飲食店の経営改善にはデータを活用しよう!活用方法や活用例を解説

飲食店を経営する中で、売上が伸び悩んでいて困っている方や、リピーターが増えずに悩む方は多いでしょう。
飲食店の経営を改善させるには、データを活用して現状を分析し、適切な施策を打つことが効果的です。売上データ・顧客データなどを活用すれば、集客やサービス改善のヒントを得られるでしょう。
今回は、飲食店の経営を改善する際に活用できるデータの種類や分析手法、活用例を詳しく解説します。「データを活用して売上を上げる方法を知りたい」「リピーターを増やすためのデータ分析のポイントを知りたい」という方は、ぜひ参考にしてください。
目次
飲食店の経営改善にはデータの活用が欠かせない
飲食店の経営において、勘や経験で経営戦略を立てるケースは少なくありません。しかし、これらの属人的な判断基準には、
- 効果が出なかったときの原因検証をおこないにくい
- 成功した施策の再現性が乏しい
などのデメリットが発生します。
さらに近年は、消費者のライフスタイルが大きく変化し、リモートワークの普及によるテイクアウトやデリバリーの需要が増えました。開業時と状況が大きく変わっている場合は、より一層「なんとなく」の経営改善では、期待した結果が表れにくいでしょう。
その結果、
「今までどおり、直感に頼った改善をおこなっていたら客数が減った」
「何をしても売上が伸び悩んだままだ」
などの課題を持つ、飲食店経営者の方もいるのではないでしょうか。
こうした課題に対応するには、データを活用し、現状の経営状況を把握した上で適切な施策を打つことが重要です。実際のデータから自店舗の傾向を分析することで、問題点が明確になり、より精度の高い経営改善施策を実行できます。
飲食店で活用できるデータの種類
飲食店で活用できるデータの種類として、ここでは5つ取り上げます。
- ID-POSデータ
- 顧客属性データ
- 来店データ
- 在庫・仕入れデータ
- 商圏データ
それぞれのデータからわかることや集め方、活用例を解説しますので、店舗のデータを分析してみてください。
飲食店で活用できるデータの種類1:ID-POSデータ
「ID-POSデータ」とは、顧客情報と購買データを紐付け、「誰が・いつ・何を・いくらで購入したのか」を明確にしたデータです。これにより、顧客別の注文傾向やリピート率、客単価などを把握して活用できます。
ID-POSデータを集めるには、ポイントカードや会員アプリの導入が有効です。また、キャッシュレス決済のアプリからも取得できます。
《ID-POSデータの活用例》
- リピート率の高い顧客を特定し、クーポンを配布する
- 同時に注文されやすいメニューを特定し、セットメニューなどのクロスセル戦略を実施する
- 顧客属性別に人気メニューを分析し、属性に合うSNSでアピールする
飲食店で活用できるデータの種類2:顧客属性データ
顧客属性データからは、来店した顧客の年齢や性別、職業、居住地などの情報がわかります。会員登録時の情報や、アンケート調査結果のデータを収集して活用しましょう。
《顧客属性データの活用例》
- 主要客層を特定し、需要に合うメニューや価格設定を展開する
- ターゲット層を洗い出し、SNS広告のターゲティングを最適化する
- 特定の客層(ファミリー・サラリーマン・学生など)に向けたキャンペーンを開催する
飲食店で活用できるデータの種類3:来店データ
来店データで読み取れる情報は次のとおりです。
- 来店客数
- 滞在時間
- 回転率
- テイクアウトと店内飲食の割合
- 時間帯別の混雑状況 など
来店データを集める方法には、店舗の出入口付近に人感センサーを設置する、POSレジの売上データを集計するなどがあります。
《来店データの活用例》
- 混雑する時間帯を特定し、ピーク時のスタッフ配置を最適化する
- 回転率が下がっている要因を特定し、回転率を増やす施策(空席管理の徹底など)を実施する
飲食店で活用できるデータの種類4:在庫・仕入れデータ
在庫・仕入れデータによって得られる情報は、
- 食材別の使用量(どの食材が、いつ・どれだけ使われたか)
- 食材の廃棄量・廃棄率
- 仕入れ価格の変動
などです。
これらのデータは、仕入れ履歴とPOSレジの売上データを連携させる、仕入れ管理システムや在庫管理アプリを導入するといった方法で収集できます。
《在庫・仕入れデータの活用例》
- 廃棄が多い場合、売上データを併用して発注量を調整し、精度を向上させる
- 季節ごとに食材の使用量が異なる場合、季節ごとの仕入れ計画を最適化する
- 仕入れ価格の変動に応じて減価率を見直し、利益率の向上を目指す
飲食店で活用できるデータの種類5:商圏データ
商圏データも飲食店の経営改善に活用できます。得られるデータは次のとおりです。
- 店舗周辺の人口
- 人口属性(年齢層・世帯数など)
- 競合店舗の分布や業態
- 商圏のポテンシャル など
商圏データは、国勢調査などの統計データや商圏分析ツール、GPSデータで調べられます。
《商圏データの活用例》
- 店舗周辺の住民とターゲット層が異なる場合、業態変更を検討する
- エリア属性に合わせたメニューや価格戦略を実施する
- 人流分析で自店舗の顧客が多いエリアを特定し、ポスティングを実施する
飲食店でデータを活用する方法とは?4つの分析方法を解説
飲食店でデータを活用するには、データを分析して改善施策の立案に使用可能な状態にする必要があります。
分析結果を経営改善に役立てるポイントは3つあります。まず分析の目的を決め、現状の課題を洗い出すことです。その上で、課題解決につながる分析に取り組むことが大切です。そして、データの分析だけで終わるのではなく、分析結果に応じた施策を実行することも欠かせません。
ここでは、飲食店のデータ活用に役立つ4つの分析方法を解説します。
- ABC分析
- バスケット分析
- 5P分析
- RFM分析
飲食店で使えるデータの分析方法1:ABC分析
「ABC分析」は、複数のデータをランク分けして重要度を測る分析手法です。売上に対する累計売上割合によって、重要度の高い順から3ランクに分類し、売れている商品と売れていない商品を把握します。
飲食店の経営改善にABC分析を活用する場合、メニューごとの売上や原価率を分析し、
- 売上貢献度の高いメニュー(Aランク)は、セットメニューの提供で利益率を高める
- 売上貢献度の低いメニュー(Cランク)は、食材の仕入れ量を調整してロスを減らす
などの施策をおこなえるでしょう。
クロスABC分析も役立つ
ABC分析は売上に対する貢献度を数値化できますが、より細かな視点で貢献度を把握する場合はクロスABC分析もおすすめです。
クロスABC分析は、「売上金額と販売数量」「売上金額と粗利額」など、2つの視点で商品をランク分けします。
例えば、売上金額と粗利額でランク分けする場合、
- 売上が高く粗利が高い(AAランク)
- 売上が高く粗利が低い(ACランク)
- 売上も粗利も低い(CCランク)
といった分類ができ、より細かな視点で商品を分類し、それぞれに合った施策がおこなえます。
以下のページで、クロスABC分析のテンプレートを配布しているので、ぜひご活用ください。
飲食店で使えるデータの分析方法2:バスケット分析
「バスケット分析」は顧客の買い物かごを1単位として、同時購入されやすい商品を見つける、主に小売店で用いる分析方法ですが、考え方は飲食店にも応用できます。同時に注文されやすい商品を発見することで、セットメニューのおすすめやキャンペーン、レイアウトの最適化といった施策に役立てられます。
バスケット分析で同時に注文されやすいメニューが見つかった場合、
- セットメニューを作成する
- メニュー表に「この料理も人気です」と記載する
- 接客時に「この料理と相性抜群です」とおすすめする
といった工夫で客単価を上げられるでしょう。
飲食店で使えるデータの分析方法3:5P分析
「5P分析」とは、
- Product(商品の特性)
- Price(商品の価格)
- Place(商品の流通)
- Promotion(商品のプロモーション)
この4つを企業側の視点で分析する4P分析に、さらに「5つ目のP」を組み合わせた分析手法です。
5つ目のPにあたる項目は定義付けされていないため、ビジネスモデルに合わせて設定します。よく使われるのは「People(人・顧客・従業員)」「Process(業務プロセス)」「Package(デザイン)」などです。
飲食店で5P分析をおこなうことで、それぞれの項目における特徴を把握可能です。
例えば5つ目のPに「People(人・顧客・従業員)」を設定して分析した際に、ファミリー層が多いと判明した場合、キッズメニューを導入する、広めのテーブル席を用意するなどの施策を検討できます。
飲食店で使えるデータの分析方法4:RFM分析
「RFM分析」は
- Recency(最終購入日)
- Frequency(購入回数)
- Monetary(購入金額)
この3つの指標で顧客を分類する分析手法です。
分析結果をもとに、売上貢献度の高いグループを限定としたキャンペーンを開催する、特定のターゲットに対するアプローチを変更するといった販促施策を実行できます。
飲食店でRFM分析を実施する場合、優良顧客には特典・限定メニューを提供する、離反顧客にはクーポンを配布して再訪を促すなどの施策にも活用できるでしょう。以下のページで、RFM分析用のエクセルテンプレートがダウンロードできます。ぜひ、飲食店のデータ活用にお役立てください。
飲食店でデータを活用した経営改善例2選
最後に、データの分析から経営改善の施策に活用するまでの流れを、2つ紹介します。参考例としてご覧ください。
飲食店でデータを活用した経営改善例1:ID-POSデータによるリピート率向上施策
とある都心駅前のイタリアンレストランが、
「新規顧客は来店するもののリピート率が低く、リピート客を増やせていない」という経営課題を抱えているとします。
まず、この課題を改善するために、ID-POSデータを用いて分析をおこないます。
《使用するデータ》
- ID-POSデータ(会員カードやアプリ利用者の来店・購買履歴)
《分析方法》
- RFM分析:顧客ごとの来店頻度を分析してリピーターの割合を算出する
- バスケット分析:メニュー別の売上と注文傾向を分析して、特定の層に人気のあるメニューを特定する
この分析の結果から
「リピーターが全体の3割程度と少ない」
「新規顧客は人気メニューとドリンクをセットで注文する傾向にある」
とわかった場合、以下のような施策で再来店を促し、リピート率を改善できるでしょう。
《経営改善施策の例》
- 新規顧客に次回使えるドリンクチケットを配布する
- 1ヶ月以上来店のない顧客にDMでクーポンを配布する
飲食店でデータを活用した経営改善例2:商圏データによる店舗集客施策
次に、某ビジネス街で個人ラーメン店を営業していたところ、近隣に競合店が増え、新規顧客の獲得に苦戦している店舗があると仮定します。
新規顧客の獲得に取り組むために、この店舗が商圏データを用いておこなった分析は、以下のとおりです。
《使用するデータ》
- 商圏データ(周辺の人口、年齢層、昼夜の人流データ、商圏内の競合店数)
- 競合店データ(価格帯、メニュー)
《分析方法》
- 5P分析
- 「Place(立地)」で、商圏データをもとに店舗周辺の人口や住民の年齢層、昼間人口と夜間人口の割合を把握する
- 競合店データを組み合わせ、「Price(価格)」で競合とのメニューの違いや価格差を比較・分析する
- バスケット分析:商圏データを組み合わせ、近隣住民やオフィス利用者のセット注文傾向を分析する
分析から、
「昼間の来店数が多く、顧客は仕事の合間に来店する傾向にある」
「競合店は自店舗よりも全体的に価格帯が低い」
「30代のサラリーマンはラーメンと餃子の組み合わせを好む」
といった情報を得られたとします。
この場合、商圏・競合店データの分析をもとに施策をおこない、ターゲット地域にSNS広告を配信することにより、新規顧客を獲得できる可能性が高まるでしょう。
《経営改善施策の例》
- ランチ限定でラーメンと餃子のセットメニューを割引提供
- 競合店と価格を比較したときに受け入れられやすいよう、トッピングを無料提供
まとめ:飲食店の経営改善はデータを活用して取り組もう
- 飲食店の経営改善では、データを活用して適切な施策を打つことが大切
- 飲食店で活用できるデータにはいくつか種類がある
- 収集したデータを分析したら、分析結果に応じて経営改善施策を検討する
飲食店の経営を改善するには、勘や経験に頼るのではなく、実際のデータを活用して自店舗の経営状況や特徴を分析し、適切な施策を実行することが欠かせません。
今回は飲食店で活用できるデータとして、ID-POSデータ、顧客属性データ、来店データ、在庫・仕入れデータ、商圏データの5つを取り上げました。目的や解決したい課題に合わせて分析手法を選び、経営改善につながる施策を考えましょう。
これから飲食店の経営改善に取り組む方は、記事内で解説したデータの活用方法を参考に、まずは自店舗が持つデータを洗い出して、利用できるか判断することから始めてはいかがでしょうか。