PSM分析とは?具体的な分析方法やメリットを解説します
PSM分析は、自社製品やサービスの適正価格を調べる際に適した手法ですが、具体的な分析方法がわからない人も多いでしょう。
本記事では、PSM分析の概要やメリット、具体的な分析手法を解説します。PSM分析をマスターして事業展開や商品開発に活かしたい人、消費者ニーズを掴んで商品の適正価格を見極めたい人は、ぜひ参考にしてください。
目次
PSM分析は適正価格を導き出す分析手法
「PSM分析」とは「Price Sensitivity Measurement(価格感度測定)」の略で、自社商品やサービスの適正価格を算出(別名:プライシング)することを目的におこなう分析手法です。フレームワークを元に顧客に4つの質問をおこない、その回答から適正価格を導き出します。
PSM分析で算出できるのは
- 上限価格(最高価格)
- 妥協価格
- 理想価格
- 下限価格(最低品質保証価格)
- 許容可能価格帯
の5つです。
分析結果を参考に、新商品の価格決めや既存商品の価格改定をおこなえます。
PSM分析は受容性調査の一つである
PSM分析は受容性調査に分類されます。
「受容性調査」とは、顧客が自社商品やサービスに抱いているイメージについての調査です。値段のほかに、商品のコンセプトや使い心地などのさまざまな指標を使った調査ができます。
なかでもPSM分析のような価格に関する調査を「価格受容性調査」といい、「CVM分析」もこの調査に含まれます。顧客への質問で適切価格を算出するPSM分析に対し、
CVM分析は、事前にいくつか設定した商品価格ごとに、顧客の購入意欲を聴取する分析手法です。
受容性調査のなかでも、PSM分析は顧客と相談する形でコミュニケーションを図りながら許容可能価格帯を把握でき、適切な価格設定をしやすいことが特徴です。
PSM分析のメリットとは?
PSM分析の主なメリットとして挙げられるのは、次の3点です。
- 顧客に寄り添った価格帯を把握できる
- アンケートよりも信憑性が高い
- 調査や分析をおこないやすい
ここでは、それぞれのメリットを深掘りしていきます。
顧客に寄り添った価格帯を把握できる
顧客への質問で得られたデータによって分析するため、顧客に寄り添った価格帯を把握しやすいことが、PSM分析をおこなうメリットのひとつです。
価格設定の際に社内の意見のみを反映させると、販売者側の「この価格で売りたい」という都合が反映されやすく、市場における商品やサービスの適正価格を見落としがちになります。
PSM分析では顧客の意見のみで分析を進めるため、顧客が商品に対して感じる価値の分析が可能です。顧客にとって購入しやすい価格で提供することで、自社の売上アップが期待できるでしょう。
アンケートよりも信憑性が高い
一般的な市場リサーチのアンケートでは「何円なら買うか」という質問をターゲットへ投げかける場合がほとんどですが、顧客は実際に購入するわけではないため、本心とは異なる回答が出る可能性があります。
そのため「アンケート結果では購入すると答えた人は多かったが、いざ販売を開始したら思ったほど売れなかった」という事態になりかねません。
PSM分析の強みは、具体的な4つの質問に限定するため、顧客の認識する相場や実際の購入思考により近い回答を得やすいことです。顧客の意見に近い価格を把握することで、商品やサービスの購入率を高められるでしょう。
調査や分析をおこないやすい
「定型文での質問に対する顧客の回答をグラフ化する」という簡単な仕組みであるため、誰でも分析しやすいことも、PSM分析のメリットです。
クラスター分析・回帰分析などは難解な数式や計算式を使用して分析をおこないますが、PSM分析ではそこまで難しくありません。データ分析に慣れていない企業や、分析経験のない人でも取り組みやすい分析手法です。
PSM分析の具体的な分析方法
PSM分析をおこなう際は、以下の4ステップで進めていきます。
- 質問を用意する
- 質問結果を表にまとめる
- 累積度数分布表を作成しグラフ化する
- グラフが交わった部分の価格をチェックする
それぞれの手順を詳しく解説しますので、PSM分析のやり方を押さえましょう。
ステップ1:質問を用意する
PSM分析をおこなうには、顧客への質問を用意します。顧客が潜在的に意識している許容可能価格帯を調査するために、商品やサービスを指定し、次の4つの質問を実施しましょう。
- この商品はいくらぐらいから「高い」と思いますか
- この商品はいくらぐらいから「安い」と思いますか
- この商品はいくらぐらいから「高すぎて買えない」と思いますか
- この商品はいくらぐらいから「安すぎて品質が疑わしい」と思いますか
4つの質問は、質問用紙や質問ページを作成しておこないます。なお、質問のニュアンスが変わらなければ文章を少し変えても問題はありません。PSM分析の基礎となる4つの質問を用意しましょう。
ステップ2:質問結果を表にまとめる
続いて、顧客から得た質問結果をExcelなどの表にまとめます。
X軸を質問内容(高い・安い・高すぎる・安すぎる)、Y軸を回答者にした一覧表を作成し、回答者の数だけ行を追加しましょう。
ステップ3:累積度数分布表を作成しグラフ化する
次は、表にまとめたデータを元に累積度数分布表の作成と、数値のグラフ化です。
集計データとは別のセルで、X軸に基準価格、Y軸に質問項目を記入した表資料を作成しましょう。
PSM分析では関数「COUNTIF」「COUNT」による、次の数式を使って計算します。
=COUNTIF(範囲,検索条件)/COUNT(範囲)
「範囲」には「その2」で作成した質問結果表のセル、
「検索条件」には、累積度数分布表の基準価格にあたるセルを記入します。
《例》B(質問項目)に対して「G3円以下」と回答した割合の計算
=COUNTIF(B3:B52,”<="&G3)/COUNT(B3:B52)
【”<="&G3】は「G3円以下」で、
【">=”&G3】は「G3円以上」を指します。
範囲は、計算するセルによって変えましょう。
すべてのセルに数式を記入した後、表記をパーセンテージに変えます。累積度数分布表が作成できたら、グラフ化ツールを使って折れ線グラフを作りましょう。作成した分布表の全範囲を選択し、画面上部にあるグラフツールの「折れ線グラフ」を選んで挿入します。
ステップ4:グラフが交わった部分の価格をチェックする
グラフの4つの交点から、次の4つの価格を把握できます。
- 妥協価格:高いと思う価格と安いと思う価格の交点
- 下限価格:高いと思う価格と安すぎると思う価格の交点
- 上限価格:安いと思う価格と高すぎると思う価格の交点
- 理想価格:高すぎると思う価格と安すぎると思う価格の交点
それぞれの交点から各価格を導き出し、最適な設定価格を検討しましょう。許容可能価格帯は、上限価格から下限価格の間です。
また、会社側の都合(生産コストや利益の確保など)や競合他社との価格差も考慮し、多角的な視点で価格戦略を決定することがポイントです。
まとめ:PSM分析の手法をマスターして商品の価格設定に役立てよう
- PSM分析とは、適正価格を導き出すためにおこなう受容性調査のひとつ
- 顧客に寄り添った調査で信憑性が高く、調査しやすいことがメリット
- 分析は4つのステップで簡単におこなえる
PSM分析は、顧客が自社商品やサービスに持つイメージを調べる「受容性調査」のひとつです。顧客が求める適正価格を調べられます。PSM分析のメリットは、顧客に寄り添った価格帯を理解できること、一般的なアンケートより信憑性が高いこと、調査・分析に取り組みやすいことです。
4つの質問に対する顧客の回答結果を表にまとめてグラフ化すればよいため、分析に慣れていない人でも簡単に取り組めるでしょう。マーケティングリサーチでPSM分析を活用し、商品の適正価格を探してみてください。