来客数を増やす方法とは?顧客層別に適したアプローチ方法を解説

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来客数を増すことは、店舗経営を成功させる上で欠かせません。しかし、「どうしたら来客数を増やせるのか」「来客数を増やすためには何から始めたらよいのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。

顧客層を細分化し、各グループに適した施策を用いれば、効率的に店舗の来客数を増やせます。本記事では、来客数を増やす際に押さえておきたいポイントや、客数を増やす顧客層別のアプローチ方法について解説します。

店舗への来店が増えず経営に苦戦している方、来客数を増やして売上を伸ばしたい方は、ぜひ最後までご覧ください。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

来客数増加に欠かせない顧客層の分類


店舗への来客数を増やすためには、企業全体の客数を分類して捉え、それぞれの顧客層に対して適切なアプローチをおこなうことが欠かせません。

顧客層の分類はさまざまですが、来客数を増やす場合は以下の分類が役立ちます。

分類 顧客層 定義
新規顧客(候補) 未認知顧客 自社を認知していない。
認知・未購買顧客 認知はあるが、購買経験はない。
既存顧客 一般顧客 認知があり、購買頻度/額/利益が中~低程度である。
優良顧客
(ロイヤルカスタマーを含む)
認知があり、購買頻度/額/利益が高い。
(自社への好意や信頼がある優良顧客をロイヤルカスタマーと呼ぶ)
離反顧客 認知があり購買経験もあるが、現在の購買はない。

「来客数を増やす」というと、新規顧客を増やそうと考える方が多いかもしれません。しかし、実際には新規顧客と既存顧客を増やし、離反顧客を減らす取り組みが全体の来客数増加につながります。

来客数は店舗前通行量×来店率で計算できる

来客数は、以下の計算式で算出します。

来客数=店舗前通行量×来店率(入店率)

新規顧客・既存顧客・離反顧客に対するアプローチで、来客数の増やす取り組みをする際には、上記の計算式を用いて現状把握や効果測定をおこないましょう。

新規顧客を増やすには市場選びがポイント

新規顧客を増やすには、自社と競合のポジションを明確にした上で、競争率が低い市場を選び、認知拡大に取り組むことがポイントです。まずは自社が属する市場を分析して、競争率が低い市場を決定しましょう。

この章では、市場選びをする際に何を知っておくべきか、どのような分析が必要なのかを詳しく解説します。

市場選びには市場規模の把握が重要

新たな市場を開拓する際、まず見るべきは市場規模です。

全体の市場規模やその中で自社が関わる市場、さらに、実際にアプローチ可能な市場について正しく把握することが、市場選びの第一歩。自社が開拓できる市場規模を測る際には、「TAM・SAM・SOM」の指標が役立ちます。

TAMSAMSOM

《市場規模を測る「TAM・SAM・SOM」の計算式》

  • TAM=市場全体の顧客数×単価×年間で購入した回数
  • SAM=自社に興味を持つ顧客数×支払検討している金額
  • SOM=既存顧客数×支払予定の金額

これらの計算式で市場規模を把握し、自社が新規顧客を開拓できる市場を探しましょう。

市場選びに必要なのは自社・市場・競合に対する分析

市場を選ぶ際は、全体像や自社が狙うべき市場だけではなく、自社・市場・競合のそれぞれに対する分析が欠かせません。自社の立ち位置や市場の状態、競合との関係性を踏まえて、新たに参入する市場を選びましょう。

市場選びに役立つ代表的な分析手法として、以下のフレームワークが挙げられます。

フレームワーク名 概要・目的
3C分析 顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3つの要素を分析し、絶えず変化する市場で自社の競争優位性を維持するための成功要因を発見する。
4C分析 顧客視点で顧客価値(Customer Value)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)の4要素を分析して、自社の商品やサービスを評価する。
4P分析 企業視点で製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、販促(Promotion)の4要素を分析し、マーケティング戦略の構築に活用する。
SWOT分析 強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)の4項目を分析して自社の問題点と強化すべき長所を明確にし、解決策の発見や施策の優先順位決定に活用する。
クロスSWOT分析
SWOT分析の4項目を組み合わせて具体的な戦略を立てる。

(例)

  • 強み(S)と機会(O)を最大化する「SO戦略」
  • 強み(S)を最大化、脅威(T)を最小化する「ST戦略」
  • 弱み(W)を最小化、機会(O)を最大化する「WO戦略」
  • 弱み(W)と脅威(T)を最小化する「WT戦略」
PEST分析 政治(Politics)、経済(Economy)、社会(Society)、技術(Technology)の4つの外部環境を分析し、それらが自社へ与える影響を予測する。

これらの分析手法を用いて、多角的な視点から自社が参入し、成長できる市場を見極めましょう。

既存顧客の増加は離反顧客を減らすことがポイント

既存顧客を増やすためには、新規顧客のリピート率を高めるとともに、顧客離反率を下げましょう。離反を減らす取り組みをおこなう際には、リピート率だけでなく、顧客離反率や顧客維持率の把握も必要です。

《用語の解説》

  • リピート率:初回の購入から2回以上利用している顧客の割合
  • 顧客離反率:一定の期間でどのくらいの顧客が離反したかを示す割合
  • 顧客維持率:一定の期間における、商品の購入やサービスの利用を継続している顧客の割合

リピート率・顧客離反率・顧客維持率は以下の計算式で算出できます。

  • リピート率=期間中のリピート客数÷期間中の顧客数
  • 顧客離反率=期間中の離反顧客数÷期間開始時の顧客数
  • 顧客維持率=(期間終了時の顧客数-期間中に増えた新規顧客数)÷期間開始時の顧客数

リピート率は、新規顧客が再度購入に至った割合を表しているため、これだけでは継続的に自社を利用している既存顧客の割合を把握できません。

顧客離反率と顧客維持率を計測し、おこなっているアプローチが適しているのかの判断材料にしましょう。

離反が起きる原因は価格や商品への不満にあるのか

顧客離反率を減らす対策を講じるときは、離反が起きる原因を把握しましょう。顧客の離反が起きる主な原因として考えられるのは、以下の2つです。

  • 商品価格が適切に設定されていない
  • 顧客がサービスに満足していない

商品価格が適切に設定されていないと価格に見合う価値を感じられず、顧客が競合他社の商品に流れてしまう可能性があります。価格が高すぎると割高感が増して購入しづらくなり、反対に価格が低すぎると品質やブランド価値を低く感じやすいでしょう。

また、顧客が商品やサービスの質に満足していない場合、競合他社へ流れてしまうだけでなく、ネガティブな口コミが広まり、ブランドイメージを落とす恐れもあります。

顧客離反率を低下させ、影響を最小限に抑えるには、なぜ離反が起きているのかを素早く把握し、原因を改善する取り組みが求められます。

離反顧客を減らすために、既存顧客への理解を深め関係を見直そう

離反顧客を減らす対策をするときは、まず既存顧客の特性や購買行動を分析してください。分析結果をもとに、商品・サービスを継続的に利用しリピーターになってもらえる、効果的なアプローチ方法を考えましょう。

既存顧客の特性や購買行動を分析する際には、膨大なデータを扱うため、分析時間・スキル・人材などを含めたリソースが必要です。

コストは発生しますが、顧客とのコミュニケーション記録やデータ分析などの顧客関係管理を自動化できる「CRM(Customer Relationship Management)」を導入すると、効率的に分析がおこなえます。

顧客の購買データを用いた分析について詳しく知りたい方は、こちらも合わせてご覧ください。

来客数を増やす効果的なアプローチ方法

来客数を増やす具体的なアプローチは、細分化した顧客層ごとに考えましょう。

新規顧客・既存顧客の大枠ではなく「認知されているか」「利用されたことはあるか」などを細かく分けて考えることで、顧客層ごとの適したアプローチ方法を組み立てられます。このときに使える顧客層の分類方法が、冒頭で解説した5つです。

  • 未認知顧客
  • 認知・未購買顧客
  • 一般顧客
  • 優良顧客(ロイヤルカスタマーを含む)
  • 離反顧客

自社の顧客をこの分類に当てはめて、それぞれにどんなアプローチが適しているかを精査すれば、来客数を増やす施策を打ち出せるでしょう。

効果的なアプローチ方法の例

以下は、来客数を増やすためにおこなえるアプローチ方法の例です。オンライン・オフライン別に特徴をまとめたので、施策立案の参考にしてください。

《オンライン施策》
施策 アプローチできる顧客 施策の特徴
企業サイト・公式サイト
認知・未購買顧客~優良顧客
…自社を認知し、情報収集している顧客に商品・サービスの詳細な情報を提供できる
  • 商品やサービスの情報をオンライン上で提供する
  • インターネットで情報収集する顧客が多いほど、来客数の増加が期待できる。
Web広告
未認知顧客~離反顧客
…検索履歴や行動履歴、ユーザ属性を用いて、自社に関心がある客層に情報発信し、来店のきっかけを作れる。
  • 検索エンジンやSNSに広告を掲載する
  • ターゲットを絞り込んで配信できるため、的確にリーチしやすい
SNS運用
未認知~離反顧客
…SNS上で情報を提供することで、自社の認知度を高め、来客数を増やすきっかけにできる。
  • SNS上で自社商品やサービスについて発信する
  • 多くのユーザに情報が伝わりやすく、認知を広げやすい
メルマガ
一般~離反顧客
…自社を利用したことがある顧客層に対し、一括で情報発信し、来店を促せる。細かな配信リストで分けて送ることも可能
  • 定期的に購読者に対し情報を一斉メールで配信する
  • 一度に多くの顧客に対して情報を伝えられる
ダイレクトメール(電子)
一般~離反顧客
…自社を利用したことがある顧客層に、属性ごとの細かなターゲティングによる情報を提供し、来客促進につなげる
  • 特定のターゲットに対して情報を配信する
  • 顧客ごとに伝える情報を変えられる
口コミ
認知・未購買顧客~一般顧客
…自社の商品・サービスを詳しく知らない顧客層に、情報収集の一つとして扱われる手法。企業以外からの評価を見て、来店しようと思い立つ顧客の存在が期待できる
  • 既存顧客による口コミを掲載する、もしくは口コミサイトなどに投稿してもらう
  • 第三者による具体的な感想があれば、新規顧客の信頼を獲得しやすい
アプリ
一般顧客~優良顧客
…自社を継続して利用している顧客に対し、情報発信や特典付与がおこなえる手法。扱い方によっては、接触機会の向上にも役立ち、来客数を増加させるきっかけになる。
  • プッシュ通知による情報発信や、クーポンの配布、ポイントカード機能などが使用できる
  • 来店時以外でも顧客との接点が確保できる
  • 利用状況や購買履歴などの顧客データを観測しやすい
《オンライン施策》
施策 アプローチできる顧客 施策の特徴
ポスティング
未認知顧客~離反顧客
…認知や利用の有無にかかわらず配布地域の顧客層に自社の存在をアピールし、認知度を高めて来客数増加につなげられる
  • チラシに商品やサービスの情報を記載し、ターゲット地域に配布する
  • 地域密着型のビジネスに適している
ダイレクトメール(郵送)
一般顧客~離反顧客
…自社を利用したことがある顧客に対して、紙媒体で情報を発信し、来店促進できる。
  • 封書やはがきで個人や法人に情報を届ける
  • 凝ったデザインで視覚的なアピールができる
イベント・セミナー
認知・未購買顧客~優良顧客
…自社を知る顧客層に対して商品・サービスをアプローチするとともに、会場を店舗に設定することで来客を増やせる。
  • 商品・サービスの説明や、体験を目的としたイベントを開催する
  • 顧客との対話が生まれ、商品やサービスの魅力が伝わりやすい
サンプル配布
未認知顧客~離反顧客
…商品を実際に使用してもらう機会を作れるため、さまざまな顧客層の来客数を増やせる。街頭配布やポスティングで配れば、未認知層への訴求も可能。
  • 無料の商品サンプルを配布し、顧客の興味を集める
  • 実際に商品を使ってもらうことで、顧客の購買意欲が高まりやすい

このように、来客数を増やすためには、どの顧客層にどんな効果があるのかを把握して、アプローチ方法を選ぶ必要があります。また、その効果が、来客数の増加にどう影響するのかも重要なポイントです。

例えば、同じ新規顧客でも、自社を全く知らない未認知層と、知っているが使ったことが無い認知・未購買層では響く施策が異なります。同様に、利用頻度が違う「一般顧客」と「優良顧客」に対しても、それぞれ異なる施策を打つ必要があるでしょう。

来客数を増やすために、達成するべき目的は何なのかをよく考え、適したアプローチ方法を実施しましょう。

既存顧客を増やすアプローチで意識したい点

既存顧客にあたる「一般顧客」や「優良顧客」を増やすための販促をおこなうときは、以下の3つを意識しましょう。

  • 有益な情報を定期的に発信する
  • 特別感をアピールする
  • UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)を獲得する

一般顧客に対するアプローチのポイント

利用頻度が低~中程度で、購買金額も低い一般顧客は、自社の商品・サービスに対する不満や、競合の出現によって離反顧客になりやすいといえます。そのため、メルマガやアプリなどを用いて、「顧客が継続的に購入したくなる有益な情報」を定期的に提供しましょう。

優良顧客に対するアプローチのポイント

利用頻度や金額などが高い優良顧客に対しては、売上貢献度の高さを維持するためのアプローチが欠かせません。

優良顧客に特別感を与えると、自社に対する興味関心や好意が高まりやすく、離反リスクを低減できます。ユーザーランクによる特典の付与、ポイント還元率アップなどの方法で、「重要な存在として認識している」ことを訴求しましょう。

ロイヤルカスタマーに対するアプローチのポイント

UGCを獲得しやすいのは、自社に愛着を持つロイヤルカスタマーです。ロイヤルカスタマーとは自社に愛着や信頼を持つ顧客を指し、優良顧客の一部になります。

ロイヤルカスタマーは他者に商品・サービスをすすめる可能性が高く、口コミやレビュー、SNSへの投稿でのポジティブな評価が期待できます。顧客サイドからの情報発信は、集客だけでなく、自社の好感度アップにも効果を発揮するでしょう。

離反顧客を減らすためにおこなうアプローチのポイント

離反顧客を減らすためには、自社の利用が途絶え始めたタイミングで、適したアプローチをおこなう必要があります。まずは途絶え始めたタイミングに自社がどんな施策を打ったのかをおこないましょう。

一例を挙げると、初回後すぐに離反した場合は「特典やクーポンを使用する以外に興味・関心がなかった」という可能性があります。この場合、セール情報やポイントカードの案内を送ってお得感を刺激すると、再来店につながる可能性が高くなります。

離反防止の販促をおこなうときは「いつ、なぜ、離反したのか」を見極めて、顧客にとってのデメリットを解消できる情報を提供しましょう。

まとめ:来客数は顧客層を意識して増やそう!

  • 来客数を増やすには、顧客層を細分化して把握することが大切
  • 新規顧客を増やすには、競争率の低い市場選びがポイント
  • 既存顧客を増やすには、離反顧客を減らすことがポイント

来客数を増やすためには、細分化した顧客層に対して、来客につながるアプローチをおこなうことが大切です。実際の来客数を計算する際は「来客数=店舗前通行量×来店率(入店率)」の計算式を用いましょう。

また、新規顧客を増やすには自社と競合のポジションを明確化し、競争率が低い市場を選ぶことが欠かせません。既存顧客を増やすのであれば、離反顧客を減らす対策が必要です。

また、具体的なアプローチを実施する際には、顧客を以下のように分類する方法がおすすめです。

  • 未認知顧客
  • 認知・未購買顧客
  • 一般顧客
  • 優良顧客
  • 離反顧客

顧客層それぞれに適したアプローチをおこなって、自社の来客数を増やしましょう。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

タグ : データ分析 来店促進 集客 顧客分析 顧客層
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