【顧客の行動分析をマーケティングに生かす方法】3つのフレームワークを解説

顧客・データ分析
このエントリーをはてなブックマークに追加

店舗経営において、顧客の視点でのマーケティングはとても大切です。顧客の意見を聞くことは難しいですが、考えを推測する方法があります。それは「行動分析」です。顧客の行動を細かく分析することで、言葉だけではわからない好みや趣向を推し量れるでしょう。

今回は、顧客の行動分析をおこなう目的やメリット、分析の際に役立つフレームワークなどを解説します。顧客の行動分析について知りたい方や疑問のある方は、ぜひ最後までご覧ください。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

顧客の行動分析は「行動分析学」に基づいておこなう

「行動分析」とは「人はどのような状況でどのような行動を取るのか」といった人の行動を分析することです。行動分析によって行動の要因を把握して、未来の行動を予測できるようになります。

分析結果に応じて必要な対策を講じられることから、ビジネス・スポーツ・介護など、さまざまな場面で活用されています。

行動分析のベースとなっているのは、「行動分析学」と呼ばれる心理学です。1930年代にアメリカの心理学者スキナー(B.F. Skinner)が提唱しました。

「人や動物の行動には法則がある」という考え方のもと、周囲の環境によって人や動物の行動がどう変化するのかを調べ、行動の法則を明らかにする学問です。

顧客の行動分析で押さえておくべき2種類の行動

行動分析学では人の行動は主に、

  • レスポンデント行動
  • オペラント行動

の2種類に分けられます。この2つの違いを知ることで、マーケティングをさらに効果的におこなえるでしょう。

人間の行動分類1:レスポンデント行動

「レスポンデント行動」とは、外からの刺激に自動で反応する行動です。自分の意思とは無関係に引き起こされるため、人が意図的にコントロールすることは難しいといわれています。

小売業のマーケティングにおいては、レスポンデント行動よりもオペラント行動が重要視されています。オペラント行動はレスポンデント行動とは対照的です。

人間の行動分類2:オペラント行動

「オペラント行動」とは、弁別刺激による人間の自発的な行動を指します。

弁別刺激とは…
与えられた刺激や環境により、特定の行動が強化・弱化される刺激のこと。刺激がない場合、行動への影響は発生しない。

例えば、Aさんが「上司が目の前にいる」という弁別刺激を受けたとき、「仕事をする」といったオペラント行動は以下のように変容するでしょう。

  • 好きな上司だった場合:仕事を頑張る
  • 嫌いな上司だった場合:仕事をサボる

前者はオペラント行動が強化され、後者はオペラント行動が弱化されることが分かります。

このように、刺激や環境によって次回以降のオペラント行動が変化する一連の行動・学習を「オペラント条件付け」といいます。

オペラント行動理論を理解してマーケティングに生かそう

オペラント行動の理論を上手に活用すれば、売上や利益の増加につなげられます。

無料ドリンクを提供して「この店舗では無料で飲み物が飲める」といった来店体験を提供する、商品にサンプルを付けて競合への乗り換えを防ぐなど、外的要因をコントロールすることで、顧客が自社の望む行動を起こすように導けるでしょう。

ただし、無料サービスやサンプルを提供するためには店舗側のコストが発生するため、利益を圧迫してしまわないよう、注意しなければなりません。ランダム制もしくは、時間帯や期間、顧客層を限定してオペラント条件付けをおこなうなどの工夫が必要となるでしょう。

顧客の行動分析で得られるメリット

顧客の行動分析によって得られるメリットは3つあります。

  • 適切なマーケティング戦略の立案
  • 顧客満足度の向上
  • 顧客の行動を捉えたオムニチャネル化

顧客の行動分析をおこなうことで効果的なマーケティングを実践でき、売上や業績のアップにつなげられるでしょう。

適切なマーケティング戦略の立案

顧客の行動分析を活用すれば自社のどこに課題があるのか、どういった対策を講じるべきかを把握でき、より効果的なマーケティング戦略を立案できます。

分析結果から発見した課題に対するマーケティング戦略の立案例は、以下の通りです。

課題 施策の立案例
商品が認知されていない ・目につきやすい位置に商品を配置する
・新しい広告を展開する
商品・サービスに興味を持ってもらえない ・広告の方法や訴求ポイントを変えてみる
商品の購入・サービスの利用にいたらない ・欲求を刺激するキャンペーンを実施する
・購入しやすいシステムを導入する

行動分析の結果を基にマーケティング戦略を立てて実行することで、自店舗の売上向上につなげられるでしょう。

顧客満足度の向上

「顧客満足度」とは、顧客が自社の商品やサービスにどれだけ満足しているかを数値として表した指標です。売上や業績の成長には顧客満足度の向上が欠かせないため、顧客ニーズを理解したうえでマーケティングをおこなえるかが重要になります。

行動分析のメリットは、顧客が本当に求めているものを見つけられることです。表面化していなかった顧客の不満や問題も発見できるため、顧客の期待に沿った、あるいはそれ以上の商品・サービスを提供できる可能性もあります。

顧客満足度が向上することで口コミによる新規顧客の獲得、ブランドイメージのアップ、リピート率や客単価の向上も期待できるでしょう。

顧客の行動を捉えたオムニチャネル化

「オムニチャネル」とは、店舗・アプリ・ECサイトなどのあらゆる接点(チャネル)を通じて、顧客へ最高の購買体験を提供することを目指す考え方です。オンラインとオフラインの境界をなくし、どこにいても気軽に買い物ができる環境を作ることを狙いとしています。

しかし、ただ顧客との接点を増やすだけでは、オムニチャネル化しても成功は望めないでしょう。

オムニチャネルにおいて大切になるのが、顧客の行動分析です。

顧客が「どんなときに」「なにを求めているのか」「どのような経路で購入に至るのか」を把握する必要があります。行動分析の結果に基づいたオムニチャネルを作ることで、顧客ニーズに合わせた買い物体験を提供できます。販売チャンスを逃さず購買につなげられるため、売上アップも期待できるでしょう。

顧客の行動分析に有効なフレームワーク3選

無計画に顧客の行動を観察するだけでは、行動分析のメリットは得られません。分析方法によって収集できる情報が異なるため、達成したい目標に合わせたフレームワークを選ぶ必要があります。

フレームワークにはさまざまな種類が存在しますが、行動分析をおこなううえで特に押さえておきた有効なのは、次の3つです。

  • CTB分析
  • デシル分析
  • RFM分析

これらのフレームワークは、顧客の購買行動を深く理解して効果的なマーケティング戦略を策定する際に使用できます。

CTB分析

「CTB分析」は、顧客の購買を予測するために使われるフレームワークです。商品を以下の3要素に分類して分析します。

  • Category(カテゴリー):大分類(商品のジャンル)・小分類(商品の種類)
  • Taste(テイスト):形・色・模様・質感・デザイン・サイズなど
  • Brand(ブランド):ブランド・メーカー・キャラクターなど

CTB分析では、顧客がどのような商品を好むのかといった、心理や趣味嗜好を知ることができます。

具体的には、購買データを細分化して3つの指標から顧客の好みを分析することで、特定の顧客が求める商品の種類や形・色、ブランドなどを捉えられます。

言葉で表された抽象的なデータを使用するため、分析には高度な技術が求められますが、顧客ニーズに合わせたマーケティング施策を立案しやすくなるでしょう。

デシル分析

「デシル分析」とは、顧客が店舗の売上にどのくらい貢献しているのかを把握するためのフレームワークです。累計購入金額の高い人から順に10個のグループに分け、各グループの購入比率や売上構成比を計算します。

デシル分析のメリットは、売上への貢献度が高い優良顧客層を見つけられることです。購買意欲のある顧客を特定してアプローチできるため、新規顧客を探すよりも低いコストで売上を増やせる可能性があります。

顧客の心理は分析できないため、他の手法との組み合わせが必要

購入金額や売上構成比だけを対象とするデシル分析には、顧客が商品を購入する理由や満足度などは分析できないというデメリットも存在します。

顧客が商品の購入を決定するには、価格だけではなく品質やブランドの信用度など、たくさんの要素が影響するためです。

顧客の満足度を高め、長期的なマーケティング戦略を考えるには、デシル分析だけでは十分な情報を得られません。ほかのフレームワークも活用しながら「なぜ顧客は自社の商品を選んだのか」「抱えている悩みや問題はなにか」など、さまざまな視点から考える必要があります。

RFM分析

「RFM分析」は下の3つの指標を用いて顧客を分析するフレームワークです。デシル分析と同じく、自社の売上に貢献している顧客を把握できます。

  • Recency(最終購入日):最終購入日が現在の日付に近いほど優良顧客
  • Frequency(購入頻度):購入頻度が高いほど優良顧客
  • Monetary(購入金額):累計購入金額が大きいほど優良顧客

優良顧客を発見するだけではなく、今後のマーケティング次第で優良顧客になりうるグループを見つけられることも、RFM分析のメリットです。グループに分けて整理することでグループごとに効果的なマーケティング活動をおこなえるため、コストを抑えながら売上の向上を図れます。

まとめ:顧客の行動分析をヒントに売上を伸ばそう

  • 顧客の行動分析を活用すれば自社にとって好ましい行動を促すことができる
  • 顧客ニーズに合わせたマーケティングを実践でき、売上や業績のアップが期待できる
  • 顧客の行動分析にはCTB分析・デシル分析・RFM分析が有効

近年はさまざまな新しい商品やサービスが次々と登場しています。以前よりも顧客一人一人に合わせたマーケティングが求められる中で、行動分析は顧客ニーズを把握できる強い味方です。

行動分析の結果をもとに顧客と向き合うことで、より多くの成果を上げられるでしょう。まだ行動分析を導入していなければ、この機会に取り入れてみてください。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

タグ : データ分析 顧客分析
このエントリーをはてなブックマークに追加