商圏分析に使える「ハフモデル」とは?精密なデータを集める方法も紹介

エリアマーケティング , 分析手法・フレームワーク
このエントリーをはてなブックマークに追加

商圏分析をするうえで「ハフモデル」は欠かせない要素の一つです。とはいえ、ハフモデルという言葉は聞いたことがあっても、実際の内容や効果などについて詳しく知らない方も多いのではないでしょうか。

今回の記事では、ハフモデルの概要・計算式・種類や、ハフモデル分析をおこなうときの注意点について解説します。ハフモデルの考え方について詳しく知りたい方はぜひご覧ください。

距離と魅力度で集客度を測る「ハフモデル」

ハフモデルとは、顧客の居住地から競合店や自店舗の距離を測り、店舗の規模を掛け合わせて集客率(吸引率)を予測する商圏分析の方法です。1960年代にアメリカの経済学者デイヴィッド・ハフが考案しました。

ハフモデルは「居住地から距離が近く、規模の大きい店舗のほうが顧客の来店確率は高くなる」という考え方に基づく商圏分析で、出店地を決める際や店舗のある都市に競合が進出してきた場合などに有効です。

ハフモデルを用いた分析は、エリアマーケティングを成功させる上で欠かせない考え方です。ハフモデルを理解するための前提知識となる、エリアマーケティングの目的については以下をご覧ください。

ハフモデルの計算方式とは?

では、実際にハフモデルの計算式を使ってみましょう。
ハフモデルを用いた吸引率の計算式について、以下の店舗規模と距離を例に解説します。

  • 店舗A:面積1,000㎡・居住地からの距離100m
  • 店舗B:面積1,500㎡・居住地からの距離500m

ハフモデルによる吸引率の計算式はこちらです。

吸引率=魅力度/距離α÷Σ(魅力度/距離α)

今回のケースでは、式の「魅力度」には店舗面積、αに距離抵抗係数、Σには100を入れて計算します。
なお、距離抵抗係数は1、端数は四捨五入としています。
ひとつずつ当てはめると次のとおりです。

【店舗Aの吸引率】
吸引率 = (店舗A面積/店舗A距離)÷[(店舗A面積/店舗A距離)+(店舗B面積/店舗B距離)]
77% =(1000/100)÷[(1000/100)+(1500/500)]
【店舗Bの吸引率】
吸引率 = (店舗B面積/店舗B距離)÷[(店舗A面積/店舗A距離)+(店舗B面積/店舗B距離)]
23% =(1500/500)÷[(1000/100)+(1500/500)]

計算の結果、面積の規模が小さくても(魅力度が少なくとも)顧客の居住地に近い店舗Aの方が吸引率は高いとわかりました。

エリアマーケティングGISのTerraMapシリーズでは、ハフモデル分析シートを使った集客率の計算や売上予測がおこなえます。詳しくは、製品ページをご覧ください。

「距離抵抗係数」について

吸引率を求める式で使用するα「距離抵抗係数」とは、「遠くの店舗まで買い物に行くことが面倒だと感じる指数」です。

距離抵抗係数は商品によって異なり、日用品・消耗品のように近場で購入したい商品と、家電や貴金属など、希望の商品があれば遠くの店舗であっても出向いて購入する場合とでは係数が変わります。

距離抵抗係数は一般的に、食料品や消耗品といった最寄品が高く、家電・家具などの買回品は低くなる傾向にあります。

商圏分析で取り入れられているハフモデルの種類

ハフモデルは基本的に直線距離と面積で計算できます。しかし、これより詳細な分析をおこなうための方法も開発されています。ここでは、商圏分析で取り入れられている「修正ハフモデル」と「アドバンスハフモデル」の2種類を紹介します。

修正ハフモデル

「修正ハフモデル」は、ハフモデルのように居住地からの距離だけで測ると正当性が低くなるとして、1980年代に通産省(2022年現在の経産省)が取り入れた手法です。修正ハフモデルの距離抵抗係数は2.0に設定されているため、この数値を使って吸引率を算出していきましょう。

従来型のハフモデルで用いた店舗面積と居住地からの距離に加え、営業時間やブランド力などの要素を加味して計算できることから、修正ハフモデルは多角的な視点で吸引率を割り出せる方法として多く活用されています。

アドバンスハフモデル

「アドバンスハフモデル」とは、店舗の吸引率を求める際に複数の項目で魅力度を設定し計算する方法です。例えば、売場面積と駐車場台数 などを使います。

アドバンスハフモデルを用いた計算によって、ハフモデルよりもリアルに近い計算ができるため、商圏分析の精度が高まり、新規出店や競合進出の把握などに役立てられるでしょう。

ハフモデル分析をおこなうときの注意点

この章では、商圏分析でハフモデルを活用するときの注意点を説明します。より高精度な商圏分析をおこなうために、次に挙げる3つのポイントを押さえておきましょう。

注意点1:距離抵抗係数の設定を精査する

大切なのは、ハフモデル分析における距離抵抗係数の精査です。修正ハフモデルでは距離抵抗係数は2.0と設定されていますが、商圏分析では、自社の商品がどのような立ち位置にあるのかを把握し、距離抵抗係数を柔軟に変更することが欠かせません。

店舗の距離が居住地から近いとしても、顧客が購入する商品によって距離抵抗係数は異なります。シーズンやニーズ、目的などに合わせて距離抵抗係数を見直すことで、精密な分析結果を導き出せるでしょう。

注意点2:スモールスタートを意識する

続いて、スモールスタートを意識することが、ハフモデル分析の重要な要素となります。ハフモデルは計算式に当てはめれば簡単に分析できる手法ですが、突然大規模な分析をしても精度は安定しません。一気に大きな商圏分析をするのではなく、複数の型を試しながら分析していくことが必要です。

手始めに既存店舗の競合分析など、小規模な分析・検証をおこなってノウハウを蓄積し、徐々に分析規模を広げていくべきでしょう。

注意点3:魅力度の数値設定には主観をいれない

最後に挙げるハフモデル分析のポイントは、魅力度の数値設定には主観を入れないことです。

売場面積が大きければ魅力度が高いと捉えがちですが、駐車場台数、稼働率、併設店舗の魅力度も考慮するなど、さまざまな視点で魅力度の数値設定をおこないましょう。

競合他社と比較する場合においては、主観を入れず正確なデータに基づいた数値を設定しなければ、分析結果の正当性が損なわれます。ハフモデル分析をおこなう際には、定量的なデータを用いた多角的・客観的な分析を心がけるようにしてください。

まとめ:ハフモデルの考え方で高精度な商圏分析を成功させよう

  • ハフモデルは、距離と魅力度で集客度を測る商圏分析の手法
  • ハフモデルの吸引率は【=魅力度/距離α÷Σ(魅力度/距離α)】で求められる
  • ハフモデルを発展させ、より詳細な分析を行うための分析方法も開発されている

ハフモデル分析の計算式では、店舗の集客数(吸引率)を求められます。
昨今ではハフモデルを発展させた分析方法として、修正ハフモデルやアドバンスハフモデルなども存在します。

ハフモデル分析を行う際には「距離抵抗係数の設定」「スモールスタート」「魅力度の多角的・客観的な数値設定」の3点に注意しましょう。

商圏分析で市場を把握。新規出店の調査がスムーズに。

タグ : ハフモデル分析 分析手法 売上予測
このエントリーをはてなブックマークに追加