないケースもあります。
右回り(時計回り)は左右に意識を向かせやすい
右回りの方が購買意欲を促せるという説は、人が持つ安心欲求に起因します。
人が左回り(反時計回り)を動きやすいと感じるのは、利き手側に壁があり「守られている」「安全だ」などの安全性欲求が満たされるからです。そのため、あえて時計回りに動線を設計し、利き手ではない左側に壁をおくことで、左右両方に意識を向させやすくなります。
ただし、時計回りは緊張感や不安感を与えやすく、居心地の悪さを高めてしまう可能性があります。
スーパーの商品別おすすめのレイアウト例
ここでは、スーパーにおいて、なぜその位置にレイアウトされているのか、その配置にどのような効果があるのかを商品別に解説しますので、ぜひ参考にしてください。
野菜や果物は季節感を感じられる店頭付近
野菜や果物は色鮮やかで人目を引きやすいため、店頭付近のレイアウトが定石です。
特に、毎日の料理に使われる野菜は、購買意欲の湧きやすい商品です。レイアウトを工夫して季節感をアピールできれば、売上アップにつなげられるでしょう。
鮮魚や精肉は鮮度が落ちにくい店の奥
鮮魚や精肉は質の良い状態で提供するために、温度変化の少ない、店の奥にレイアウトするのが一般的です。
入り口から野菜・鮮魚・精肉と、生鮮食品を続けてレイアウトすることで献立をイメージしやすくなり、購買意欲を促し、売上増加につなげられるでしょう。
乳製品や卵は店内動線の後半
乳製品や卵を店内動線の後半にレイアウトするのは、顧客に店内を巡回してもらう目的を兼ねているためです。
乳製品や卵は購入頻度が高く、動線の前半に配置すると「これだけ購入できればいい」という充足感を顧客に与えるでしょう。その結果、顧客が店内を回らず、ついで買いや衝動買いをしてもらう機会を失うこととなります。
惣菜は店内動線の最後
レイアウトの最後に総菜を陳列することで、献立にもう一品加えようという意識を促しやすくなり、ついで買いにつながるでしょう。
反対に、総菜はそれだけで完成した商品であるため、入口付近に陳列してしまうと、その他の商品に対する購買意欲が下がる恐れがあります。
調味料はメイン売り場以外に関連商品と併売
調味料は、鮮魚・精肉・野菜などのメイン商品や関連商品の近くに配置することで、ついで買いを促せます。例えば、トッピングやアレンジに使えるトーストシーズニング、シュガークリームなどをパンの近くに配置することで、売上を伸ばしている店舗もあります。
このような場合、あらかじめバスケット分析などで売れている組み合わせを把握し、どの商品と併せて配置するかを決めておきましょう。
まとめ:レイアウトの基本的な考え方をおさえて売上アップにつなげよう
- レイアウトの大前提は「顧客が買いやすいか」
- 顧客の特徴や購買傾向を把握したレイアウトをおこなう
- 顧客属性を分析し、ついで買いと衝動買いの機会を増やすレイアウトにしよう
スーパーのレイアウトは、顧客が買い物をしやすいように工夫するのが大前提です。顧客の属性や購買傾向をもとに、動線・視線を意識して、店舗を最適化しましょう。
ただし、レイアウトを大きく変更するには、コストや時間がかかります。投資対効果を上げるには、既存顧客データを収集分析し、その結果をもとに顧客が望む「買いやすさ」や「便利さ」を追求したレイアウトをおこない、売上アップの施策を始めましょう。