クロスマーチャンダイジングで「ついで買い」を増やそう!やり方4ステップ
ネットショップ市場の成長や、商圏の狭小化などが原因で「店舗の売上が思うように伸ばせない」と悩む方もいるのではないでしょうか。伸び悩む売上対策の一つとして取り入れられる戦略が「クロスマーチャンダイジング」を意識した売場作りです。
クロスマーチャンダイジングとは、簡単にいえば「ついで買い」を促して客単価の増加を目指す手法のこと。客単価を増やすことで、売上アップが期待できます。
この記事では、クロスマーチャンダイジングの基本や具体的な手法を詳しく解説していきます。「実店舗の陳列を工夫して売上を伸ばしたい」と考えている方は、ぜひ参考にしてください。
目次
クロスマーチャンダイジングとは関連性のある商品を陳列すること
マーチャンダイジング(MD)は、流通・小売業界における「顧客が求める商品を、適正な数、価格、時期などで提供するためのマーケティング戦略」を指します。
この戦略に「商品カテゴリを問わず、関連性が高く併売を促せるものをまとめて陳列する」という考えを組み込んだ、つまり「クロス」させたものが、クロスマーチャンダイジングです。
クロスマーチャンダイジングによって、特定の商品を購入する顧客に、関連性の高い商品や一緒に使うと便利な商品などを売り場に並べて「ついで買い」してもらうことで、売上アップを目指します。
クロスマーチャンダイジングのメリット・デメリット
クロスマーチャンダイジングにはメリットだけではなく、デメリットもあるため、あらかじめ把握して対策を考えましょう。
クロスマーチャンダイジングのメリット:客単価や買上点数の増加を見込める
クロスマーチャンダイジングの大きなメリットは、同じ売場に関連商品を陳列するため、顧客の購買意欲を促進して、客単価や買上点数の増加を見込めることです。1人当たりの購入額が増えれば、売上アップにつながります。
また、顧客ニーズに合う商品を関連づけて販売することで「便利な店だ」「必要なものが手に入りやすい」などの信頼を得て、リピーターを増やせる可能性もあるでしょう。
クロスマーチャンダイジングのデメリット:売場の調整に時間や労力がかかる
デメリットは、売場の調整が必要な点です。商品の移動や陳列、飾りつけなどの手間がかかるので、成果が出ない場合は多くの時間や労力をロスする場合もあります。他にも、商品の陳列場所が複数に至る場合、在庫や補充の管理が複雑化することも懸念されます。
購買データを十分に分析してデメリットへの対策を取りながら、相乗効果の得られる商品を選定することが重要です。
クロスマーチャンダイジングのやり方4ステップ
クロスマーチャンダイジングは、大きく分けて4つのステップで進めます。
- メイン商品を選ぶ
- 関連商品を選ぶ
- メイン商品と関連商品を陳列する
- 販促効果の結果を計測し、改善する
成果を出すためのポイントは、担当者の感覚や経験だけを頼りにせず、過去の購買データを分析して組み合わせる商品を決めることです。顧客ニーズや季節などに合わせて商品を選び、顧客の目に留まりやすい陳列方法を取り入れましょう。
ここでは、4ステップそれぞれの具体的なやり方やポイントを解説します。
クロスマーチャンダイジングのステップ1:メイン商品を選ぶ
クロスマーチャンダイジングでは、メイン商品の選択が重要です。顧客に関連商品を訴求して「ついで買い」を促すことが目的なので、ある程度の売上が期待できる商品をメインに据えなければなりません。
メイン商品を選ぶ際には、過去の売上データが役立ちます。データ分析をおこない、次のような条件に合った商品を選びましょう。
- 販売数が多い
- 売上金額が高い
- 関連商品の併売を促しやすい商品 など
また、時期によっても求められる商品は異なります。商品が「どのくらい売れているか」だけではなく、「どの時期に売れているか」を意識して分析することも重要です。
クロスマーチャンダイジングのステップ2:関連商品を選ぶ
メイン商品の次は、併売する関連商品を選びます。
関連商品には、メイン商品を使用する際に欠かせない商品や、持っていると便利な商品を選びましょう。
クロスマーチャンダイジングの効果を上げるには、関連商品を選ぶ際に、分析した売上データからメイン商品と併売率の高い商品を探すことが重要です。
以下で、関連商品を選ぶ際のポイントを解説するので、参考にしてください。
「誰が何を買いに来ているか」を明確にしよう
関連商品を選ぶときには、自店舗に「誰が何を買いに来ているのか」を把握することが重要です。
ID-POSデータがある場合は、活用して顧客の購買動向を分析しましょう。ID-POSデータには購買データと会員情報、ポイントカードなどから得られる顧客情報が紐づけされているため、メイン商品や関連商品を購入した顧客の属性を把握できます。
ID-POSデータの入手が難しい場合や顧客属性を分析できるデータがない場合は、自店舗で収集した購買データを生かして分析を進めます。その際には、商圏分析で地域の特性を把握し、
- 地域で暮らす人の具体的な人物像
- 店舗を利用するターゲットの属性
などを仮説立てましょう。顧客属性の仮説と購買データを組み合わせれば、自店舗を利用する顧客や、好まれる関連商品の解像度を高める判断材料となります。
併買分析で同時購入されやすい商品を分析しよう
ID-POSデータを活用できる場合は、併売分析も取り入れましょう。併買分析の代表的な手法である「バスケット分析」を用いると、商品の関連性がより明確に見えてきます。
バスケット分析とは、顧客がレジに持ってくる買い物かごを1つの単位として、同時購入の割合を分析する手法です。バスケット分析では、4つの指標をもとに商品同士の関連性を分析します。
指標 | 概要 |
支持度 | 全購入者のうち、メイン商品と関連商品を同時購入した人の割合。支持度が高いほど「商品同士の関連性が高い」と判断できる。 |
信頼度 | メイン商品を購入した人のうち、関連商品も購入した人の割合。信頼度が高いほど「同時購入の可能性が高い」と判断できる。 |
期待信頼度 | 全購入者のうち、関連商品を購入した人の割合。期待信頼度が高いほど「関連商品の魅力が高い」と判断できる。 |
リフト値 | 期待信頼度に対する信頼度の割合。リフト値が高いほど「この組み合わせだからこそ購入した人が多い」と判断できる。 |
各指標を算出するには、以下の計算式を用います。
- 支持度=メイン商品と関連商品の同時購入者数 / 購入者全体数
- 信頼度=メイン商品と関連商品の同時購入者数 / メイン商品の購入数
- 期待信頼度=関連商品の購入者数 / 購入者全体数
- リフト値=信頼度 / 期待信頼度
バスケット分析について詳しく知りたい方は、以下の記事も参考にしてください。
クロスマーチャンダイジングのステップ3:メイン商品と関連商品を陳列する
メイン商品と関連商品が決まったら、売場での併売を実施します。メイン商品の売場近くで、顧客の目に留まりやすい陳列を意識しましょう。
その際、関連商品とのセット割や特典などを用意したり、POPでメイン商品と関連商品の活用方法を紹介したりすれば、より効果的です。
有効な陳列方法
さまざまな陳列方法の中でもおすすめの方法は、エクステンド陳列・ウイング陳列・フック陳列の3種類です。
陳列方法 | 概要 |
エクステンド陳列 | 網棚などの専用什器を用いて、本来の陳列棚よりも前に出るように陳列する方法。 |
ウイング陳列 | ダンボールやカゴなどの簡易什器で、棚の両端部分に突き出して設置する方法。 |
フック陳列 | 壁や棚横の垂直部分にフック商品を吊り下げて陳列する方法。 |
クロスマーチャンダイジングでは、商品カテゴリなどにとらわれず、顧客の目を引く陳列方法を取り入れることが重要です。上に挙げた陳列方法を参考に、併売につながる陳列をしましょう。
クロスマーチャンダイジングのステップ4:販促効果の結果を計測し、改善する
商品の併売後には、販促の効果を確認します。実施前におこなった購買データの分析結果をもとに、数値の変化や売上の増減を確認しましょう。ただし、各商品の売上数や売上金額だけでは「偶然まとめ買いがあった」「各商品の単体での売上数が多かった」などの可能性もあり、クロスマーチャンダイジングの正しい結果計測がおこなえません。
測定の際には、メイン商品と関連商品の併売率がどう変化したのかを把握することが大切です。
実施前と実施期間中のデータをもとにバスケット分析をおこない、指標がどう変わったのかチェックしましょう。たとえばメイン商品購入者のうち、関連商品を購入した割合を指す信頼度が上昇していれば「メイン商品と関連商品を近くに配置したら、同時購入の割合が増えた」、つまり、併売率が上昇したことが把握できます。
一方で、一緒に陳列しても指標の数値が変わらなかったり下がったりしていたら、商品選びや組み合わせが合っていない可能性が考えられます。その場合は、分析をしなおしてメイン商品の選定や、関連商品との組み合わせが適切かを精査し、改善策を立てて再び実行に移しましょう。
クロスマーチャンダイジングの実施例
ここではクロスマーチャンダイジングを取り入れた、併売施策の実施例を2つ紹介します。メイン商品・関連商品を選んだ基準や具体的な陳列方法を解説するので、クロスマーチャンダイジングを取り入れる際の参考にしてください。
なお、これらはあくまで実施例で、実例ではありません。
クロスマーチャンダイジングの実施例1:スポーツ用品店
- 【メイン商品】ランニングシューズ
- 【関連商品】吸湿速乾性のスポーツウェア、 スポーツドリンク
まず、スポーツ用品店での実施例を紹介します。
この店舗では、ID-POSデータをもとに分析をした結果、ランニングシューズの売上が高く、スポーツウェアやスポーツドリンクを同時購入する顧客が多いとわかりました。
この結果から「ランニングを始める顧客が、スポーツウェアやスポーツドリンクなどをまとめて用意している」という仮説が立てられます。
そこでこのスポーツ用品店では、ランニングシューズをメイン商品に、ランニングに適した吸湿速乾性のスポーツウェアやスポーツドリンクを関連商品として、下記のような併売施策を実施することにしました。
- ランニングシューズの売場に、スポーツウェアやスポーツドリンクなどを陳列する
- 「まとめて購入すれば、すぐにランニングが始められる」というイメージのPOPを設置する
このような施策をおこなうことで、ランニングに興味のある顧客に関連商品の購入を促し、ついで買いによる売上アップが望めるでしょう。
クロスマーチャンダイジングの実施例2:ホームセンター
- 【メイン商品】「棚が作れる木材一式セット」
- 【関連商品】基本的な工具やペンキ類
これは、ホームセンターのDIYコーナーでどのような商品が売れているかを分析して、クロスマーチャンダイジングを実施した例です。
購買データを見たところ、この店舗では初心者向け「棚が作れる木材一式セット」の販売数が伸びているため、この商品をメイン商品に決めました。
バスケット分析の結果、加工用の工具セットやペンキ類の信頼度が高いと判明したので、メイン商品と関連商品を集めた特設コーナーを作り、以下の施策を実行することにしました。
- 作業ごとに、どの工具が適しているかがわかるポスターを掲示する
- 実際に店舗で販売している木材や工具で作成した完成品をディスプレイする
この施策をおこなうことで「これを全部買えば自分でも作れそう」という顧客の気持ちを刺激し、ついで買いによる売上アップが期待できるでしょう。
まとめ:関連商品を提案し、客単価を増やそう!
- クロスマーチャンダイジングは関連性のある商品を一緒に陳列する手法
- 売上データから関係性が高い関連商品を選定して、最適な組み合わせを探す
- ついで買いを促し、売上アップを目指す
クロスマーチャンダイジングは「ついで買い」を促し、全体の売上や客単価・購入点数の増加を目的とする販売手法の一つです。クロスマーチャンダイジングを成功させるには、メイン商品と関連商品の選択はもちろん、併売する売場選びや陳列方法が重要です。
クロスマーチャンダイジングをおこなう際には、まず自社の購買データを分析し「誰が何を買いに来ているか」を調べるところから始めましょう。データから適切な商品を選定し、顧客の目に留まる売場を構築できれば、売上の増加につながるでしょう。