アソシエーション分析のやり方5ステップ!メリットや注意点・活用例も解説

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アソシエーション分析のやり方5ステップ!メリットや注意点・活用例も解説
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マーケティングに生かせる分析手法の1つに、アソシエーション分析があります。
商品同士の関連性を発見できる分析手法ですが、「アソシエーション分析のやり方がわからない」「どのように実践すれば効果的なのか知りたい」と悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

アソシエーション分析をビジネスで効果的に活用するためには、分析に使う指標の意味や手順を理解し、正しく実行することが重要です。

今回は、アソシエーション分析の概要やメリット・デメリット、具体的な手順について詳しく解説します。「データ分析の精度を高めたい」「アソシエーション分析をマーケティング戦略に活用したい」という方は、ぜひ参考にしてください。

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目次

アソシエーション分析とは大量のデータから情報を得るデータマイニングの一つ

「アソシエーション分析」とは、ビッグデータから自社に必要な情報を得るデータマイニングの一つです。この手法はPOSデータやECサイトの購買履歴などを分析し、データ間の関連性を見つけ出す際に活用できます。

アソシエーション分析では、「商品Aを購入する顧客は、商品Bも同時に購入する傾向が高い」といったパターンを把握できます。データから導かれた関連性をもとに商品の配置を改善することで、販売戦略の強化につながるでしょう。

このように、アソシエーション分析は隠れたビジネスチャンスを発見し、新たな施策を打ち出すために欠かせない分析手法といえます。

バスケット分析やABC分析との違い

アソシエーション分析は広い視点でデータ同士の関連性を探る手法であり、バスケット分析やABC分析とは異なる視点を持ちます。それぞれの特徴は以下の通りです。

  • アソシエーション分析:広い視点でデータ同士の関連を分析する手法
  • バスケット分析:同時購入される商品を発見する手法
  • ABC分析:「売上が高い=注力すべき商品」を発見する手法

バスケット分析は特定の取引において同時に購入される商品の組み合わせを見つけるための手法であり、ABC分析は売上や利益の観点から、どの商品に注力すべきかを明らかにするための手法です。

一方アソシエーション分析は、より広い視点から複数のデータ間の関連性を分析することに重点を置いています。表面的にはわかりにくい商品同士の関連性を発見し、新たなビジネスチャンスにつなげやすいことが特徴です。

アソシエーション分析の有名な例「おむつとビール」とは?

アソシエーション分析の有名な例としてよく挙げられるのが「おむつとビール」です。

この事例は、アメリカのスーパーマーケット・チェーンでのデータマイニングによって発見されたものです。調査では「30〜40代の男性客は、おむつとビールを同時に購入することが多い」という傾向が明らかになりました。

この分析結果から、仕事帰りにおむつを頼まれた男性が、ついでに自分のためにビールも購入しているという仮説を立てられます。その後、このスーパーマーケット・チェーンでは、仮説をもとにおむつとビールを隣接して配置したところ、売上の増加を確認できたとのことでした。

「おむつとビールの」の事例からは、データマイニングによる分析結果から、マーケティングに役立つ有力なデータを得られる可能性が読み取れます。

アソシエーション分析の3つの指標

アソシエーション分析は、以下3つの指標を用いておこないます。

  • 支持度(Support)
  • 信頼度(Confidence)
  • リフト値(Lift)

それぞれ解説しますので、手法の意味や計算方法を理解しましょう。

アソシエーション分析の指標1:支持度(Support)

「支持度(support)」とは、全データの中で「商品Aと商品Bが同時購入される割合」を表す指標です。支持度が高いほど同時に購入される可能性も上がるため、商品を近くに並べることで同時購入による売上アップも見込めるでしょう。

支持度の計算は、以下の式でおこないます。

支持度=商品Aと商品Bを同時購入した顧客数÷全顧客数

例えば、全顧客数が300人で商品Aと商品Bを同時購入した顧客数が40人の場合、支持度は13%(=40人÷300人)となります。

アソシエーション分析の指標2:信頼度(Confidence)

「信頼度(Confidence)」とは「商品Aを買った顧客のうち、商品Bも購入した顧客の割合」を表す指標です。信頼度が高いほど同時購入される可能性が高いと判断できるため、2つの商品の関連性を把握する際に役立ちます。

信頼度は以下の計算式で算出できます。

信頼度=商品Aと商品Bを同時購入した顧客数÷商品Aを購入した顧客数

例えば、商品Aと商品Bを同時購入した顧客数が40人、商品Aを購入した顧客数が80人だとすると、信頼度は50%(=40人÷80人)となります。

アソシエーション分析の指標3:リフト値(Lift)

「リフト値(Lift)」とは、データ全体の中で「商品Aが商品Bの購買率にどのような影響を与えているのか」を表す指標です。リフト値が高いほど、商品Aと商品Bの相関関係は強くなります。リフト値が2以上であれば強い相関性、1以上であれば優位な相関性があると判断できます。

リフト値の計算方法は以下の通りです。

リフト値=(商品Aと商品Bを同時購入した顧客数÷商品Aを購入した顧客数)÷(商品Bを購入した顧客数÷全顧客数)

例えば全顧客数300人のうち、商品Aを購入した顧客数が80人、商品Bを購入した顧客数が70人、商品Aと商品Bを同時購入した顧客数が40人だとすると、リフト値は約2.17(=(40人÷80人)÷(70÷300人))となります。

アソシエーション分析のやり方5ステップ

アソシエーション分析は、以下の手順でおこないます。

  1. 前提と結果を仮定する
  2. 分析するデータを用意する
  3. 同時購入された商品の組み合わせを見つける
  4. 支持度・信頼度・リフト値を算出する
  5. 分析結果をマーケティングに生かす

それぞれどのように進めていくのか、分析の流れを解説していきます。

アソシエーション分析のステップ1:前提と結果を仮定する

アソシエーション分析ではまず、前提と結果を仮定することが大切です。前提と結果の仮定を誤ると正しいマーケティングをおこなえないため、分析の軸となる重要なステップです。

分析をおこなう際には、「Aという前提があるとき、Bという結果が出る」という仮定を立てて、関連するデータを調べましょう。なお、前提の部分を「条件部」といい、結果の部分を「結論部」といいます。
条件部と結論部は直感や曖昧な感覚ではなく、購買データなどの確かな根拠に基づいて設定する必要があります。

また、立てた仮定が間違っている場合は再度設定して分析を繰り返すことで、マーケティング施策に役立つデータを得られるでしょう。

アソシエーション分析のステップ2:分析するデータを用意する

続いて、アソシエーション分析に使用するデータを準備しましょう。この段階では次のデータが必要です。

  • 購入された商品と数量のデータ
  • 一度の取引で同時に購入された商品のデータ

POSシステムの購買履歴データなどを用いると、顧客の購買パターンを詳細に分析できます。

アソシエーション分析のステップ3:同時購入された商品の組み合わせを見つける

次に、集めた分析データの中から、同時に購入された商品の組み合わせを見つけます。
分析データをもとに、顧客が購入した商品を組み合わせ単位で集計しましょう。この作業では膨大なデータを扱うため、エクセルや専用の分析ツールを使うと効率的です。

これにより、どの商品が一緒に購入されやすいのかが明確になり、関連商品の提案や売り場の改善に役立てられます。

アソシエーション分析のステップ4:支持度・信頼度・リフト値を算出する

同時購入された商品の組み合わせを見つけたら、支持度・信頼度・リフト値をそれぞれ算出します。以下の場合を例に、計算してみましょう。

  • 全顧客数:300人
  • 商品Aを購入した顧客数:100人
  • 商品Bを購入した顧客数:60人
  • 商品Aと商品Bを同時購入した顧客数:30人

【支持度の計算】
支持度=商品Aと商品Bを同時購入した顧客数÷全顧客数
10%=30人÷300人

【信頼度の計算】
信頼度=商品Aと商品Bを同時購入した顧客数÷商品Aを購入した顧客数
30%=30人÷100人

【リフト値の計算】
リフト値=(商品Aと商品Bを同時購入した顧客数÷商品Aを購入した顧客数)÷(商品Bを購入した顧客数÷全顧客数)
1.5=(30人÷100人)÷(60人÷300人)

アソシエーション分析のステップ5:分析結果をマーケティングに生かす

アソシエーション分析が完了したら、それぞれ算出した指標をマーケティングに生かしましょう。分析結果の活用例として、以下のような施策が挙げられます。

分析結果 施策例
支持度が高い組み合わせだった

商品Aと商品Bがセットで購入されやすい販売方法を取り入れる

《具体例》

  • 商品Aと商品Bのセットで買うと割引になる
  • 商品Aと商品Bのセット購入限定でギフト包装サービスおこなう など
信頼度が高い商品の組み合わせだった

商品Aを買うとBも買いたくなるような工夫をする

《具体例》

  • 商品Aと商品Bを並べて陳列し、目に止まりやすくする
  • 商品Aに商品Bを使うと〇〇に便利といった関心を高めるPOPをつける など
リフト値が高い商品の組み合わせだった

販促で「商品Bを買った人は商品Aも買っています」といったレコメンドをおこなう

《具体例》

  • 商品Aを購入した顧客に対して商品BをすすめるDMを送る
  • 実店舗とECサイトの顧客購買情報を連携し、「こちらもおすすめ!」といった商品Bをすすめるメッセージを表示する など

ただし、施策を考える際は、強制的に同時購入をさせる「抱き合わせ販売」にならないよう、注意しましょう。

アソシエーション分析のメリット

ここでは、アソシエーション分析の3つのメリットと、分析する際の注意点を詳しく解説します。

アソシエーション分析のメリット1:データを根拠に据えて販促施策をすすめられる

アソシエーション分析の1つ目のメリットは、データに基づいた販促施策が可能になることです。

販売担当者の勘や経験に頼り「〇〇が売れているときは××も買われているようだ」という判断で施策を進めると属人的になり、基準が曖昧になりがちです。これにより、施策の効果検証が難しく、業務が非効率的になる可能性があります。

アソシエーション分析を活用すると、データに基づく根拠を得られるため、施策の判断基準が明確になります。その結果「このデータに基づいてこの施策をおこなった」という客観的な視点での説明が可能となり、効果検証もスムーズに進められるため、次回の分析精度が上がるでしょう。

アソシエーション分析のメリット2:売上につながる販促施策の立案に生かせる

アソシエーション分析の2つ目のメリットは、売上の増加につながる販促施策の立案が容易になることです。データによって商品の関連性が明確になるため「ターゲットが合わせ買いしやすい商品の組み合わせ」を把握でき、その情報をもとに販促施策を計画しやすくなります。

例えば、アソシエーション分析の結果を取り入れて、

  • 小売店で、同時購入されやすい商品を隣接して陳列する
  • レストランで、メインメニューとサイドメニューやドリンクをセットで提供する

などの施策をおこなうと、顧客が「ついで買い」をしやすくなるでしょう。

このように、根拠に基づいて顧客のニーズや購買行動を分析し、結果をマーケティングに生かすことで、クロスセルやアップセルによる売上アップが期待できます。

アソシエーション分析のメリット3:マーケティングコストの削減につながる

アソシエーション分析の3つ目のメリットは、マーケティングコストを削減できることです。分析で購買傾向を把握すると「顧客が何を求めているか」「顧客が商品購入によって解決したいことは何か」をより具体的に理解できます。

顧客ニーズが明確になれば「誰に何を訴求すればよいか」「どのような商品・サービスを提供するべきか」を正確に判断できるため、ターゲットに刺さるマーケティング施策を実行しやすくなります。

その結果、費用対効果の高い施策を実施できるため、マーケティングコストを抑えられるでしょう。

アソシエーション分析の注意点

アソシエーション分析で得られる分析結果の精度を高めるには、下記の内容に注意しましょう。

アソシエーション分析の注意点1:売上数の少ない商品には不向きである

アソシエーション分析の1つ目の注意点は、売上数の少ない商品には適していないことです。

分析をする際には、対象となる商品の売上数が十分であることが求められます。
顧客データが1件しかないときに「商品Aと商品Bを同時購入した」という結果が出たとしても、商品同士の関連性があるとは限りません。

精度の高い分析をおこなうには多量のデータを必要とするため、分析対象には売上数の多い商品を選びましょう。

アソシエーション分析の注意点2:分析の方向性を誤ると正しい結果を得られない

アソシエーション分析における2つ目の注意点は、分析の方向性を誤ると正しい結果を得られないことです。

アソシエーション分析では、関連性の高さだけでなく条件部と帰結部が重要です。
例えば、条件部に商品Aの購入、帰結部に商品Bの購入を置いたとき「商品Aの購入者のうち半分は商品Bも購入する」という結果が出たとします。この結果を逆に置き換えたとしても、必ずしも「商品Bの購入者のうち半分は商品Aを購入する」になるとは限りません。

方向性を間違えたまま判断すると「机上のデータでは関連性が高いものの、施策の効果が出にくい」というずれが生じやすくなるため、注意が必要です。

正しい方向性と誤った方向性の例

以下は、アソシエーション分析における正しい方向性と誤った方向性の例です。

《「家庭用プリンターの購入」と「インクカートリッジの購入」場合》

条件部(前提) 条件部(前提)
正しい方向性 家庭用プリンターを購入している 同時にインクカートリッジを購入している
誤った方向性 インクカートリッジを購入している 同時に家庭用プリンターを購入している

この場合、正しい方向性の分析をおこなえていれば、家庭用プリンターの購入者に対してインクカートリッジの同時購入を促せます。

しかし、方向性を誤って判断しインクカートリッジ購入者に家庭用プリンターを勧めても、売れない可能性の方が高いでしょう。なぜなら、インクカートリッジを買う人物は、すでに家庭用プリンターを所持している確率が高いためです。

このように、分析時に条件部と帰結部の方向性を誤ったり、安易に「条件部と帰結部を逆にしても同じだろう」と考えてしまったりすると、マーケティング施策の失敗につながる恐れがあります。

アソシエーション分析のマーケティングへの活用例

ここでは、アソシエーション分析のマーケティングへの活用例を紹介します。

アソシエーション分析の活用例1:ロイヤルティプログラムの導入

アソシエーション分析は、ロイヤルティプログラムの導入においても有効です。

例えばある大手スーパーマーケットで、アソシエーション分析を用いて常連客の購入履歴を詳細に解析し、頻繁に同時購入される商品を特定したとします。
このデータから「それらの商品をセットで購入した顧客は、通常より多くポイントが貯まる」というロイヤルティプログラムを導入した場合、顧客のリピート率とプログラムの利用率が増加すると考えられます。

さらに、売上の増加や顧客満足度の向上も期待できるでしょう。アソシエーション分析を活用することでターゲットに合った効果的なアプローチができるため、顧客のロイヤルティを高めやすくなります。

アソシエーション分析の活用例2:ターゲティング広告の最適化

アソシエーション分析を活用したターゲティング広告の最適化は、効果的なプロモーションキャンペーンの実現にも役立ちます。

あるファッションブランドがアソシエーション分析を活用して、ECサイトで同時購入されることの多い商品の組み合わせを特定したとしましょう。
この分析をもとに、ソーシャルメディア広告で特定商品の組み合わせをピックアップし、ターゲティング広告を展開すると、広告のクリック率や商品の購入率、会員登録数などが増え、費用対効果の改善が期待できるでしょう。

アソシエーション分析を活用することで、顧客の購買行動に基づいた広告配信ができ、より高いマーケティング効果を得られる可能性があります。

まとめ:アソシエーション分析をもとに売上につながる施策を実行しよう

  • アソシエーション分析は、大量のデータから必要な情報を得るデータマイニングの一つ
  • 支持度・信頼度・リフト値の3つの指標を使って分析をおこなう
  • データをもとにした根拠のある分析が可能な反面、売上数の少ない商品や分析の方向性に注意が必要

アソシエーション分析は、売上や顧客満足度を増加させたい企業にとって、欠かせないデータマイニングの手法です。この分析では支持度(Support)・信頼度(Confidence)・リフト値(Lift)の3つの指標をもとに、同時購入されやすい商品の関連性を調べます。

アソシエーション分析は広い視点でデータ同士の関連を分析できる反面、売上数の少ない商品では正しい分析をおこなえないことや、分析の方向性を誤ると正しい結果を得られない点に注意が必要です。

まずは自店舗の購買データを参考に、商品の関連性について、前提と結論を仮定してみましょう。正しい方向性と手順でアソシエーション分析がおこなえれば、分析結果をマーケティングに生かせ、売上アップにつながるでしょう。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

タグ : アソシエーション分析 データ分析 分析手法 購買データ 顧客分析
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