飲食店のターゲット選定を成功させるには?有効な分析手法も解説
飲食店の集客について、
「集客効果を高めたいけど、現在のターゲット設定が曖昧で、どんな施策が効果的なのかわからない」
「売上が思うように伸びないが、具体的にどのような分析をすべきかわからない」
と悩む方もいるでしょう。
飲食店のターゲット選定は、顧客ニーズに合ったサービスの提供や顧客満足度の向上と深く関係しており、売上アップに欠かせないポイントの一つです。
今回は、飲食店のターゲット選定が重要な理由や成功させるためのポイント、有効な分析手法について解説します。
「店舗ごとのサービスやコンセプトに適したターゲットを明確にしたい」「ターゲット選定に役立つ具体的な分析方法やフレームワークを知りたい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
飲食店のターゲット選定では市場動向や顧客ニーズの把握が重要
飲食店のターゲット選定は、経営戦略の成功を左右することです。
ターゲットが不明確だとコンセプトやマーケティング戦略が曖昧になり、顧客のニーズに合わないサービスを提供し続けることになります。ターゲット選定を誤った状態で経営を続けていると、集客力が低下するだけでなく、マーケティングコストが無駄になる可能性もあります。
自店舗に合ったターゲットを選定するには、飲食市場の動向や顧客ニーズを正確に知ることが重要です。市場動向や顧客ニーズを把握すると、
- 市場や顧客から求められているサービスを把握できる
- 商圏における競合店と自店舗の立ち位置を理解できる
- 競合店と比較した自店舗の強みや弱みがわかる
- 競合との差別化ポイントが明確化できる など
このように数々のメリットがあるうえ、狙うべきターゲット層を的確に特定でき、飲食市場と顧客ニーズに合う、自店舗の強みを最大限に生かした集客戦略を展開しやすくなります。
飲食店のターゲット選定を成功させるためのポイント2つ
飲食店のターゲット選定を成功させるポイントは2つあります。
- 立地周辺の客層を調べる
- ペルソナ設定をおこなう
ターゲット選定の精度を高めるためにも、それぞれのポイントが成功につながる理由を理解して、実践してみましょう。
飲食店のターゲット選定を成功させるポイント1:立地周辺の客層を調べる
飲食店のターゲット選定では、まず立地周辺の客層を調べることが重要です。
どのような客層が多く存在するのか、その地域で生活する人々の特徴を理解することで、主要となる顧客層が見えてくるからです。また、特定の時間帯ごとに、住民がどのように行動しているかを把握しておくと、営業時間やメニューを最適化できます。
例えば立地周辺において、
- 昼間:オフィスワーカー
- 夜間:地域住民
が多く存在する場合は、以下のような戦略が考えられます。
昼間 | オフィスワーカーは時間に制約があるため、ランチタイムに特化した時短メニューを提供 |
夜間 | 仕事終わりでリラックスしたい地域住民に向け、友人や家族とディナーを楽しめる少し豪華なメニューを提供 |
飲食店のターゲット選定を成功させるポイント2:ペルソナ設定をおこなう
「ペルソナ」とは、「ターゲット顧客の具体的な人物像」を意味するマーケティング用語です。年齢や性別、職業、ライフスタイルなどを詳細に洗い出すことで、ターゲットとする顧客像を明確にします。
飲食店のターゲット選定において、ペルソナ設定は欠かせません。理由は以下のとおりです。
- マーケティング関係者全員でターゲット像を共有しやすく、ブレのない施策を実行できるため
- 具体的な人物像が決まっていることで商品開発や販促活動の精度が高まり、顧客ニーズに応じたサービスを提供できるため
ペルソナを設定する際は、顧客データを元に現実的な顧客属性を選ぶほか、各属性を明確に洗い出すことがポイントです。ペルソナ設定の項目については、下表を参考にしてください。
《ヘルシーメニューを売りとしたカフェのペルソナ設定例》
項目 | 内容例 |
性別 | 女性 |
年齢 | 32歳 |
職業 | 外資系の広報担当 |
家族構成 | 一人暮らし |
居住地 | 東京都品川区のマンション |
趣味 | ヨガ・週末のカフェ巡り |
ライフスタイル |
|
顧客ニーズ |
|
想定される店舗の利用シーン | 休日にランチを取りながらリフレッシュし、SNSにアップする写真を撮るために訪れる |
このように、ペルソナ設定ではサービスを提供する具体的な人物像を決めます。
飲食店のターゲット選定で有効な分析手法5選
飲食店のターゲット選定時に有効な分析手法には、次の5種類があります。
- 属性分析
- デシル分析
- RFM分析
- トライアル・リピート分析
- 商圏分析
分析手法の概要と活用例を、それぞれ簡単に解説します。
飲食店のターゲット選定で有効な分析手法1:属性分析
「属性分析」とは、年齢・性別・職業などの顧客特性をデータとして収集し、分析する手法です。属性分析に用いられるセグメントはさまざまですが、主に以下4種類に分類されます。
地理学的属性 (ジオグラフィック) |
地域特有の気候・文化、経済的登頂、人口密度 など |
人口統計学的属性 (デモグラフィック) |
顧客の性別、年齢、職業 など |
心理学的属性 (サイコグラフィック) |
顧客が興味を持つもの、価値観、性格 など |
行動学的属性 (ベヘイビオラル) |
利用頻度、購入商品、購入金額 など |
飲食店では、既存顧客データをもとに、どのような属性の人々が多く訪れているかを把握することで、狙うべきターゲットを絞りやすくなります。
どの程度の情報を集められるかは、収集手段によって異なります。細かな分析をおこなうためには、アンケートやポイントカードや店舗アプリ、アンケートなどで顧客の情報を収集する必要があります。
属性分析の活用例
例えば、ビジネス街のある飲食店が、店舗アプリの情報をもとに属性分析をおこなった結果、以下のような結果が読み取れたとします。
- 20~30代の男性が来店客の半数以上を占める
- 周辺オフィスに勤務するビジネスマンの比率が高い
- 平日ランチタイムに来店する層が多い
これらの分析結果もとにすると、この店の既存顧客は「20~30代の男性、平日勤務のオフィスワーカー」が多いと仮定できます。この結果をもとにペルソナを設定すれば、ニーズに合致したターゲットを絞り込めて、メニューの開発や改良、販促施策の立案などさまざまな戦略に生かせるでしょう。
飲食店のターゲット選定で有効な分析手法2:デシル分析
「デシル分析」とは、売上データをもとに、顧客を購入金額の高い順から10のグループ(デシル)に等分し、それぞれの貢献度を分析する手法です。デシル分析により、店舗の売上に大きく寄与している上位顧客層と、貢献度の低い顧客層を明確に区別できます。
デシル分析の活用例
例えば、あるカフェでデシル分析をおこなったところ、上位2グループの顧客が店舗の全体売上の50%を占めていたことが分かりました。そこで、上位2グループの顧客に対して、POSデータをもとに「どのような客層が多いのか」を整理した結果、以下のような結果がわかりました。
- 平日来店する女性客が上位2グループの約80%を占める
- 上位2グループの顧客は約〇%が2人以上のグループで来店している
- 上位2グループの顧客が注文する商品は軽食やケーキのセットがほとんど
この結果をもとにすると、カフェが「店舗に利益をもたらす顧客」としてターゲットにすべき層は「主婦、かつ団体利用が多いママ友グループ」であることが分かります。さらに、好まれているメニューも把握できたことから、ターゲット層に合わせたキャンペーンやお得なセットの提供もしやすくなるでしょう。
飲食店のターゲット選定で有効な分析手法3:RFM分析
「RFM分析」は、顧客を「Recency(最終利用日)」「Frequency(利用回数)」「Monetary(累計購入金額)」の3つの指標で評価し、優良顧客や潜在的なターゲット層を特定する分析手法です。
RFM分析によって、顧客の購買状況を可視化することで、
- 貢献度が長期的に高いグループ
- 今後の利用が期待できるグループ
- 顧客離れが起きているグループ
などのグループ分けがおこなえ、どのグループが今後の売上に貢献するかを判断できます。この結果を用いることで、利益につながるターゲット層を設定しやすくなるでしょう。
RFM分析の活用例
例えば、ある飲食店が顧客の利用履歴を分析したところ、全てのスコアが高い「優良顧客」には以下のような特徴があったとします。
- 1回あたりの平均支払額が3,000~4,000円程度
- 来店時間は週末の夜が多く、週1、2回の頻度で利用している
さらに、RFM分析で「優良顧客」のグループになった顧客のID-POSデータを照らし合わせると30代~40代の男性利用者が多いことも判明しました。このことから、この飲食店では「週末に、晩酌と夕飯を兼ねて利用する30~40代の男性利用者」がターゲットに適していると仮定できます。
RFM分析だけでは、顧客の属性までは分析しきれませんが、このようにID-POSデータなどの属性を紐づけられるデータを用いればより詳細な分析がおこなえます。
飲食店のターゲット選定で有効な分析手法4:商圏分析
「商圏分析」とは、店舗周辺の地域における人口割合や人口属性、地域特性、競合店などを分析する手法です。
具体的には、自店舗を中心とした一定の範囲で
- どのような人々が住んでいるのか
- どのような属性を持つ人々が集まるのか
- 居住・生活する人々のニーズは何か
- どのような競合店が存在するのか
- 競合店が自店舗に与える影響は何か
といった情報を調査します。
商圏分析の活用例
例えば、住宅地が多い駅周辺にあるカフェが徒歩5分~10分圏内を商圏とし、エリアマーケティングツールを用いた分析をおこなったとします。その結果、以下のような商圏の特徴が分かりました。
- 商圏内の総人口に対する男女の割合は3:7
- 徒歩5分圏内には30~40代の女性が多い
- 夜間人口よりも昼間人口の方が割合が高い
このことから、カフェのターゲット層は「30~40代の女性」と仮定でき、さらに昼間人口が多いことから職業を主婦やパートタイマーなどにしたペルソナを設定できます。
データ分析を活用した、飲食店のターゲット選定の例
ここでは、データ分析を活用した飲食店のターゲット選定の例として、以下の2パターンを挙げます。
- 新規出店に向けたターゲットの明確化
- 既存店におけるターゲットの再選定
売上アップにつながるターゲット選定では、実際のデータをもとにした分析が欠かせません。それぞれの例を見ていきましょう。
なお、ここで例示するのは解説用に作成したデータであるため、分析や施策実行までの流れをつかむ際の参考としてご活用ください。
データ分析を活用した飲食店のターゲット選定の例1:新規出店に向けたターゲットの明確化
1つ目の例として、地域密着型レストランの新規出店にともなうターゲット選定にデータ分析を活用することで、どのような施策が生まれるのかを解説します。
まず、この店舗では店舗周辺1km~3kmの人口統計データをもとに商圏分析をおこないました。その結果、顧客の40%場が「30~40代の両親とその子供で構成されたファミリー層」であると推測します。
次に、競合分析を実施し、周辺には「学生向けのカフェ」や「高価格帯のレストラン」が多く、ファミリー層向けの飲食店は少ないことが分かりました。
この分析結果をもとに、この店舗は「30~40代のファミリー層」をターゲットにして、以下の施策を打ち出すことにしました。
- キッズメニューを展開する
- 遊具付きのエリアを設置する
- SNS広告で子連れ世帯にターゲットを絞り、レストランの訴求をする
- 地元の学校と連携し、親も参加できる子ども向けイベントを定期的に開催する など
これらの施策をおこなって競合店との区別化を図ることで、ファミリー層の来店率向上、リピーターの増加、さらには地域住民の口コミやSNSへの投稿による話題性から、新規顧客の獲得も期待できるでしょう。
データ分析を活用した飲食店のターゲット選定の例2:既存店におけるターゲットの再選定
2つ目の例として、都市部のオフィス街に立地する小規模のカフェが、ターゲットを再選定するときにデータ分析を活用し、集客施策を実行するまでの流れを解説します。
このカフェでは、これまでの注文内容や時間帯別売上、客単価を集計したPOSデータから時間帯別の売上分析をおこない、モーニングタイムの利用は少なく、売上が全体の15%にとどまっていることが判明しました。
また、顧客アンケートの結果により、来店客の半数以上が30〜50代のビジネスパーソンであるとわかりました。
分析結果をもとに「平日のモーニングタイムに利用可能なビジネスパーソン」をターゲット層として再選定し、立案した施策が次の2つです。
- モーニング限定で、健康志向のサラダボウルやプロテインドリンクを提供
- 無料Wi-Fiや電源席を充実させ、リモートワークしやすい環境を提供
ターゲットをビジネスパーソンに選定し直して、新たな客層に合わせた施策を実行することで、モーニングタイムの売上増加やリピート率の向上が期待できます。
このように、データ分析をターゲット選定に活用することで、売上の低かった時間帯の来店率と、新たなターゲット層の売上貢献度を高められるでしょう。
まとめ:飲食店のターゲット選定は店舗の現状を知ることから始めよう
- 飲食店のターゲット選定には、市場動向と顧客ニーズの把握が欠かせない
- ターゲット選定を成功させるポイントは大きく分けて2つ
- ターゲット選定は実際のデータを用いて分析手法を活用するのが効果的
飲食店におけるターゲット選定の際に市場動向や顧客ニーズを把握することで、店舗に求められているサービスや、商圏での競合店と自店舗の立ち位置、競合店の強み・弱みなどを理解できます。
ターゲット選定の成功に欠かせないポイントは、立地周辺の客層を調べること、ペルソナ設定をおこなうことの2つです。ターゲットを決める際は、収集したデータを分析した上で選択するのをおすすめします。今回解説した5つの分析手法を、目的に応じて使い分けましょう。
飲食店のターゲット選定に取り組む際は、まず担当店舗のデータを使って客層の現状を分析し、狙っていくべきターゲットの仮説を立てることから始めてみてはいかがでしょうか。