満足度調査分析が会社の質を高める!具体的な手法や基礎知識を解説
現代の競争社会で会社が成長して生き残るには、顧客満足度の高い商品やサービスを提供することが求められます。その顧客満足度を向上させるカギとなるのが、満足度調査(CS調査)です。満足度調査を実施することで、顧客が満足している部分や解決すべき課題を明確にできます。
しかし、いざ満足度調査を始めようにも、どこから手をつければよいのか悩んでいる方も多いのではないでしょうか。この記事では、満足度調査で用いられる分析手法、具体的な進め方、メリット・デメリットなどを解説します。
目次
満足度調査(CS調査)とは?
「満足度調査(CS調査)」とは、顧客が自社の商品やサービスにどれだけ満足しているかを知るための調査です。満足度調査では既存顧客の商品・サービスに対する満足点と不満点を知るために、率直な意見や感想を収集します。
満足度調査によって顧客の声を形にでき、さらに満足度を上げるには、どこを改善すればよいのかを把握できます。既存顧客を維持し、新規顧客を獲得するためのヒントを得られるでしょう。
NPSとは
満足度調査で用いられる指標の一つに「NPS」があります。NPS(ネット・プロモーター・スコア)は、顧客ロイヤルティを数値化する指標のひとつです。顧客ロイヤルティとは、企業・ブランドへの信頼や愛着を指します。
「商品・サービスを知人にすすめる可能性は、どのくらいありますか?」という質問を投げかけ、10~0の11段階で評価してもらいます。10~9を推奨者(プロモーター)、8~7を中立者(ニュートラル)、6~0を批判者(デトラクター)と定義して、推奨者から批判者を引いた値がNPSとなります。
満足度調査とNPSの違い
満足度調査は、調査時の商品やサービスに対する顧客満足度がわかるのに対し、NPSは企業や商品全体のイメージを数字で見るもので、長期間にわたる満足度が示されます。
満足度調査とNPSを組み合わせて使用することで、顧客の満足度とロイヤルティの全体像をより明確に捉えられます。それぞれの調査結果を施策に反映させることで顧客との関係を深化させ、新規顧客の獲得や顧客単価の増加につなげられるでしょう。
満足度調査(CS調査)で用いる分析手法
満足度調査には代表的な分析手法が3つあり、それぞれ次のように活用できます。
- ポートフォリオ分析:改善ポイントを明確にする
- 相関分析:データ同士の関連性を見出す
- クロス集計:複数のデータの相関性を発見する
これらの分析によって効率的な戦略立案や改善の優先順位付け、そして満足度に影響を与える要素の特定ができるでしょう。
分析手法について、1つずつ解説します。
ポートフォリオ分析
ポートフォリオ分析は、顧客満足度と重要度を1枚のグラフにまとめる手法です。グラフを見ることで顧客が何に満足しているか、何を重要視しているかを一目で把握できます。
顧客の満足度を縦軸、総合満足度へ影響する重要度を横軸として、4分割のグラフを作成します。
- 重要維持項目:満足度が高く、総合満足度への影響も大きい
- 重要改善項目:満足度が低く、総合満足度への影響が大きい
- 現状維持項目:満足度が高く、総合満足度への影響が小さい
- 改善項目:満足度が低く、総合満足度への影響も小さい
満足度は上に、重要度は右にいくほど高いため、右上の「重要維持項目」は顧客の満足度と重要視度が高く、左下にある「改善項目」は重要度が低いとわかります。右上は継続したほうがよい項目、左下は検討しなおしたほうがよい項目です。
このグラフで重要なのは右下の「重要改善項目」です。顧客が重視しているものの、まだ満足していない項目で、優先的に改善したほうがよい課題といえます。
ポートフォリオ分析は多くの情報を1枚のグラフで把握でき、別々のグラフを見る手間が省けるため、時間の節約が可能でしょう。
相関分析
相関分析は、2つのデータの関連性を明らかにして数値化する分析手法です。「相関係数」という、2つのデータの関連性を表す値を使い、-1から+1の間の値でデータの関係を表します。
相関係数が1に近づくほど正の相関が強まり、反対に、相関係数が-1に近づくと負の相関が強くなります。
- 正の相関:「勉強時間が増えるとテストの点数も上がる」というような、一方のデータが増加するともう一方のデータも増加する傾向
- 負の相関:「外で遊ぶ時間が増えるとテストの点数は下がる」というような、一方のデータが増加するともう一方のデータは減少する傾向
相関係数が0に近い場合はほとんど相関関係がないとされ、一方のデータの増減がもう一方のデータに影響を与えることはないといえます。
相関分析を利用することで、大量のデータの中から関連性を見つけられる、関連性を数値で表せるというメリットがあります。さらに数値をもとに分析をおこなうため、個人の主観を排除して客観的な判断ができるでしょう。
クロス集計
クロス集計は、年齢・性別・居住地など複数の項目を組み合わせて集計し、項目の相関関係を調査する分析手法です。クロス集計により、商品やサービスの満足度を顧客の属性別に把握できます。
満足度調査におけるクロス集計で得た結果は、次のようなシーンで活用できるでしょう。
- 地域別の顧客満足度と販売店舗・購入頻度の相関から、地域に特化したマーケティング戦略を立案する
- 価格に不満を持つ顧客の他項目における満足度を調査し、商品やサービスの改善をおこなう
- 商品の満足度と年齢・性別による嗜好を把握し、広告出稿や商品開発の精度を高める
分析には会員情報の登録やアンケートによるデータ収集が必要ですが、データがそろえばExcelなどの表計算ソフトで分析可能なため、取り組みやすいマーケティングリサーチの一つです。
満足度調査の簡単な手順
満足度調査の手順は以下のとおりです。
- 調査の目的をはっきりさせる
- 仮説を立てて質問項目を考える
- アンケート調査を実施する
- 調査結果を集計して分析する
この手順で進めれば、改善に役立てられるデータを集められるでしょう。
1. 調査の目的をはっきりさせる
最初に満足度調査の目的を明確にします。
「顧客の購買頻度を上げたい」「顧客の口コミや評判を良くしたい」「ニーズに応じた新サービスを考えたい」など、具体的な目的を設定しましょう。
目的以外にも調査の対象者や実施方法、期間も決めておくとスムーズに進められます。
2. 仮説を立てて質問を考える
目的を明確にしたら、仮説を立てましょう。顧客の購買頻度を上げることが目的なら「商品の質が低いのでは?」「他店の商品がもっと魅力的なのでは?」といった仮説を考えます。
仮説を立てたら、次は質問を考えます。質問はシンプルで答えやすいものにしましょう。たいていのアンケート調査では「よい・ややよい・普通・やや悪い・悪い」の5段階評価が採用されています。
目的次第では、5段階ではなく4段階での評価を設定し、中立的な意見を除外し、全体の質問との相関・因果関係を見てアンケートの傾向を分析する方法も選びましょう。
3. アンケート調査を実施する
質問を決めたらアンケートをおこない、対象者の回答を集めましょう。
正確な分析をするためには、年齢や性別なども同時に聞いておくとよいでしょう。
4. 調査結果を集計し、分析する
回答が集まったら満足度を集計して、総合満足度と各項目の相関係数(重要度)を算出します。5段階によるシンプルなデータであれば、ExcelのCORREL関数やデータ分析機能を使って相関係数を計算できます。
最後に算出した満足度と重視度を使って、どういう点が重要で影響が大きいのかを分析し、今後のマーケティングに生かしましょう。
満足度調査分析のメリット・デメリット
顧客ロイヤリティの向上、改善すべき点の把握など、満足度調査分析にはさまざまなメリットがあります。しかし、時間的なコストを必要とするというデメリットも存在しています。
これから解説するメリットとデメリットを理解した上で、満足度調査分析をおこなうべきかどうかを検討しましょう。
満足度調査分析のメリット
満足度調査分析を実施するメリットは、企業に対する信頼や愛着を深めて、ファンを増やせる点です。商品の使いやすさやサービスの速度など、顧客が何を求めているのか、選択基準は何かが明らかになります。
商品やサービスの優先的な改善点が見えてくるため、業務を効率的に進められるでしょう。顧客が本当に求めているものを理解したうえで改善に取り組むことで、顧客満足度を高められます。結果的にリピーターの増加と売上アップにつなげられるでしょう。
顧客満足度分析のデメリット
顧客満足度分析は企業にとって重要な取り組みです。しかし、時間的コストがかかるというデメリットもあります。
分析を始めるには、まず調査の設計をおこないます。次に情報の収集と分析、最後に改善策を考え実行しなければなりません。一つ一つの工程に時間を要し、すべて自社でおこなうとなるとかなりの時間と労力がかかります。小さな企業や人手が足りない企業では、分析をおこなうことが難しい場合もあるでしょう。
調査を途中で投げ出さないためにも、実施する前に満足度調査による費用対効果を慎重に検討する必要があります。
まとめ:満足度調査で顧客の心に寄り添った会社づくりをしよう
- 満足度調査をおこなえば自社の商品・サービスに対する満足度がわかる
- 調査結果をもとに改善を進めれば顧客ロイヤリティの向上が期待できる
- 時間的コストを必要とするため、実施前に費用対効果を検討する
満足度調査分析によって、最優先で改善すべきポイントが明確化されます。
調査結果をもとに改善を続ければ、顧客に喜ばれる商品やサービスを提供し続けられるでしょう。まだ満足度調査を実践していない場合は、ぜひ取り入れてみてください。