ポートフォリオ分析をマーケティングに生かすには?基本項目や活用例を解説
事業を長く続けるには、顧客が商品やサービスに満足できているかを意識し、顧客満足度の最大化につながる施策を実行することが欠かせません。顧客満足度には複数の要素が関係しているため、まずは顧客満足度の現状を知ることが大切です。
今回は、顧客満足度を調査するためのフレームワーク「ポートフォリオ分析」の概要や、マーケティングへの活用方法を解説します。
ポートフォリオ分析を活用し、顧客満足度の向上につなげたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ポートフォリオ分析はマーケティングリサーチの一つ
ポートフォリオは、業界によって異なる意味を持ちます。
投資や金融業界では、株式や債券などの資産を投資家がリスクヘッジするための組み合わせを、
教育業界では、生徒の評価ツールとして学習の成果を示すものを指します。
マーケティングにおけるポートフォリオ分析とは、自社の商品やサービス、価格、接客の質などに関する満足度を調査する手法です。分析結果をもとに、改善すべき項目の洗い出しや優先順位付けをおこない、マーケティング戦略を最適化します。
ポートフォリオ分析で扱う項目は4つ
ポートフォリオ分析では顧客への質問項目を設定し、縦軸を満足度、横軸を重要度として中央に十字を配置した4エリアにアンケートの回答結果をプロットします。
各エリアの項目は、以下の特徴を持ちます。
象限 | 概要と特徴 |
---|---|
第1象限:花形 |
|
第2象限:問題児 |
|
第3象限:負け犬 |
|
第4象限:金のなる木 |
|
次に、それぞれの象限の定義や取るべき戦略を解説します。
第1象限:花形
「花形」は満足度・市場成長率と重要度・市場占有率がともに高く最も重要な項目が属するエリアです。ここにある項目は自社の強みとなり、競合との差別化を図りやすいことが特徴です。
顧客満足度を維持するためにも、継続的に投資するなど積極的なアプローチが欠かせません。
今後取るべき戦略や対策は、定期的な顧客調査やフィードバックの収集を強化し、顧客の期待と満足度の変化に敏感に対応することです。競合分析を通じて市場の動向を把握し、他社にない付加価値を提供することで、花形項目のさらなる強化が期待できます。
第2象限:問題児
「問題児」は、満足度・市場成長率は高いものの、重要度・市場占有率が低い項目を指し、現状維持が求められるエリアです。
問題児にあたる項目については、現状維持した上で全体の顧客満足度に与える影響を高めることが求められます。項目に対する継続的なモニタリングをおこない、顧客の期待に変化がないかを把握することが重要です。
顧客のフィードバックを積極的に収集し、改善点の発見に努めましょう。将来的に「花形」になり得る一方で「負け犬」に降格する可能性もあるため、満足度を維持しつつ、細かな改善を通じて総合的にサービスを向上させることが欠かせません。
第3象限:負け犬
「負け犬」は満足度・市場成長率と重要度・市場占有率がともに低いため、4象限の中では最も優先順位が低い項目です。
放置しておくと経営全体に悪影響を及ぼす可能性が高いため、負け犬項目に対して顧客が感じている不満や問題点を具体的に把握することが欠かせません。定期的な調査で改善の余地があるかを把握し、顧客満足度を向上させるための方策を見つけましょう。
ただし、総合満足度への直接的な影響が小さく優先順位も低いため、積極的に改善策を取る必要はありません。余力があれば、重点改善項目である「金のなる木」の次に改善対応をおこなうとよいでしょう。
負け犬エリアに属する項目については、総合満足度の向上に支障をきたさないうちに撤退することも、選択肢のひとつです。
第4象限:金のなる木
「金のなる木」は、満足度・市場成長率が低いにもかかわらず重要度・市場占有率重要度は高い、重要な項目です。商品開発の効率化などにつながるため、改善や強化を最優先におこなう必要があります。
今後さらに向上させていくための戦略として、まずは金のなる木の項目における課題や要因を明確に把握しましょう。定期的な調査で「何が顧客の不満や課題につながっているのか」を徹底的に分析し、適切な改善策を実施することで、総合的な満足度の向上が期待できます。
競合との比較や市場の最新動向も確認して改善項目を検討し、企業の競争力を強化することが欠かせません。
金のなる木だけに注目して施策を実行するのではなく、他のエリアについても総合満足度を落とさないための対策を講じ、維持や改善を怠らないようにしましょう。
ポートフォリオ分析のマーケティング活用例
ポートフォリオ分析のマーケティングへの活用例として、今回は次の3つをとりあげます。
- 在庫管理の最適化
- 顧客ニーズの理解と価格戦略の決定
- ブランド戦略と競合他社との差別化
そのほか、売上の最大化や競合分析、顧客動向の把握などもポートフォリオの活用例といえるでしょう。上に挙げたことはあくまで一部であるという前提で、それぞれの活用例を詳しく解説します。
例1:在庫管理の最適化
ポートフォリオ分析は、商品ラインナップの顧客満足度を把握する手段として、在庫管理の最適化に活用可能です。
ポートフォリオ分析によって、ある商品の満足度が高いとわかった場合、その商品の需要予測を立てて適切な在庫数を維持できます。一方、低い満足度を示す商品については過剰在庫を抑えつつ、需要の変動に対応する戦略を検討する必要があるでしょう。
このように、ポートフォリオ分析は企業の在庫管理プロセスを最適化し、社内リソースの有効活用を促進します。
例2:顧客ニーズの理解と価格戦略の決定
ポートフォリオ分析で顧客が求める商品やサービスを調査することは、顧客ニーズに基づいた価格設定をする際に有効です。
例えば、特定の商品カテゴリが高い満足度を示している場合、価格を高く設定することで企業のブランドイメージや品質を強調できる可能性があります。反対に、満足度の低い商品であれば、適正価格で販売する、バンドル販売によってお得感を訴求するといった価格戦略の見直しが可能です。
ポートフォリオ分析で顧客ニーズを正確に理解することは、戦略的な価格設定と市場でのシェア・競争力向上につながります。
例3:ブランド戦略と競合他社との差別化
ポートフォリオ分析は、ブランド戦略の調整や他社との差別化を図る戦略を策定する際にも活用されます。顧客の声によって、どの商品が自社ブランドの価値に影響を与えているかを把握できるためです。
例えば、特定の商品が顧客にとってブランドの象徴となっている場合、その商品にフォーカスしたブランドメッセージを強化し、独自性をアピールする戦略が有効です。反対に、競合と比較してブランド価値が低い商品は、改善やプロモーションを通じて価値を高め、市場での差別化を図る必要があるでしょう。
ポートフォリオ分析は企業のブランド戦略を立て、競合と差別化をおこなうする上でも役立ちます。
まとめ:ポートフォリオ分析を活用して自社のマーケティング力を高めよう
- ポートフォリオ分析は、顧客満足度を調査するマーケティングリサーチの一つ
- 顧客に対して項目別に質問をおこない、4エリアにそれぞれの結果をプロットする
- ポートフォリオ分析は、マーケティングのさまざまなシーンで活用可能
マーケティングにおいて、ポートフォリオ分析とは顧客満足度を調査するための手法を指します。分析結果を満足度と重要度で4分割したエリアにプロットすることで、優先して改善すべき項目や維持すべき項目を把握できます。
ポートフォリオ分析は、在庫管理の最適化や価格戦略の決定、ブランド戦略を立てる際にも活用可能です。
ポートフォリオ分析をマーケティングに活用し、高い顧客満足度を維持するための戦略を立てましょう。