商圏データの分析に活用される6つの「統計データ」とは?
エリアマーケティングGISなどのツールを使って商圏分析をおこなう際、発表されている統計データがどのような分析に役立つのかわかりにくく、選択に迷う方もいるでしょう。エリアマーケティングツールの機能は年々向上しており、搭載されている各種統計データも幅広く、利用価値の高いものが次々と追加されています。
一方、商圏分析の手段もより進化して複雑になっているため、分析に用いるデータの作成方法などを知っておかなければ、期待していた分析結果を得られなくなる可能性があります。
そこで今回は、新規出店や既存店の販促を目的とした商圏分析を担当する方に、分析に使用するデータがどのように作成され、どのデータがどんな分析に役立つのかを紹介します。
分析をすべてツールに任せず、元となるデータの特性を熟知して検討を重ね、より現実味のある商圏分析に役立てましょう。
目次
商圏分析の重要性と使用するデータについて
商圏分析とは、各種統計データ・自社所有の顧客データなどの定量的情報を活用して、市場規模や地域特性をグラフ・地図・分析表でビジュアル化していく分析手法です。
この商圏分析は、特定の地域で営業を始めるための経営計画を立てていく上で、重要な作業のひとつ。
なぜなら商圏分析は「出店・退店などの店舗開発」「チラシ・DMによる販売促進」「顧客データを用いた顧客分析」といった、各施策の収益性判断に直結しているからです。的確な商圏分析によって、売上確保や事業拡大の実現に近づきます。
また、商圏分析をおこなうには、各種統計データが必要です。
企業が持っている自社顧客データを客観的な統計データと比較検討することで、はじめて自社の強みや弱み・主要顧客層の属性などを把握できるのです。
実際に商圏分析をおこなうときには、次の章で紹介する統計/推計データなどを使用します。
商圏分析に使用される6つの統計/推計データ
商圏分析で使用する統計データには、「国勢調査」「年収階級別世帯数データ」「未来人口推計データ」「商業統計」などがあります。
ここでは、統計データごとの内容や特徴、商圏分析に用いたときに得られる効果を解説します。
商圏分析向けデータ①国勢調査
総務省統計局が5年に1度実施する国勢調査は、日本の人口や世帯に関する総合的な統計調査で、商圏分析をおこなう際に必要となる基礎的な統計データです。
商圏地図に国勢調査データを重ね合わせることで、潜在的なターゲットの性別や年代・世帯構成などを推定できます。
国勢調査から読み取れるデータの中で、代表的な項目を挙げます。
- 人口(総人口/男女別人口/年齢別人口等)
- 世帯の情報(総世帯数/世帯人員/世帯の家族類型)
- 住所・住宅に関する情報(住宅の種類/建て方)
商圏分析向けデータ②年収別世帯数推計データ(年収データ)
国勢調査には「年収」などの収入を問う調査項目はありませんが、商圏分析においてターゲットの「購買力」は重要な指標。
そこでターゲットの購買力を測る目安となるのが、年収階級別世帯数データです。
このデータは、国勢調査に住宅・土地統計調査データや学歴(最終学歴・学歴別の給与差)、賃金系の統計データ(賃金センサス等)をかけ合わせて、年収のレベルごとに世帯数を推計して作成されています。
年収別世帯数推計データを活用すると、購買力を重視した販売促進のターゲット選定や新規出店時の顧客分析などが可能になります。
年収別世帯数推計データ(年収データ)の詳細はコチラ
商圏分析向けデータ③未来人口データ
未来人口データは、国立社会保障・人口問題研究所などで採用されている「コーホート要因法」をベースにした、21世紀半ば頃までの人口を試算したデータです。
自然増減(出生・死亡)の要素から、商圏内における将来の総人口増減、あるいは購買力が高いとされる労働力人口の増減についても予測を立てることが可能です。純移動(転出入)の要素からは、ニュータウン開発や鉄道新設による大規模な人口流入のように、出店計画を立てる上でぜひ押さえておきたいデータを得られるでしょう。
未来人口データは販売促進PDCAサイクルの検証段階(C)において、次のプラン(P)を改善(A)するための指標としても有効性を発揮する場合があります。
※コーホート要因法とは、同年または同期間に生まれた人々の集団における、自然増減・純移動それぞれの人口変動要因ごとに将来人口を推計する方法。
未来人口データの詳細はコチラ
商圏分析向けデータ④家計調査年報
総務省統計局では、毎年「家計調査年報」というリポートで、全国約9,000世帯を対象として家計支出を集計した調査データを公表しています。
家計調査年報では家計収支・貯蓄・負債データをもとに、エリアごとの飲料・外食・衣類・教育費など各分類の消費額平均を推計できるようになります。また、商圏エリア内の支出動向の把握や店舗における陳列商品設定、ジャンルごとのウエイト作成などにも役立てられるでしょう。
家計調査年報の詳細はコチラ
商圏分析向けデータ⑤商業人口
調査対象となるエリアの年間小売販売額を1人当たりの平均年間小売販売額で割って算出した人口指標で、「買物人口」とも呼ばれます。
例えば、人口1,000人に対する商業人口が1,500人である場合、実際の居住者数よりも500人分多くモノが売れているため、ほかの地域から買い物に来る人が多いポテンシャルの高い地域である、といった仮説を立てる際に用いられます。
商圏分析向けデータ⑥リンク統計データ
リンク統計データは、国勢調査と経済センサスをリンクさせた推計データ。国勢調査が夜間人口(居住地)をもとに集計されたデータであるのに対して、
リンク統計データは昼間人口の動向を示しています。
市街地の昼間人口は、非労働力人口・完全失業者の情報に事業所統計の第2次・第3次産業従業者数や生徒・学生数などを加味することで算定されます。
産業別の従業員数や学生・就業者などタイプ別の人口が推定できるため、オフィス街に位置するコンビニエンス・ストアや飲食店などのエリアマーケティングには必須の情報です。
リンク統計データの詳細はコチラ
まとめ:商圏分析をおこなうときは統計データの内容を把握しておこう
これまで解説した6つの重要な統計データ以外にも、分析の目的に応じたさまざまな統計資料があります。
商圏分析をおこなう際は「どのような仮説を立てて分析するのか」を明確にして、目的に合った統計データをツールにかけ、出店計画や販売促進計画のプランニング、レポート作成などに役立てましょう。
今回の記事で紹介した統計データ以外の詳細は、下記のページをご参照ください。