移動平均法をエクセルでおこなう方法|関数やアドインの使い方を解説

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移動平均法は、マーケティングにおける商品の生産量や在庫管理、販促施策の最適化に役立つ需要予測のひとつとして有効です。とはいえ「移動平均法の具体的な計算方法がわからない」「エクセルを使うといいと聞いたが、いまいちやり方がわからない」という方も多いでしょう。

移動平均法を使いこなすには、エクセルのアドイン「データ分析」や関数・数式を活用するのがポイントです。

本記事では移動平均法の概要と、エクセルを使った具体的な計算方法をまとめています。エクセルを使った移動平均法をマスターしたい方は、ぜひ参考にしてください。

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「移動平均法」は過去データの平均値を用いる分析手法

「移動平均法」とは、一定期間の時系列データを用いて、期間を少しずつ動かしながら数値を平均する分析方法です。マーケティングの需要予測にも有効で、日別・月別などの売上データをもとに移動平均を計算することで予測値を得られます。

主なメリットは、期間をずらしながら予測値を計算するため、最新のデータを反映しやすいことです。

ただし、計算対象とする時系列データの分布が広く、外れ値(極端にずれている値)があると、有効な分析結果を得られません。この場合は外れ値を除外して計算するか、別の計算方法を検討するとよいでしょう。

移動平均法は平均の取り方が3種類ある

移動平均法で平均を取る方法は3種類あります。

需要予測のような未来の数値を予測する分析では、「現在」より先のデータが存在しないため、主に用いられるのは後方移動平均です。また、直近のデータをもとに予測を立てられることからも、後方移動平均は有効であるといえます。

そのため、まずは簡単に需要予測をしてみたい、という場合は後方移動平均をとるのがおすすめです。

ただし、予測モデルが確立されている場合や、長期的な売上の推移を把握したい場合には、「前方移動平均」「中央移動平均」も活用できます。以下のメリット、デメリットを踏まえて、適切な計算方法を用いましょう。

メリット デメリット
前方移動平均
  • 未来のトレンド予測がしやすい
  • 予測モデルが無いと計算できない
  • 過去のデータが反映されない
後方移動平均
  • 直近の過去データを反映できる
  • 平滑化効果が低く、外れ値の影響を受けやすい
中央移動平均
  • 外れ値の影響を受けにくい
  • トレンドの変化を捉えやすい
  • 他の方法に比べて計算が複雑になる
  • 直近の過去データの反映が遅れる

需要予測における移動平均法の活用例

需要予測で移動平均法を活用する例として、以下が挙げられます。

【飲食店における来客数の予測例】

  • 分析対象とする時系列データ:過去1ヶ月の来客数(日別)
  • 移動平均法を使った計算方法:来客数(日別)の平均を取る
  • 計算で得られる結果:翌日における来客数の予測データ

飲食店において来客数は仕入れや仕込みの量を左右する重要な数値です。移動平均法で来客数を予測することで、どのくらいの注文が発生するかを予測しやすくなり、廃棄ロスの軽減につなげられるでしょう。

【小売店における必要在庫数の予測例】

  • 分析対象とする時系列データ:過去3ヶ月の商品別の売上個数
  • 移動平均法を使った計算方法:商品別の売上個数(月別)の平均を取る
  • 計算で得られる結果:翌月における商品別の必要在庫数の予測データ

小売店において、商品別に売上個数の予測をおこなうと過剰在庫を減らしやすくなります。また、適正在庫を予測できれば欠品によるチャンスロスも防げるでしょう。

このように移動平均法を用いることで、過去のデータに基づいた需要予測を立てられ、必要な人員の把握や在庫数の管理、トレンドの把握などの精度を高められるでしょう。

エクセルのアドインを使った移動平均法のやり方

移動平均法を使った計算は、エクセルのアドインである「データ分析」を使うと簡単におこなえます。以下のステップで進めましょう。

  1. アドインを使うための設定をする
  2. 分析したいデータへの反映をおこなう

なお、アドインを使ったデータ分析方法は、後方移動平均に限られます。中央移動平均や前方移動平均による分析をおこなう場合、関数や数式を使う必要がある点に注意しましょう。

アドインを使った移動平均法ステップ1:アドインを使うための設定

まず、移動平均の分析に用いるアドインを設定します。
「ファイル」タブの「オプション」を選択し、以下の手順で設定しましょう。設定済みの場合は次の手順に進んでください。
アドインを使った移動平均法ステップ1:アドインを使うための設定
シート上部のタブに「データ」の項目が表示されたら、アドインの設定は完了です。タブに「データ」が表示されない場合は、エクセルを一度閉じて開きなおしてみましょう。

アドインを使った移動平均法ステップ2:分析したいデータへの反映

次に、シートに分析したいデータを時系列に沿って入力します。入力するデータは、縦方向・横方向のどちらでもかまいません。データの入力が完了したら、分析したい区間を「3日ごと」「1週間(7日)ごと」「1ヶ月ごと」のように任意で決めましょう。

続いて、シート上部の「データ」タブを開きます。タブのメニュー「データ分析」をクリックすると、分析ツールの選択画面が表示されます。その中から「移動平均」を選択して「OK」をクリックすると以下のようなポップアップが表示されるため、必要な情報を入力しましょう。
アドインを使った移動平均法ステップ2:分析したいデータへの反映
「入力範囲」「区間」「出力先」「グラフ作成(チェック)」の設定をおこない「OK」を押すと、指定したセルの区間に応じた移動平均が出力されます。

なお、区間の設定は以下のように入力しましょう。

  • 1ヶ月の日別データで1週間ごとの移動平均を取る場合は「7」
  • 1年分の月別データで1ヶ月ごとの移動平均を取る場合は「12」 など

エクセルの関数/数式を使った移動平均法のやり方


エクセルの関数や数式を使った移動平均法では、「後方移動平均」「中央移動平均」「前方移動平均」の3つすべてを、2つの手順で計算できます。

関数を使った移動平均ステップ1:データを打ち込み平均の間隔を決める

関数を使って移動平均を取るには、事前に以下の2つをおこないましょう。

  • 分析データを入力する
  • 平均を取る区間の値を決める

関数を使った移動平均ステップ1:データを打ち込み平均の間隔を決める

まずはエクセルのシートに、移動平均の分析に必要なデータを時系列順に入力します。入力するデータは縦方向・横方向のどちらでもかまいません。

データの入力が完了したら、平均を取りたい区間を決めましょう。区間は、以下のように数値化します

  • 1ヶ月の日別データで6日間ごとの移動平均を取る場合は「6」
  • 1ヶ月の日別データで3日間ごとの移動平均を取る場合は「3」
  • 1年間の月別データで3ヶ月ごとの移動平均を取る場合は「3」 など

関数を使った移動平均ステップ2:関数/計算式を入力する

データ入力と区間の決定が済んだら、関数を使って移動平均を計算します。
使用するのは、平均値を求める「AVERAGE関数」です。

関数を使った移動平均ステップ2:関数/計算式を入力する

移動平均を出力したいセルに、以下の関数と範囲を入力しましょう。

=AVERAGE(任意の範囲)

範囲を指定する際は、起点とする期間から
後ろへデータをずらすと「前方移動平均」を、
手前にデータをずらすと「後方移動平均」を出せます。

また、起点とする期間を中心に、
前後で間隔を取ると「中央移動平均」を出せます。

上記の画像を例とした、3種類の移動平均を求める関数/計算式は以下の通りです。

▼起点とする期間を「3月(B4セル)」とし、3ヶ月の平均を取る場合

  • 前方移動平均:後ろへデータをずらす(3~5月の平均値)
    =AVERAGE(B4:B6)
  • 後方移動平均:手前にデータをずらす(1月~3月の平均値)
    =AVERAGE(B2:B4)
  • 中央移動平均:前後で間隔を取る(2月~4月の平均値)
    =AVERAGE(B3:B5)

ただし、上記の関数による中央移動平均は、区間(データの個数)が奇数の場合のみ計算できます。偶数で計算する場合は、以下のやり方をご覧ください。

偶数で中央移動平均をおこなう場合の計算式

移動平均法において、偶数の区間で中央移動平均を取る場合、次の手順で計算する必要があります。

  1. 区画を1つ多く取り、奇数にする
  2. 区間の両端を1/2の値にして移動平均を取る

偶数で中央移動平均をおこなう場合の計算式

偶数で区間を取る場合の計算例はこちらです。

▼6月の売上に対して4ヶ月分で中央移動平均を出す場合

  • 区間:4〜8月の5ヶ月分で計算する
  • 数式:=(B5/2+B6+B7+B8+B9/2)/4

▼8月の売上に対して6ヶ月分で中央移動平均を出したい場合

  • 区間:5〜11月の7ヶ月分で計算する
  • 数式:=(B6/2+B7+B8+B9+B10+B11+B12/2)/6

まとめ:移動平均法はエクセルのアドインや関数を活用して計算しよう

  • 移動平均法とは、時系列データの期間を動かしながら平均を取る分析方法
  • 平均の取り方は「前方移動平均」「後方移動平均」「中央移動平均」の3種類
  • 移動平均の計算はエクセルのアドインやAVERAGE関数を使うと簡単

移動平均法は、一定期間の時系列データを使って期間を動かしながら数値の平均を算出する手法で、マーケティングの需要予測にも有効です。
平均を取る方法は、起点の値より先のデータを取る「前方移動平均」、後のデータを取る「後方移動平均」、起点の値を中心に前後のデータを取る「中央移動平均」の3通りがあります。

需要予測は、過去のデータをもとに未来の数値を予測する分析なので、一般的には「後方移動平均」が用いられます。今回の記事では、3通り全ての計算方法とエクセルでのやり方を解説しましたが、需要予測をやってみようと思ったときは、まず後方平均移動法を使用しましょう。

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タグ : エクセル 分析手法 移動平均法 需要予測
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