パーソナライズドマーケティングとは?導入・分析の進め方や施策例を解説

マーケティングに取り組む中で「自社の施策がなかなか成果につながらない」「さまざまな顧客のニーズに対応するには、どうしたらいいかわからない」と悩んでいる企業の方は、多いのではないでしょうか。
自社のターゲットに効果的なアプローチをするには、顧客データの分析結果を活用し、一人ひとりのニーズに合う施策をおこなう「パーソナライズドマーケティング」の考え方が欠かせません。
今回は、パーソナライズドマーケティングの概要や導入の流れ、分析手法を解説します。マーケティングの実行例も紹介しますので、顧客の購買行動を理解して適切なアプローチをおこないたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
パーソナライズドマーケティングとは、顧客に最適な体験を提供するマーケティング活動のこと
パーソナライズドマーケティングとは、属性・行動履歴・好みなどに基づいて、それぞれの顧客にとって最適な情報やサービスを提供するマーケティング活動を指します。
顧客ニーズの細分化によって、これまでのマスマーケティングで成果を上げることは難しくなりました。そこで近年は、顧客一人ひとりのニーズに対応するための、パーソナライズドマーケティングが重要視されています。
パーソナライズドマーケティングのメリット
パーソナライズドマーケティングをおこなうメリットは、次の3つです。
- 顧客満足度の向上
- ブランドの認知度アップ
- 潜在顧客の獲得
一人ひとりの属性や行動傾向に合った商品・サービスの提供により、自社に対する顧客の信頼が深まり、顧客満足度の向上につながります。顧客それぞれの関心が高まることで、ブランド全体の認知度を引き上げる効果も期待できるでしょう。
さらに、顧客分析で知り得た新たな顧客ニーズは、まだ自分のニーズに気づいていない潜在顧客の獲得にも活用できます。
パーソナライズドマーケティングのデメリット
反対に、パーソナライズドマーケティングのデメリットとして、以下の2点が挙げられます。
- 顧客にとって適切な商品やサービスではない場合がある
- マーケティングの実装にコストがかかる
トレンドや顧客属性は刻々と変化していくため、過去の購買データをもとにおこなうマーケティング施策が、必ずしも顧客が求めていることであるとは限りません。需要に応じてタイムリーなアプローチを実行するには、定期的に顧客情報を見直す必要があるでしょう。
パーソナライズドマーケティングにおけるもう1つのデメリットは、顧客情報の取得ツールやデータの分析ツールを導入する際にコストが発生することです。費用対効果を意識しながら、計画的に取り組みましょう。
パーソナライズマーケティングを導入する流れ
パーソナライズドマーケティングは、次の流れで取り組むことが大切です。
- ターゲットを設定する
- 施策の実行方法を決める
始めに顧客データと購買データを分析して、顧客それぞれの現住所・生年月日といった属性や、購入頻度・購入金額などの購買行動を把握したうえで、ターゲット設定をおこないます。
ターゲットを明確にしたら、施策の実行方法を決めましょう。ターゲットに、いつ・どこで・どのような体験を提供するのかを具体的に考えることがポイントです。
パーソナライズドマーケティングの導入にはCRMやMAが必要
効果的なパーソナライズドマーケティングのためには、膨大な顧客データを分析し、個々のターゲットに合わせた施策を打たなければなりません。
しかし、すべての工程を手作業でおこなうのは現実的ではないため、CRMやMAツールを導入する必要があります。
- CRM(顧客関係管理):顧客データベースを一元管理して顧客関係を構築するツール
- MA(マーケティングオートメーション):マーケティング活動の効率化・自動化をサポートするツール
これらのツールを用いることにより、顧客データを社内で共有しやすくなり、適切に管理・活用できます。
パーソナライズドマーケティングで顧客ニーズを分類する手法4選
パーソナライズドマーケティングで顧客ニーズを分類する際、分析に使える手法として次の4種類が挙げられます。
- RFM分析
- デシル分析
- CTB分析
- 商圏分析
それぞれの概要を解説しますので、目的に合わせて使い分けましょう。
パーソナライズドマーケティングで顧客ニーズを分類する手法その1:RFM分析
RFM分析は購買履歴をもとに顧客の価値を評価する手法です。「Recency(最終購入日)」「Frequency(購入回数)」「Monetary(購入金額)」の3つの指標で顧客を分類し、アプローチすべき顧客層を特定します。
例えば、売上を増やしたいカフェがRFM分析をおこなって「過去3ヶ月で頻繁に来店しているが、低価格帯メニューの注文が多い顧客」を特定したとします。
この顧客に、次回使える中価格帯メニューの割引クーポンを提供して客単価の増加を促すことで、店舗の売上アップを狙えるでしょう。
RFM分析について、詳しくは以下の記事で解説しています。
パーソナライズドマーケティングで顧客ニーズを分類する手法その2:デシル分析
デシル分析は、顧客総数を購入金額や頻度などの基準で多いほうから10等分して評価する手法です。これにより、各ランクの顧客別売上や全体における割合を把握できます。デシル分析は、特定の顧客に焦点を当て、効果的な施策を実施する上で役立ちます。
例えば、個人経営の書店で、デシル分析を用いて購買金額の高い上位10%の顧客を抽出したとしましょう。
この上位10%の顧客に新刊の先行案内や割引キャンペーンを提供することで、より多くの本の購入につながります。一方、購買金額の低い顧客には、訪問頻度を増やすために、クーポンを使ったアプローチを試みるのもよいでしょう。
デシル分析の目的やメリット・デメリットについては、以下の記事もご覧ください。
パーソナライズドマーケティングで顧客ニーズを分類する手法その3:CTB分析
CTB分析は、顧客を「カテゴリ(Category)」「テイスト(Taste)」「ブランド(Brand)」の3つの指標で分類し、購買行動を予測する手法です。
各顧客の購買行動を3つの軸で評価することで、顧客の趣味嗜好に最適化した施策をおこなえます。既存顧客の好みを知り、潜在的な顧客に対するアプローチ方法を検討する際にも有効です。
例えば、都内のアパレルショップでCTB分析を用いて会員データを分析し、顧客を以下の3つで分類するとします。
- カテゴリ:カジュアル・フォーマルなど
- テイスト:シンプル・華やかなど
- ブランド:特定ブランドへのこだわり
この場合、カジュアルでシンプルな服を好む顧客には同じテイストの新作アイテムを紹介すること、特定ブランドを好む顧客には、そのブランドの限定商品やコラボアイテムをおすすめすることが可能です。これにより、顧客一人ひとりに最適化された商品を提案できます。
CTB分析の各指標の意味や目的、やり方の詳細は、以下の記事で解説しています。
パーソナライズドマーケティングで顧客ニーズを分類する手法その4:商圏分析
商圏分析は、特定の地域やエリアごとに顧客属性や消費特性を調べる手法です。商圏分析を正しくおこなうことで、地域ごとに異なるニーズを把握し、店舗にとって最適なマーケティング施策を実施できます。
特に、実店舗向けのマーケティングでは地域特性が売上に大きく影響するため、勘や経験に頼ったアプローチではなく、実際のデータをもとに商圏分析をおこない、分析結果を反映させることが欠かせません。
例えば、チェーン展開のスーパーマーケットが、売上を増やすために商圏分析をおこなったとしましょう。購入履歴や会員情報をもとに、地域ごとの人気商品や消費傾向を分析します。
商圏分析で明らかになった地域特性をもとに、
- 都市部に居住する単身の顧客には、手軽な食品や最新の健康志向商品を提案する
- 郊外に居住するファミリーには、大容量の商品や家庭向け商品を提案する
といった施策を実行すれば、売上を最大化できる可能性もあるでしょう。
以下の記事では、商圏分析で押さえるべき項目や、地域に特化したマーケティングをおこなうための分析手順を解説しています。合わせてご覧ください。
パーソナライズドマーケティングの施策例
ここではパーソナライズドマーケティングの、オフライン・オンラインそれぞれのシーンにおける施策例を挙げます。自社に合う施策や、どのデータ分析が活用できるかを考えてみてください。
業態 | 施策例 | 期待できる効果 |
スーツ専門店 | 購買履歴や会員データを分析し、店舗でおすすめ商品をレコメンドする 例:顧客が前回購入したスーツに合うネクタイを提案する |
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高級デパート | 顧客の興味・関心に基づいたイベントに招待する 例:ワイン好きの会員に、店舗で試飲会を開催する |
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地元のカフェ | 来店時間に応じた特典を提供する 例:平日昼間に来店する主婦に、ランチタイム限定クーポンを配布する |
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家電量販店 | 店頭のデジタルサイネージでおすすめ商品を表示する 例:購入履歴や会員データから、顧客ごとに売れ筋商品をピックアップしてレコメンドする |
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このように、顧客の来店傾向や趣味嗜好に合わせた施策をおこなうことで、パーソナライズドマーケティングの効果を高められるでしょう。
オンラインで活用できるパーソナライズドマーケティングの施策例
続いて、オンラインで活用できるパーソナライズドマーケティングの施策例をまとめました。
業態 | 施策例 | 期待できる効果 |
化粧品店 | 過去の購入履歴をもとに、ECサイトでパーソナライズ商品を提案する 例:顧客が過去に購入したスキンケア商品と相性の良い美容液をレコメンドする |
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アパレル店 | 顧客の趣味嗜好に合うメルマガを配信 例:ターゲットが過去に閲覧した商品がセールになったタイミングで通知する |
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アウトドア用品店 | ターゲットニーズの高い広告を配信 例:アウトドアが好きな人向けにキャンプ用品の広告を最適化して配信する |
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上記のマーケティング施策はあくまで例ですが、このように顧客一人ひとりにパーソナライズしたマーケティングを実行することで、さまざまな効果が期待できます。
まとめ:パーソナライズドマーケティングで施策の精度を高めよう
- パーソナライズドマーケティングとは、顧客の属性や行動履歴に最適化した体験を提供するマーケティング活動のこと
- パーソナライズドマーケティングの導入では、ターゲットを決めた上で施策の実行方法を決めることがポイント
- 顧客ニーズの分類には、RFM分析・デシル分析・CTB分析・商圏分析などの手法が有効
パーソナライズドマーケティングで顧客ニーズに対応したアプローチをおこなうことで、顧客満足度の増加やブランド認知度の向上、潜在顧客の獲得といった効果が期待できます。
パーソナライズドマーケティングを導入する際は、アプローチするターゲットを決めた上で、そのターゲットの顧客ニーズに合わせて「いつ・どこで・どのような体験を提供するか」を具体的に考えましょう。今回解説した顧客ニーズの分析に生かせる手法にも、ぜひ取り組んでみてください。
これからパーソナライズドマーケティングを始める方は、まず既存顧客の情報を分析し、顧客属性をシンプルなデータに整えて把握しましょう。また、他にどのようなデータを分析すれば顧客に最適化したマーケティングをおこなえるか、議論を重ねることも大切です。