需要予測でマーケティング効果を最大限に高めよう!メリット・やり方を解説

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商品の需要は、顧客ニーズや季節などさまざまな要因で流動的に変化します。そんな中で「顧客ニーズを満たす商品・サービスを提供したい」「予測される需要に合わせたマーケティング施策を実行したい」と悩んでいる方は、多いのではないでしょうか。

需要予測の結果を生かして効果的なマーケティング施策を実施するには、データを正しく捉えて適切な手法で分析することが欠かせません。

今回はマーケティングにおける需要予測の重要性やメリット、見るべきデータ、主なやり方を解説します。「市場の動向を把握してマーケティング効果を高めたい」「無駄な在庫を抱えず適切な在庫管理を実現したい」という方は、ぜひ最後までご覧ください。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

マーケティングにおける需要予測の重要性

需要予測とは、一定期間における自社商品やサービスの需要を予測するための手法です。
マーケティング戦略を成功に導き、利益を最大化させるには、精度の高い需要予測が欠かせません。

需要予測をおこなうことで、無駄なコストを抑えながら適切な在庫管理を実現できるため、マーケティング戦略の効果を最大限に高められます。競争力の強化や持続的な経営を実現する基盤づくりにも役立つでしょう。

マーケティングで需要予測をおこなう2つのメリット

マーケティングで需要予測をおこなう主なメリットは、以下の2つです。

  • 過剰在庫や売り切れのリスクを減らせる
  • マーケティング業務を効率化できる

なぜ需要予測によってこれらのメリットを得られるのか、次で解説していきます。

マーケティングで需要予測をおこなうメリット1:過剰在庫や売り切れのリスクを減らせる

精度の高い需要予測をおこなうことで、自社商品の流通量や在庫量を最適化できます。その結果、過剰在庫や売り切れのリスクを大幅に軽減できることが、需要予測をおこなうメリットの1つです。
需要予測に基づいて在庫管理を適切におこなうことで、古い商品の陳腐化や必要な商品の不足を防ぎやすくなるでしょう。

適切な在庫管理によって顧客が求める商品を必要なときに販売できるため、顧客満足度の向上にもつながります。さらに、リピーターの増加やブランドの信頼性向上も期待でき、マーケティング効果を高められるでしょう。

マーケティングで需要予測をおこなうメリット2:マーケティング業務を効率化できる

需要予測を活用することで将来的な売上や需要を見通せるようになるため、リソース計画を立てやすくなります。これにより、在庫管理や人員配置を最適化し、業務を効率化できることがもう1つのメリットです。

需要の変動を予測することで特定の商品が売れる時期を特定し、そのタイミングに合わせたプロモーション戦略を立案できます。結果としてマーケティング活動の精度が向上し、顧客に対してより効果的なアプローチが可能となるでしょう。

需要予測で見るべきデータは「需要実績」と「外部要因」

需要予測では、過去から現在における需要を数値化した「需要実績」と、自社では調整できない「外部要因」のデータをもとに、今後どのような需要が生まれるかを考えていきます。

以下は、主な需要実績と外部要因の詳細です。

データの種類 詳細 詳細
需要実績 販売実績 月や季節ごと、年間の売上状況など、過去から現在における商品の売上データ
出荷実績 実際に商品が顧客に出荷された記録
生産・在庫数 商品の生産量やその時点での在庫の状況
販売計画 設定した販売目標と実際の売上実績を比較し、その計画の精度を測る
顧客データ 顧客の属性情報(年齢、性別など)や購買履歴、リピート購入の頻度、再購入のタイミングを示す
外部要因 市場データ 業界全体のトレンドや市場規模、成長率などを示す
競合データ 競争相手の商品やサービスに関する販売実績、価格設定、販促活動などの情報を示す
天候・気候 気温、湿度、天気などの気象条件を示す

分析の目的に応じてデータを使い分けよう

需要予測をおこなう際は、自社の業種や取り扱っている商品、分析したい内容によって適したデータを使用します。

例えば、どの商品がいつ、どれだけ売れたかを把握したい場合には、販売実績や出荷実績が重要です。さらに、商品に季節性がある場合は外部要因の天候・季節を組み合わせると、天気や温度などが売上にどんな影響を与えるかが把握できます。

顧客データの年齢、性別、購入商品といった項目を分析すれば、ターゲット層が興味を持つ商品を特定できます。特に優良顧客のデータを利用すれば、購入可能性の高い商品を見つけ出し、効果的なマーケティング戦略を立てやすいでしょう。

外部要因を用いた市場や競合の状況把握も重要

その他にも、市場データや競合データを参照することで業界全体の動向や販売状況を把握すれば、市場の変化を考慮した現実的な需要予測が実現可能です。市場動向を把握したら、自社の生産・在庫数や販売計画が市場の変化に合っているかにも意識を向けましょう。

このように、需要実績と外部要因をさまざまな視点から分析することが、需要予測の精度を高めるコツです。

マーケティングにおける需要予測のやり方

マーケティングにおける需要予測には、さまざまなやり方があります。
ここでは本格的な需要予測の手法と、手軽に始められる販売実績や顧客データの集計・分析方法を解説します。

本格的な需要予測の手法5選

本格的な需要予測の手法には

  • 算術平均法
  • 移動平均法
  • 加重移動平均法
  • 指数平滑法
  • 回帰分析法

の5つがあります。
それぞれの分析手法について、概要をまとめましたのでご覧ください。

需要予測の方法 概要
算術平均法
  • 複数の数値を平均化して一つの数値を算出する、一般的な「平均値」を用いる手法
  • 計算が簡単で理解しやすいため、全体の傾向をつかむために多くの場面で利用されている
  • ただし、将来の需要が不規則に変動することを前提としているため、あくまで「おおまかな予測」に留まる
移動平均法
  • 過去の一定期間におけるデータの平均値をもとに需要を予測する手法
  • 特定期間のデータを集め、算出した平均値が次の期間の需要予測となる
  • 新たなデータを入手するたびに最も古いデータを削除し、新しいデータを加えて平均値の再計算をおこなう
  • 常に最新の情報を反映できるが、イレギュラーな変動によって予測が不適切になる場合がある

《移動平均法の例》

参照期間が3か月の場合、

  • 4月の売上数予測値は1~3月の平均値
  • 5月の売上数予測値は2~4月の平均値

と、平均を算出する期間をずらしていく。

加重移動平均法
  • 移動平均法から派生した、各期間の売上データに特定の加重係数(重み)を適用して予測をおこなう手法
  • 最近のデータが未来の需要に与える影響を、より大きく考慮するために設計されている
  • 加重移動平均法は『加重移動平均 = 重み付き実績値の合計 ÷ 重みの合計』 で算出できる
  • 最新データには高い(重い)加重係数を与え、データが古くなるごとに割り当てる係数を低く(軽く)することで、最近の需要変動を強調できる

《加重移動平均法の例》

▼条件

  • 1か月前の売上個数:100個(加重係数3)
  • 2か月前の売上個数:120個(加重係数2)
  • 3か月前の売上個数:130個(加重係数1)

▼前提の数値を算出する計算式

  • 重み付きの売上個数(実績値)の合計:
    670=(100×3)+(120×2)+(130×1)
  • 重みの合計値:
    6=3+2+1

▼予測値を算出する計算式
加重移動平均:
111.6666…=670÷6
上記の計算により、個数の予測値は約111.6個となる。

指数平滑法
  • 過去の実績値と予測値を組み合わせて需要を予測する手法
  • 『予測値 = 平滑化定数α × 前回実績値 +( 1 − α )× 前回予測値)』の式で算出する
  • 平滑化定数aは、過去の実績と予測どちらにウェイトを置くのかを仮定する推定パラメータ
  • 平滑化定数aには、0以上1以下の数値を任意に設定できるが、需要が不安定な場合は0に近づけ、安定している場合は1に近づけることが多い
  • 指数平滑法では、時系列にそったデータのみ使用できる

《指数平滑法の例》

▼条件

  • 先月売上個数:1,300個
  • 先月予測売上個数:1,800個
  • 平滑化定数a:0.2

▼予測値を算出する計算式
1,550=0.5×1,300+(1-0.5)×1,800
上記の計算から、予測値は1,550個となる。

回帰分析法
  • 売上に影響を及ぼす要因を統計的に解析する手法で、変数間の因果関係を明らかにする
  • 直線の方程式『Y = a + bX』を用いて、売上に対する影響を示す
  • 方程式にはそれぞれ「予測する数値=Y」「予測される数値=X」「回帰係数=a」「きっかけの数値=b」を当てはめる
  • 因果関係を持つ変数が一つの場合は単回帰分析と呼ばれ、複数の場合は重回帰分析となる

《単回帰分析の例》

▼条件

  • 1月:販促費0万円、売上個数20個
  • 2月:販促費3万円、売上個数32個
  • 3月:販促費6万円、売上個数44個
  • 4月:販促費9万円、売上個数56個

…販促費が3万円増えると、売上個数が12個増加している

▼前提の数値を算出する計算式

  • 予測する数値(Y)=売上個数
  • 予測に使う数値(X)=販促費
  • 回帰係数(a)4=12÷3※販促費と売上個数の増加比率
  • きっかけの数値(b)=20※Yが0の時のXの値

▼予測値を算出する計算式
上記の数値を方程式に当てはめると「Y=4X+20」となる。
たとえば販促費を15万掛けた場合の売上個数の予測値は、
80=(4×15)+20
上記の式により、80個と推測できる。

需要予測の方法はさまざまですが、どの手法も複雑な計算式が必要です。これから需要予測を始める方は、任意の期間における実績の平均を出すだけで予測値を計算できる「算術平均法」から始めましょう。算術平均法は、ExcelやGoogleスプレッドシートでAVERAGE関数「=AVERAGE(任意の範囲)」を使えば簡単にできます。

これらの手法による需要予測は、マーケティング施策の効果を高め、自社の利益を増加させるための重要なプロセスです。しかし、予測だけでは正確な需要の把握はできません。
顧客の需要を満たす商品・サービスの提供するには、販売実績や顧客データの分析をおこない、「どんな顧客がいつ、何を必要としているのか」を理解することが重要です。顧客ニーズを分析し需要予測と組み合わせることで、投資対効果が高いマーケティングができるでしょう。

販売実績や顧客データの分析で顧客ニーズを把握しよう

販売実績や顧客データの分析手法はさまざまですが、ここで紹介するのは次の6つです。

  • アソシエーション分析
  • RFM分析
  • ABC分析
  • クロス集計
  • セグメンテーション分析
  • バスケット分析

分析手法の概要をそれぞれ以下にまとめました。目的に応じて、適切な分析を使い分けましょう。

分析手法 概要
アソシエーション分析
  • データマイニング手法の一つで「もし〇〇ならば、結果は××になる」という仮説に基づいて、ビッグデータの分析をおこなう
  • 主な目的は、顧客の売上データから商品同士の関連性を見つけること
  • 顧客別の売上データを分析することで、顧客の行動傾向を把握し、購買行動に基づいたマーケティング戦略の最適化が可能になる
RFM分析
  • 直近の購入日(Recency)、購入頻度(Frequency)、購入金額(Monetary)の3つの指標を使用して顧客を分類する手法
  • 顧客の購買行動に基づいてグループ化し、マーケティング戦略を強化するべき顧客セグメントを特定可能
  • 購買活動が活発な顧客層には新商品の予告や特別な割引を提供し、購入頻度が低い顧客にはリマーケティングキャンペーンを実施するといった、適切なアプローチをおこなえる
ABC分析
  • 顧客の売上額や販売数、経費などのデータをもとに顧客をA・B・Cの3つのランクに分類し、優先度を明確にする分析手法
  • 主に商品をランク付けする際に用いられるが、顧客の売上貢献度を評価する際にも有効
  • Aランクには高い売上をもたらす顧客、Bランクには中程度の売上をもたらす顧客、Cランクには売上貢献度の低い顧客が含まれる
  • 分析結果から「Aランクの顧客に特別な特典を提供する」「Cランクの顧客にはリピート購入を促すキャンペーンを展開する」といった戦略を実践可能
クロス集計
  • 売上データから2~3の要素を選び出し、それらの関連性を分析する手法
  • 顧客がいつ、どの商品を購入したのかが具体的にわかる
  • 顧客名、購入日、購入商品といったデータを組み合わせて集計することで、各顧客の購買履歴を明らかにできる
  • 分析結果をもとに期間限定のキャンペーンやクーポンを配布することで、既存顧客の購買意欲を刺激できる
セグメンテーション分析
  • さまざまな属性や特徴に基づいて会員データをグループ化する手法
  • 「地理的変数」「人口動態変数」「心理的変数」「行動変数」の4つの変数を用いて顧客層を細分化することで、それぞれのセグメントに対する理解を深め、ターゲットに合った施策を実行可能
  • 分析の際には、市場の「優先順位(Rank)」「規模の有効性(Realistic)」「到達可能性(Reach)」「測定可能性(Response)」の4原則を意識することが重要
バスケット分析
  • バスケット(=買い物かご)の内容からデータ解析をおこなう手法
  • 主な目的は、同時購入された商品を分析して顧客の購買傾向をつかみ、商品の陳列やキャンペーン施策に生かすこと
  • 分析の際には「支持度」「信頼度」「期待信頼度」「リフト値」の4つの指標を用いる

マーケティングで需要予測をおこなう際の2つのポイント

マーケティングで需要予測をおこなうときには2つのポイントがあります。

  • 適切なデータを使う
  • 予測と実測の結果は異なることを理解する

この2つのポイントを押さえておきましょう。

マーケティングで需要予測をおこなう際のポイント1:適切なデータを使う

効果的な需要予測を実現するには、適切なデータの選定が不可欠です。十分な量と質のデータがなければ予測の精度が低下し、意思決定に悪影響を及ぼす恐れがあります。データの特性や分析目的に応じて必要なデータを集めましょう。

また、データの集計期間でも需要予測の精度が変わるため、対象となる商品の特性に応じた適切な期間や時期の設定が求められます。たとえば、ある一定の期間にしか売れない商品に対して、1年を通した売上データを集めても精度が高い需要予測はおこなえません。
予測の精度を高めるには、その商品が売れる時期を見極め、正しい期間のデータを集める必要があります。

データを集計する際には自社商品の特性を理解して、適切なデータの種類と集計期間を用いましょう。

マーケティングで需要予測をおこなう際のポイント2:予測と実測の結果は異なることを理解する

需要予測はあくまで“予測”であるため、必ずしも期待通りの結果が得られるとは限りません。さまざまなデータを基に需要を見積もりますが、未来の状況を完全に把握することは難しく、予測外の要素が大きな影響を及ぼすこともあります。

そのため、予測と実際の結果には必ず差異が生じることを念頭に置いて、これを最小限に抑える戦略を策定することが重要です。差異が出た場合には、立てた予測の何が違っていたのかを把握し、必要なデータや集計期間が誤っていなかったのかを再確認しましょう。そして、新たな仮説を立てて検証を繰り返すことで、需要予測の精度を高められるでしょう。

まとめ:需要予測でマーケティング戦略の成功を目指そう

  • マーケティング戦略の成功には需要予測が欠かせない
  • 需要予測で見るべきデータは「需要実績」と「外部要因」
  • 需要予測のやり方は本格的なものから手軽なものまでさまざまある

マーケティング戦略の効果を最大限に高めるには、需要予測が不可欠です。精度の高い需要予測をおこなうことで、過剰在庫や売り切れのリスクを減らし、マーケティング業務を効率化できます。

需要予測は、過去から現在までの需要を数値化した「需要実績」と、自社では調整不可能な「外部要因」のデータをもとにおこなうとよいでしょう。

需要予測にはさまざまなやり方があるため、まずは自社の購買動向データを取得し、取り組みやすい方法で過去の需要を分析するのをおすすめします。適切に需要予測をおこない、効果的なマーケティング施策につなげましょう。

客層の変化に気づいたら 既存店の商圏分析に

タグ : データ分析 マーケティング 分析手法 需要予測
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