顧客ポートフォリオ分析で改善項目の優先度を測ろう!分析のやり方を解説
事業を持続させるうえで、顧客満足度は重視すべき指標のひとつです。顧客満足度の向上を目指すには、調査と分析によって現状を把握し、状況に合った施策を考える必要があります。
今回は、顧客満足度の調査に役立つ「顧客ポートフォリオ分析」の概要やメリット、分析のやり方を解説します。
顧客満足度を調べる方法、会社や店舗を成長させるために有用な分析方法を知り、マーケティングに役立てたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
顧客ポートフォリオ分析とは、顧客の満足度を調査する分析手法
「顧客ポートフォリオ分析」とは、商品やサービスの顧客満足度を調査する分析手法をいいます。CS(Consumer Satisfaction:顧客満足度)ポートフォリオ分析とも呼ばれ、「PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」というフレームワークを応用したものです。
ポートフォリオを作成する目的は、商品やサービスの品質・価格などの項目ごとに顧客の満足度と重視度を定量的に把握し、自社が改善すべき項目の優先順位をつけることです。
縦軸を顧客満足度、横軸を総合満足度へ影響する重要度として、「現状維持項目」「重要維持項目」「改善項目」「重要改善項目」に4分割した1枚のグラフに分析結果をまとめます。
分析結果のグラフは、それぞれ次の4つの象限を示しています。
- 重要維持項目:満足度が高く、総合満足度への影響も大きい
- 重要改善項目:満足度が低く、総合満足度への影響が大きい
- 現状維持項目:満足度が高く、総合満足度への影響が小さい
- 改善項目:満足度が低く、総合満足度への影響も小さい
顧客ポートフォリオ分析は商品やサービスの満足度を要素別に調査するほか、自社が改善すべき要素の発見、時系列における満足度の変化を把握する際などにも活用可能です。
顧客ポートフォリオ分析の3つのメリット
顧客ポートフォリオ分析で顧客の満足度と重要度を測ることには、3つのメリットがあります。
- 顧客の満足度と重要度を1枚のグラフで可視化できる
- 自社の改善すべき項目を明確化できる
- 顧客目線で具体的な施策立案が可能になる
それぞれのメリットを確認し、自社の満足度調査に顧客ポートフォリオ分析を活用しましょう。
顧客の満足度・重要度を1枚のグラフで可視化できる
顧客ポートフォリオ分析では項目ごとに顧客の満足度と重要度を1枚のグラフにまとめるため、別のグラフと見比べる必要がなく、効率的な分析が可能です。
グラフにすることでデータを視覚的に捉えられるようになり、満足度と重要度の関係を一目で理解できます。
満足度・重要度の可視化によって優先順位をつけやすくなるため、迅速で的確な戦略決定をおこなえるでしょう。
顧客ポートフォリオ分析は多くの場合、現状把握や社内会議における改善策の策定に活用されますが、参加者全員がデータ分析に精通しているとは限りません。そこで、顧客ポートフォリオ分析で作成したグラフを資料として使うと、誰でも直感的に分析結果を理解しやすく、会議の進行を円滑にする効果も期待できます。
自社の改善すべき項目を明確化できる
顧客ポートフォリオ分析の結果はグラフにして明確化できるためで、自社の改善すべき項目を判断しやすくなることも、メリットのひとつです。
1枚のグラフに項目別の満足度・重要度といった複数の要素が含まれており、顧客へのアンケートやインタビューだけでは判断できない優先順位を把握し、問題点を特定できます。
顧客ポートフォリオ分析を使うことで、社内の限られたリソースを最適に活用し、効果的な改善策を導入しやすくなるでしょう。結果的に顧客満足度や市場競争力の向上にも寄与します。
顧客目線で具体的な施策立案が可能になる
顧客ポートフォリオ分析は顧客の満足度や重要度をもとにおこなうため、分析結果には顧客の具体的な意見が反映されます。分析結果を活用することで顧客の意見を取り入れた、顧客満足度アップにつながる具体的な戦略の立案が可能となるでしょう。
顧客目線でのアプローチは、商品やサービスの改善点をより的確に捉えて顧客ニーズを満たし、市場において競合企業と差別化を図る上で欠かせません。
分析結果を活用した効果的な施策の実施により、顧客満足度の向上だけでなく、優良顧客の育成やLTV(顧客生涯価値)の向上なども期待できるでしょう。
顧客ポートフォリオ分析のやり方3ステップ
顧客ポートフォリオ分析は、次の3ステップでおこないます。
- 顧客に対しアンケート調査をおこなう
- 各項目の満足度・重要度を算出する
- 算出結果をグラフに記入する
分析の流れを確認し、より効果的な顧客ポートフォリオ分析を実行するための準備を進めましょう。
ステップ1:顧客に対しアンケート調査をおこなう
顧客ポートフォリオ分析をはじめるには、まず顧客に対して、商品やサービスの満足度についてのアンケート調査をおこないます。アンケートは、総合満足度と各項目の満足度を5〜10段階で回答できる形式にしましょう。
補足情報として総合満足度に影響する項目に関する調査もしておくと、分析精度の向上につながります。年齢や性別などを補足情報として収集するケースが多いようですが、自社の目的に合った調査をおこなうために、事前に必要な情報を検討しておきましょう。
ステップ2:各項目の満足度・重要度を算出する
アンケートが完了したら、各項目の満足度と重要度を算出してグラフに反映します。
満足度を算出する際、データが正規分布していれば平均値を扱います。もし正規分布していない場合は、中央値を抽出しましょう。
重要度は、総合満足度と各項目の相関係数を算出した値を用います。ただし、擬似相関が生まれる可能性もゼロではないため、その場合は補足情報も使って偏相関係数を算出し、正しい重要度を割り出しましょう。
-
用語の解説
- 正規分布:平均値・最頻値・中央値が一致し、左右対称になっている山型の確率分布
- 相関係数:2つのデータの関連性を表す指標
- 擬似相関:2つのデータに直接的な因果関係がないのに、あたかも関連して見える現象
- 偏相関係数:分析結果に影響する変数を除いた上で、2つのデータの関連性を表す指標
ステップ3:算出結果をグラフに記入する
ステップ2で算出した満足度と重要度を使い、重要維持項目・重要改善項目・現状維持項目・改善項目で4分割した散布図を作成します。
グラフにおける顧客の満足度と重要度は、右上であるほど高くなり、反対に左下であるほど低くなります。
特に改善すべき項目は右下の「重要改善項目」で、満足度が低く、顧客にとって重要度が高いと判断できるため、満足度を高めるための施策を検討する必要があるでしょう。
このように顧客ポートフォリオ分析を活用し、顧客が感じている満足度や重要度を調査することで、自社が重点的に改善すべき項目を明らかにできます。
まとめ:顧客ポートフォリオ分析で自社の改善項目を発見しよう!
- 顧客ポートフォリオ分析とは、顧客満足度を調査する分析手法
- 分析結果を1枚のグラフで確認でき、改善項目の明確化が可能
- アンケート結果から満足度・重要度を算出し、グラフに記入するのが基本の流れ
顧客ポートフォリオ分析は、項目ごとに顧客の満足度を調査する分析手法で、ただ満足度を把握するだけでなく、改善項目の発見や満足度の変化を調査する際にも有効です。
1枚のグラフを4分割した分析結果から、アンケートやインタビューだけでは判断できない優先的に改善すべき項目の把握や、顧客目線でのアプローチ施策の立案が可能となります。分析では、まず顧客に対するアンケート調査をおこない、回答結果から各項目の重要度と満足度を算出して散布図を作成します。
顧客満足度調査から自社の現状を把握し、満足度向上につながる効果的な施策を検討しましょう。