顧客データをマーケティングに活用する4つの効果と具体的な分析手法を解説
顧客データは、顧客目線でのマーケティング戦略を実行する上で活用すべきデータのひとつです。とはいえ、実際にどのように活用できるのか、詳しく知らない方も多いでしょう。
今回は、顧客データの活用で得られる効果やデータをマーケティングに活用するための分析手法を解説します。
顧客データをもとにニーズを満たすマーケティング施策を展開し、売上の増加や顧客満足度アップを目指す方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
顧客データの活用は、正しいマーケティング戦略の立案に貢献する
顧客データを適切に活用してマーケティング戦略を立案・実行することは、顧客の自己実現につながります。ここでいう「顧客の自己実現」とは、顧客が自身の好みに合った商品やサービスを購入した体験から、理想の自分やあるべき姿を達成することです。
このような顧客の自己実現にフォーカスした考え方は「マーケティング4.0」と呼ばれ、ノースウェスタン大学ケロッグ経営大学院特別教授のフィリップ・コトラー氏が提唱しています。
これまでは品質のいい商品(マーケティング1.0)や社会の益となる商品(3.0)が売れる時代でした。今後はそれに加え、顧客の自己実現につながる商品が注目されるだろうというのが、マーケティング4.0の理論です。
顧客が商品やサービスに満足することで顧客満足度が向上し、売上の最大化やリピート顧客の獲得につながります。顧客データを正しく分析して活用することは、今後のマーケティングを成功させる上で欠かせません。
顧客データの活用で得られる4つの効果
顧客データを活用することで、マーケティングにおけるさまざまな効果が期待できます。
以下は、顧客データの活用で得られる効果の例です。
- データドリブンマーケティングの実行
- One to Oneマーケティングの実行
- LTVの最大化
- 顧客体験の質向上
それぞれの項目について、ポイントを解説します。
効果1:データドリブンマーケティングの実行
顧客データを活用して得られる1つ目の効果は、データドリブンマーケティングを実行できること。
「データドリブンマーケティング」とは、社内に蓄積されたデータを客観的に分析し、施策の実行に役立てるマーケティング手法です。純粋にデータだけを機動力とする点が、従来型のデマンドドリブンマーケティングとは違います。
昨今、多くの国内企業では、ITやデジタル技術の活用でビジネスモデルを変革し、自社の競争優位性を高めるデジタルトランスフォーメーション(DX)の導入が求められています。中でもデータドリブンマーケティングの重要性が高く、蓄積されたデータに基づく意思決定は欠かせません。
データドリブンマーケティングで有効な施策を実行することで、効率的に自社の競争力を高められるでしょう。
効果2:One to Oneマーケティングの実行
顧客データの活用によって得られる2つ目の効果は、One to Oneマーケティングを実行できることです。
「One to Oneマーケティング」とは、顧客一人ひとりのニーズに合ったマーケティングを実施する考え方を指します。不特定多数に向けておこなわれるマスマーケティングとは違って、パーソナライズ化された顧客対応を目指すものであり、そのためには顧客データの活用が不可欠です。
One to Oneマーケティングで顧客データを活用すると、商品やサービスの価値だけでなく提供方法にもこだわり、良質な顧客体験を与えられます。
顧客データで個々のニーズや好みを把握した上でOne to Oneマーケティングをおこなうことにより、顧客満足度の向上やブランドへのファン化などの効果が期待でき、顧客との強固な関係を構築できるでしょう。
効果3:LTVの最大化
顧客データを活用する3つ目の効果は、LTVの最大化につなげられることです。
LTV(顧客生涯価値)とは、ある顧客が生涯を通して企業にもたらす利益のこと。ビジネスにおいて既存顧客のLTVを上げることは、新規顧客を獲得するよりもマーケティングコストを低く抑えられるため、長期的な利益の確保に貢献します。
LTVを最大化するには、顧客データを適切に分析して顧客をセグメント化し、各セグメントに合ったマーケティング施策の展開が必要です。
顧客データに基づき、LTVの最大化を目的としたアプローチは、企業にとって持続可能かつ効果的なビジネスモデルを構築する上で欠かせないプランといえます。
効果4:顧客体験の質向上
顧客データの活用によって得られる4つ目の効果は、顧客体験の質の向上です。
蓄積された顧客データから需要やニーズを理解してマーケティング施策に反映させることで、顧客に良質な購買体験を提供できます。顧客体験の質を上げると顧客との信頼関係も深まり、ビジネスの成長につながるでしょう。
顧客体験の質を高めるには、リアルタイムなデータ分析を通じて顧客の反応を確認し、商品・サービスの改善を進めることが欠かせません。顧客体験の質向上は、顧客データの効果的な活用によって実現され、自社にとって持続的な競争優位性をもたらす効果が期待できます。
顧客データをマーケティングに生かす4つの分析手法
顧客データをマーケティングに生かすには、正しい方法でデータを分析して使える形に加工する必要があります。なお、顧客管理システムに蓄積された顧客データを分析し、顧客との関係を管理することは「CRM分析(Customer Relationship Management:顧客管理関係)」とも呼ばれます。
以下の4つは顧客データ分析の代表的な手法です。
- バスケット分析
- セグメンテーション分析
- RFM分析
- デシル分析
分析手法を確認し、顧客データをマーケティングに活用しましょう。
上記の分析手法に加え、顧客の購買データを活用するメリットやデータの取得方法について知りたい方は、こちらの記事もご覧ください。
顧客データの分析手法その1:バスケット分析
「バスケット分析」とは、顧客の買い物かごの中を分析する手法です。
POSデータやECサイトの購入履歴から、ある商品とセットで購入された商品の組み合わせを発見し、マーケティング戦略を最適化します。
バスケット分析ではクロスセルによる顧客単価の向上が見込まれますが、購入数があまりにも多い、または低い商品は併売の効果が薄れる可能性があるため、注意が必要です。
顧客データの分析手法その2:セグメンテーション分析
「セグメンテーション分析」とは、主に4種類の変数を使い、顧客を分類する分析手法です。
- 地理的変数:国・地域・都市・人口密度・気候・宗教など
- 人口動態変数:性別・年齢・職業・所得・家族構成など
- 心理的変数:ライフスタイル・価値観など
- 行動変数:時間・曜日・頻度・経路など
年齢・性別・ライフスタイルなどで顧客をグルーピングすることで、セグメントごとに適切なマーケティング施策を実行できます。分析の際は、日々変化する市場や顧客ニーズをしっかりと捉え、客観的な視点でおこなうことがポイントです。
顧客データの分析手法その3:RFM分析
「RFM分析」とは、以下3つの指標で顧客を分類する分析手法です。
- Recency (最終購入日)
- Frequency(購入回数)
- Monetary (購入金額)
分類したグループは、優良顧客・安定顧客・休眠顧客・新規顧客・離反顧客などと定義し、各グループに合った施策を実行します。
さらに、分類したグループ内でバスケット分析をおこなうと、特定の顧客層における「同時購入されやすい組み合わせ」「購入されやすい陳列場所と商品の組み合わせ」などを把握でき、顧客単価を向上させるための効果的な戦略策定にもつなげられるでしょう。
顧客データの分析手法その4:デシル分析
「デシル分析」とは、顧客の購買データを金額の高い順に10等分し、各グループの売上構成比率を調べる分析手法です。
等分したグループの売上構成比率を把握することで、売上貢献度の高いグループを容易に抽出し、集中的なマーケティング施策の実行が可能となります。
ただし、デシル分析は顧客データの購入金額のみを対象としたシンプルな分析手法であり、RFM分析で用いられる最終購入日や購入回数などの要素は含みません。詳細な顧客データの分析を実現するには、期間を区切っておこなう、他の分析手法と併用する、などの工夫が求められます。
まとめ:顧客データをマーケティングに活用して自社の成長につなげよう
- 顧客データの適切な活用は、マーケティングの成功に欠かせない
- 顧客データを活用するには、正しい方法でデータを分析する必要がある
- 効果的な顧客データ分析をおこなうには、手法の併用など工夫が求められる
顧客データの正しい活用は、企業の革新的なマーケティング戦略を立案・実行し、顧客の自己実現を達成することにつながります。
顧客データをマーケティングに生かすには、正しい方法でのデータ分析に加え、1つの分析手法では把握しきれない要素について、複数の手法を用いて細かく分析することが大切です。
顧客データを上手に活用し、自社の成長につながる効果的なマーケティング戦略を立てましょう。