会員データ活用のカギは適切な収集・管理・分析にある!具体例も解説します
会員データとは単なる顧客情報ではなく、顧客ニーズの把握や購買行動の予測などに役立つデータです。しかし、どのようなデータを収集して、どのように分析すればよいのか悩む方も多いのではないのでしょうか。
今回は顧客に対する理解を深めるために必要な会員データの種類、データの収集方法や管理・分析の流れなどを解説します。
会員データを活用して、自店舗に合ったマーケティングを展開しましょう。
目次
会員データの活用は効果的なマーケティングの実現に欠かせない
「会員データ」とは、顧客が企業に提供する個人情報です。
会員データには主に次の項目が含まれます。
- 基本情報:氏名、性別、年齢、住所
- 店舗の利用・購入履歴
- 顧客の声:問い合わせ・クレーム内容など
これらの会員データは、顧客にポイントカードや会員カードを作成してもらうほか、ECサイト・カタログでの通信販売で商品を購入してもらうことで収集可能です。
会員データから顧客を理解し、集客力を向上させる
会員データを活用すると、自店舗を利用している顧客の特徴を把握できます。自店舗の製品やサービスがどのようなターゲットに好まれているかが明確になるため、効率的な集客が可能です。
例えば美容室であれば、会員データから予約内容やリピート率を分析できるため、利用頻度の高い美容メニューなどがわかるでしょう。
さらに、会員データを年齢や性別といった属性、購入履歴や購入頻度などのデータ別にセグメントに分けることで、それぞれのセグメントに対し適切な販促施策を立てやすくなります。
会員データを活用する上で押さえておきたい2種類のデータ
会員データを活用するには、
- 顧客が何を求めているのか
- 顧客ニーズを知るにはどういうデータが必要なのか
この2つを明確にする必要があります。
会員データには数値化できる“定量データ”と数値化の難しい“定性データ”があります。この2種類のデータは収集できる情報が異なるため、よく理解して目的に合わせて使い分けましょう。
データの種類その1:定量データ
「定量データ」とは、明確な数値で表せるデータのことを指します。商品ごとの販売数や客単価、ECサイトの閲覧数といった数値のほか、顧客の年齢、住所、家族構成なども含みます。
定量データを収集・分析することで、売れ筋商品やメインターゲットとなる顧客の年齢層といった情報を取得できます。
注意点として、サンプルデータが多いほど信頼性の高い結果を得られる反面、データの単純性から顧客個人を深く分析するには適していません。
データの種類その2:定性データ
「定性データ」とは、数値化や類型化が困難な、言葉で表現されたデータです。
【定性データの例】
- 自由記述形式のアンケート
- インタビュー
- 商品やサービスについての問い合わせ(質問・クレーム・要望)
- 商談内容 など
定性データは個人の主観や感性に委ねられることが多く、そのまま分析・比較するのは難しいデータです。
経営の重要な意思決定に直接用いるには不向きですが、顧客のクレームや問い合わせなどによる具体的な意見が多いほど、サービスや商品の改善ポイントを多く洗い出せます。
会員データを分析し活用するための3ステップ
会員データを活用するには、データの収集・管理・分析を適切におこなうことが重要です。会社全体の業績アップにつながる会員データ活用をおこなうために、まずはデータの活用に必要な3つのステップを押さえましょう。
ステップ1:会員データを収集する
会員データを収集する際は、最初に目的を明確にしましょう。目的が明確でなければ収集したデータを正しく分析できず、経営に適切な判断や施策の立案が難しくなります。
「客単価の高い客層を知りたい」「会員に人気のある商品を知りたい」などの目的を決めることで、対象を絞って効率よくデータを集められるでしょう。
それでは、実際にどのように会員データを収集するのか、具体的な方法を4つ紹介します。
会員データの収集方法1:Webフォームの設置
ECサイトや公式サイトにWebフォームを設置することで、会員データの収集をスムーズにおこなえます。情報の収集と同時に会員データの項目やスタイルを統一できるため、管理コストを抑えられます。
会員データの収集方法2:購買履歴
ECサイトであれば顧客管理システム、実店舗の場合はPOSレジを導入することで、顧客が「何を・いつ・どれだけ購入したのか」をデータとして収集できます。
商品の在庫管理や複数店舗とデータを共有できるなどのメリットがある一方、システムの運用にはそれなりのコストがかかるため、導入前に検討する必要があります。
会員データの収集方法3:Webサイトの閲覧履歴
自社の公式サイトやECサイトの閲覧履歴も、会員データでに含まれます。閲覧数の多い商品ページやアクセスした場所などを知ることで、購買行動の予測に役立つでしょう。
会員データの収集方法4:問い合わせ履歴
アンケート・コールセンター・Webフォーム・SNSの問い合わせ履歴から、会員データを収集できます。定性データを収集・分類することで新商品の開発、業務改善、トレンド予測などに活用できます。
ステップ2:会員データを適切に管理する
取得した会員データは、業績向上に貢献する経営資産として重要な役割をもちますが、顧客の個人情報を多く含むため適切な形で管理して保存することが必要です。
会員データを管理・保存する際には、CRM・SFA・MAなどのツールが役立ちます。それぞれの特徴を簡単に解説するので、適したツールを利用してください。
CRM(Customer Relationship Management)
CRMは、既存顧客となった会員のデータ管理と分析が可能なシステムです。
顧客の氏名や住所といった基礎情報のほか、購買履歴・頻度やニーズなどを分類し、可視化できます。CRMを活用することで顧客の満足度向上にもつながり、客単価の増加やリピート率の向上が期待できるでしょう。
SFA(Sales Force Automation)
SFAは営業活動の進捗状況を可視化できるツールで「営業支援システム」とも呼ばれます。会員データ・担当者・企業情報・案件・アプローチの方法などをSFAに反映させることで、営業の進捗状況や有効なセールス方法を共有できます。
MA(Marketing Automation)
MAは、マーケティング業務を自動化するためのツールです。Webサイトへのアクセス頻度や閲覧ページの情報から見込み顧客の購買行動を分析し、有意義なアプローチが可能となります。
Excel
Excelは、広く普及している表計算ソフトです。
導入の手間が不要で汎用性に長けています。しかし顧客管理システムではないため、データ同士を紐づけることが難しく、会員データの一元管理には不向きです。簡単に複製できてしまうことから、情報流失のリスクもあります。
会員データの取り扱いは要注意
会員データは個人情報であるため、取り扱いには気をつけなければなりません。
顧客情報を紛失・漏洩すると、会社全体の管理能力を問われて信用を失うばかりか、損害賠償や慰謝料を請求される可能性もあります。
データの管理者を含めた社員全体に対する注意喚起やセキュリティ教育、クロスチェックなどの内部対策を徹底しましょう。日々蓄積される会員データの入力作業をおこなう際には、フォーマットを整備しておくことで誤登録などを防げるでしょう。
以下のページでは、郵便番号別の会員データを使った顧客分析に活用できる、郵便番号エリアデータの特徴や活用事例をまとめています。
ステップ3:会員データを分析する
会員データを分析する目的は「顧客視点でのマーケティング」をおこなうことです。会員データを分析して満足するのではなく、目的に合わせて活用することが重要だと考えましょう。
氏名・住所・年齢といった基礎情報や行動データ・購買履歴を分析することで顧客ニーズの理解を深め、マーケティング施策の見直し、顧客対応の最適化にもつなげられます。
会員データ分析によく使われる分析方法は、次の3つです。
- セグメンテーション分析
- RFM分析
- デシル分析
3つの分析方法は、以下の記事で詳しく解説しているので参考にしてください。
会員データの具体的な活用例3選
この章では、収集・分析した会員データの具体的な活用例を3つ紹介します。
活用例1:顧客のニーズに合わせた商品・サービスの提供
会員データを正しく分析することで顧客ニーズや商品・サービスの消費傾向を把握できます。ニーズや消費傾向がわかると、顧客目線によるマーケティングをおこなえるようになり、リピート率の増加も見込めるでしょう。
さまざまな店舗が発行している会員カードやポイントカードのデータを分析すると、購買履歴、頻繁に利用されている店舗、来店時間帯といった顧客の購買行動がつかめます。それによって在庫管理の最適化や商品の適切な陳列が可能となり、売上アップにつながります。
活用例2:顧客の趣味嗜好に合わせた定期的な情報提供
分析した会員データによって顧客の趣味嗜好や興味関心・流行などを把握することで、顧客の好みに応じた情報を発信できます。
大手通販サイトの場合、購買履歴や閲覧履歴のデータを分析することで、顧客がどのような商品に興味を持っているのか、好みのメーカーやデザインなどを把握できます。顧客の好みに合わせた限定情報やクーポンを定期的に配布することは、休眠顧客の再購入、商品に興味を持つ見込み顧客の獲得にもつながるでしょう。
活用例3:オムニチャネル化の実現
「オムニチャネル」とは、アパレルなどの小売業を中心に広まっている販売戦略の一つです。実店舗に限らずアプリ・カタログ・SNS・ECサイトなどで顧客との接点(チャネル)を作り、最適な購買体験を提供して売上アップを目指す手法です。
例えば20代・30代向けのアパレルブランドには、顧客がアプリ上で購入決済した商品を実店舗で入手できるサービスがあります。スマホやパソコンで商品を購入し外出時に実店舗で受け取れるため、顧客側も在庫切れやサイズが合わないなどのストレスを感じることなく商品を手にできるのがメリットです。
実店舗とECサイトの会員データを統合することで、自社の商品やサービスを購入する顧客の行動データをオフライン・オンラインの両面から分析できます。
顧客の行動に合わせた施策で売上アップが可能
複数のチャネルにおける会員データの統合により「実店舗を利用したことはないが、ECサイトを利用したことはある」「ECサイトは利用するが、実店舗には行ったことがない」という顧客に対し、それぞれの行動に合わせたクーポンの発行や限定情報の配布など、具体的な施策の実行が可能です。
顧客に適した施策をおこなうことで、LTV(顧客生涯価値)の向上が期待できます。
ただし、ECサイトと実店舗の会員データを統合する以外にも、別のチャネルによるオムニチャネル化の手法は存在します。
まとめ:適切な収集・管理・分析で会員データをマーケティングに生かそう
- 会員データで顧客の特徴をつかみ、行動や興味関心を押さえられる
- サンプルデータから顧客の行動を予想し、商品やサービスの改善点を洗い出せる
- 会員データをマーケティングに生かすには収集・管理・分析が欠かせない
会員データを闇雲に集めても業績や売上の向上につなげることは困難です。正しく収集・管理・分析をおこない、顧客への理解を深めましょう。会員データは顧客の個人情報であるため、管理の際は注意が必要です。
定量データと定性データを合わせて収集・分析することで、顧客の行動予測や自社商品の改善などに役立てられます。
それぞれの顧客に合った商品・サービスの提供や、オムニチャネル化で顧客層を拡大するなど、会員データの活用方法はさまざまです。ぜひ、会員データをマーケティングに生かしてみましょう。