顧客分析の代表的な方法は5つ!分析の手順も詳しく解説します
「商品の質はいいのに、顧客ニーズに合ってないのか、売上が伸び悩んでいる」
「ターゲットを絞って販促をしたいが、どの客層にすればいいのか決められない」
このようなときに役立つのが、顧客分析です。
顧客分析は自社の顧客に対する理解を深め、売上アップや経営戦略の立案に活用するためにおこないます。
本記事では顧客分析の代表的な5つの方法と、分析手順を合わせて解説します。
適切な分析方法を活用して顧客に対する理解を深め、効果的なマーケティング戦略による売上アップにつなげましょう。
顧客分析とは、自社顧客の属性や行動を分析すること
「顧客分析」とは、顧客の属性や購買行動などを分析することです。
顧客分析は顧客理解を深めるために行い、分析によって顧客の特徴や心理を掘り下げると、以下のような効果が得られます。
- 顧客が何を考えて自社を利用しているか理解できる
- 顧客の潜在的なニーズが明らかになる
- 顧客が商品やサービスに求めていることがわかる
これらを生かしたマーケティングによって期待できるのは、顧客満足度の向上です。
適したアプローチによって顧客からの評価が上がると、既存顧客の長期的なリピーター化が促進され、LTV(顧客生涯価値)の増加も期待できるでしょう。
なお、顧客分析は既存顧客を対象にすることが多いですが、新規顧客の開拓や、自社の利用が止まっている休眠顧客の再発掘を目的におこなう場合もあります。
顧客分析に用いる分析項目の一例
顧客分析の項目には、以下のようなものがあります。
- 属性:年齢、性別、年収、世帯構成、所在地、(BtoBの場合)企業名、規模など
- 購買履歴:購買金額、購買頻度、最終購買日など
- 商談履歴:ヒアリング内容、受注の確度、商談の回数や最終商談日など
- 顧客の嗜好:趣味、ライフスタイル、思考傾向など
- 満足度:NPS(数値化した顧客ロイヤリティ)、顧客の声など
- プロセス:情報収集先、検討機関、商品・サービスを知るきっかけなど
顧客分析で使用するデータは、自社の事業形態や扱っている製品・サービスによって異なります。
また、分析項目には、数値で表す「定量データ」と言葉で表す「定性データ」があり、分析精度を高めるには、目的に応じて項目を選び情報を補完することが大切です。
定量/定性データについて、具体的な項目や取得方法を知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
顧客分析の代表的な5つの方法
顧客分析をおこなうときは、分析のためのフレームワークを利用すると効率的です。
さまざまなフレームワークがありますが、今回は、代表的な手法を5つ解説します。
まずは、これらの手法について学び、店舗に合ったものを探しましょう。適したフレームワークを活用して、顧客理解や売上アップにつなげてください。
顧客分析の手法その1:RFM分析
「RFM分析」とは直近の購入日・購買頻度・購入金額によって顧客を分類する手法です。
指標 | 評価方法 | 分類される顧客層 |
---|---|---|
Recency (最終購入日) |
購入日が最近であるほどスコアは高い |
|
Frequency (購入回数) |
(購入回数) | |
Monetary (購入金額) |
購入金額の累計額が高いほどスコアも高い |
例えば、購入金額は少ないものの、頻繁に購入している顧客は「安定顧客」といえます。リピーターとして見込めるため、その顧客に合った施策を打ち出すことが大切です。
反対に、購入金額が高くても数ヶ月前で購入が止まっているような場合、その顧客は競合他社に流れていると考えられるため、「離反層顧客」に分類できるでしょう。
このように、それぞれの客層を知ることで、ターゲットを絞った施策を実行できるようになります。ただし、RFM分析では分析した時点のスコアだけで判断するため、顧客の事情や商品の特性などが加味されません。また、シーズンものなど時期の限定されるような商品の場合、この分析には適しません。
偏りのない分類をおこなうには、ほかの分析によるデータの併用をおすすめします。
顧客分析の手法その2:デシル分析
「デシル分析」とは、顧客を購入額ごとに10グループに分ける顧客分析の手法です。分析は以下の手順で進めましょう。
- 顧客を購入金額の多い順から10グループに分ける
- 各グループの合計金額を算出する
- 各グループごとの合計金額から、売上全体に対する比率や貢献度を分析する
上の流れで貢献度の高いグループがわかったら、その顧客に対する施策をおこないます。
貢献度に応じたて効果的な施策を打ち出せば、リピーターの確保にも繋がるでしょう。
ただし商品やサービスによっては、購入額の高さと購買頻度が比例しない顧客も上位に含まれます。例外的な顧客を除いて分析精度を高めるには、「あらかじめ対象の顧客を除外する」「定期的にデシル分析をおこない、常に上位に振り分けられる顧客を見つける」などの工夫が必要です。
顧客分析の手法その3:セグメンテーション分析
「セグメンテーション分析」とは、顧客を変数によってグループ分け(セグメント)する手法です。知りたい情報に応じて既存顧客の共通項を洗い出し、グループに合ったマーケティング施策を打ち出します。セグメンテーション分析の分類方法と具体例は、以下の通りです。
分類方法 | 具体例 |
---|---|
地理的変数 | 地域、気候、人口密度、文化など |
人口動態変数 | 年齢、性別、職業、所得、家族構成など |
心理的変数 | ライフスタイル、嗜好、価値観など |
行動変数 | 購買経路、頻度、購入・利用時間帯など |
セグメンテーション分析ではセグメントを細かくしすぎると、かえって効果的な施策を打ち出しにくくなる場合があります。求めている情報を明確にし、セグメント内容を簡潔化させて取り組むことで、適切な顧客分析データを得られるでしょう。
顧客分析の手法その4:行動トレンド分析
「行動トレンド分析」とは、特定の時期に購買行動をする顧客に着目して、購買率や特徴を分析する手法です。以下が、トレンド分析の対象になる項目の一例です。
- 季節の変動
- 朝・昼・夜の変動
- 曜日
- 数年にわたる変動
季節に合わせた商材がある場合、「夏には、〇〇地方に住む〇〇歳代の顧客による購入が増える」「年末年始には、〇〇の職種の顧客による購入が増加する」などの分析結果が得られます。最適なタイミングで販促をおこなうと、売上アップにつながるでしょう。
ただし、時期を限定した分析であるため、日用品や食料品といった常時販売している商品には、行動トレンド分析は向いていません。
顧客分析の手法その5:コホート分析
「コホート分析」とは、顧客を同じ属性や条件を持つグループ(コホート)に分類し、顧客の動向を分析する手法です。分析結果は、ECサイトでの購入率やSaaSサービスの成約率などの増加に役立てられるでしょう。
以下は、ECサイトの場合・SaaSサービスやサブスクリプションの場合のそれぞれにおけるコホート分析の実行例です。
<ECサイトの場合>
- 「同じキャンペーンを介して商品を購買した顧客」をコホートに分ける
- 購入金額や月ごとのコンバージョン率の変化を分析する
- 次回のキャンペーンに分析結果を反映させる
- 「無料トライアルを実施した顧客」をコホートに分ける
- 使用頻度や月ごとの解約率を分析する
- 2.の結果を踏まえて今後の施策を立てる
コホート分析で注意する点は、あくまで限られた集団の行動パターンを分析したデータであり、顧客が必ずしも分析どおりの行動をとるとは限らないことです。顧客の傾向をより正確に把握するには、長期的な分析をおこないましょう。
顧客分析をおこなう流れは4ステップ
顧客分析をおこなうには、4つのステップがあります。
- 分析の目的を明確にする
- 分析対象とする顧客層を決める
- 分析を実施し、カスタマージャーニーを考える
- 顧客ニーズを洗い出して次の施策につなげる
ここでは上の順に沿って顧客分析の流れを解説しますので、参考にしてください。
顧客分析のステップ1:分析の目的を明確にする
顧客分析をはじめる前に、目的を明確にしましょう。
例えば自社サロンの売上が伸び悩んでいる場合、顧客分析の目的は「顧客の不満やニーズを深掘りし、売上アップを目指す」などにするとよいでしょう。
次にゴールとなる達成基準を決めます。「現在の売上から〇〇%アップを目指す」というように、具体的な数値を用いましょう。
顧客分析のステップ2:分析対象とする顧客層を決める
目的を決めたら、次に顧客分析をおこなう顧客層をいくつか定めてください。自社商品のリピート率を向上させたい場合は、以下のように分類ができます。
【リピート率を高めたい場合の具体例】
- 顧客層1:すでに商品のリピーターとなっている顧客
- 顧客層2:商品を2~3回購入し、その後購入をやめた顧客
- 顧客層3:商品を1回だけ購入し、その後購入しなかった顧客
顧客層をはじめから1つに決めるのではなく、複数のセグメントを比較することで適切な分析対象に絞り込めるでしょう。
顧客分析のステップ3:分析を実施し、カスタマージャーニーを考える
対象となる顧客層を決めたら、分析手法を決め、分析を実施してカスタマージャーニーを考えましょう。
「カスタマージャーニー」とは、顧客が自社の商品・サービスをどのように知り、どういうきっかけで興味・関心を持ち、購買するに至ったのかというプロセス全体を可視化するものです。
カスタマージャーニーを考え、顧客の購買プロセスを明らかにすることによって、自社のアプローチ方法が有効に働いているかどうかを分析しできます。
顧客分析を効率化するツールもある
顧客分析にはフレームワークに加え、顧客データの管理や分析をおこなうツールを活用すると便利です。顧客分析で活用できる管理・分析ツールは、以下をご覧ください。
ツール | 用途 | 基本的な機能 |
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CRM |
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SFA |
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MA |
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これらの分析ツールは、それぞれ用途が異なりますが、蓄積された顧客情報や搭載されている分析機能で顧客分析の効率化を図れます。手動で行うよりも複雑な顧客分析ができるため、顧客に合ったアプローチをおこなえるでしょう。
ただし、各ツールには導入費用がかかり、また、使いこなすためのノウハウを学ぶ時間的コストも発生します。
一方、この記事で解説した分析手法の一部は、ExcelやGoogleスプレッドシートなどの表計算ソフトでも分析できる方法です。まずは低コストですぐに取り掛かれる方法を取り入れ、その後、より精度が高い分析が必要になったらツールの導入も検討しましょう。
顧客分析のステップ4:顧客ニーズを洗い出して次の施策につなげる
カスタマージャーニーがまとまったら、顧客ニーズを深掘りします。
顧客ニーズの深掘りによって、顧客が自社商品やサービスに対して潜在的に持っているニーズを見つけます。
顧客ニーズを洗い出せたら、それを満たすための具体的な施策を考えて、実行していきましょう。施策を実行する際には、かならず仮説に基づいておこなってください。また、実行後は実際の効果を測定し、改善点や効果があった点を洗い出して次回の施策に生かしましょう。
まとめ:顧客分析の手法・手順をおさえ効率的な顧客分析を目指そう
- 顧客分析の代表的なフレームワークを5つおさえ、知りたい情報に合わせた分析方法を活用する
- 顧客分析の手順をおさえ、目的とゴールを設定することで分析を効率的に進められる
- CRM・SFA・MAなどの分析ツールを活用すると、より複雑な顧客分析が可能となる
自社の顧客を適切に分析すると、営業戦略やマーケティング施策を立案しやすくなり、事業の成長が見込めます。また、将来的にはCRM・SFA・MAといった分析ツールを併用することで、より複雑な分析データから、売上アップなどの成果につながるヒントが得られるでしょう。
これから顧客分析をはじめる方は、エクセルを用いた簡単な分析から取り組み、顧客に対する理解を深めて、売上アップや事業の成長を目指してください。