マーケティング初心者向け市場分析ガイド|市場分析の基礎知識やフレームワークを解説
マーケティングを成功させるには、市場分析が欠かせません。しかし、市場分析の考え方ややり方はさまざまで、どう活用すべきかわからない方も多いのではないでしょうか。
本記事では、マーケティング初心者の方や基本に立ち返りたい方に向け、市場分析の基礎知識や注目すべき情報、市場分析に役立つフレームワークを解説します。今回の内容を参考にして市場分析の基本を押さえ、マーケティングの進め方を理解しましょう。
目次
マーケティングに欠かせない市場分析の基礎知識
マーケティングでは、売り手と買い手が取引をおこなう「市場」について理解することが大切です。
市場分析は、自社をとりまく市場の特性や動向を調査・分析し、効果的なマーケティング戦略を立案するためにおこないます。市場規模や動向、競合他社の情報などを調査・分析したうえで、自社が狙うべき市場やターゲット層を明確にします。
ここでは、市場分析の際によく使われる用語「マーケティングリサーチ」と「マーケットリサーチ」の違いを確認しましょう。
マーケティングリサーチとマーケットリサーチの違いとは?
マーケットリサーチとマーケティングリサーチは、英和辞典においてどちらも「市場調査」の意味を持ち、日本においても意味合いは同じです。
ただし、2つの用語を分けて考える場合は、それぞれ以下の意味となります。
- マーケットリサーチ:データやアンケートを使った市場調査
- マーケティングリサーチ:市場調査や分析などを含む総合的な調査
マーケティングリサーチのほうが、より幅広い範囲を対象としていることが特徴です。
市場分析では4つの情報に注目するべき
市場分析では、次の4つの情報を見ることがポイントです。
- 市場の規模
- 市場の動向
- 顧客が持つ問題
- 競合の情報
これらの視点から市場を把握し、精度の高いマーケティング施策につなげることが欠かせません。ここでは、4つの情報はそれぞれどのような内容なのかを解説します。
1.市場の規模
「市場の規模」とは、ある業界における市場の大きさ、つまり、その市場での年間総取引額・総売上を表します。市場の規模を知ることで、売上などを予測しやすくなります。
市場規模を分析する際は、TAM・SAM・SOMの3つの要素に分けて考えるのがポイントです。
- TAM(Total Addressable Market):業界全体の最大市場規模
- SAM(Serviceable Available Market):自社のターゲットとしてアプローチ可能な規模
- SOM(Serviceable Obtainable Market):実際に顧客を獲得できる規模。売上目標になりうる指標
2.市場の動向
「市場の動向」とは、一定期間での市場成長率や消費者の購買傾向などを指します。市場の動向を知ることで、業界における需要と供給の流れをつかみやすくなります。
また、時系列で見たときの技術の進化やトレンドの推移なども、マーケティングに役立つ情報として活用可能です。
3.顧客が持つ問題
市場分析は、顧客に対する理解を深める上でも役立ちます。顧客が業界に対してどのような商品を求めているのか、現状は何に困っているのかなど、顧客が持つ問題を調査しましょう。必要に応じてアンケートやインタビューをおこない、顧客の生の声を収集することで、課題解決につながるヒントを得られます。
顧客の問題とニーズを深く知ることは、自社が抱える課題を発見するほか、今後の商品・サービスの開発や改良の参考になります。
4.競合の情報
マーケティングをおこなううえでは、競合の情報を分析することも大切です。同じ市場で戦う競合のビジネスモデルやコンセプト、売上高などを調査しましょう。
競合分析で得た情報は、自社が顧客へ提供できる価値を発見することや、競合とターゲットを合わせるか・ずらすかといった戦略の策定などに役立ちます。
市場分析に役立つフレームワーク6選
市場分析に役立つフレームワークには、次の6つの考え方があります。
- STP分析
- 4C4P分析
- PPM分析
- 5F(ファイブフォース)分析
- SWOT分析
- PEST分析
それぞれの分析手法を確認し、自社の目的に応じて使い分けましょう。
STP分析
「STP分析」は、市場について「セグメンテーション(Segmentation)」「ターゲティング(Targeting)」「ポジショニング(Positioning)」の3つの観点から考える分析手法です。
- セグメンテーション:顧客層をさまざまな観点で分類する
- ターゲティング:分類した市場や顧客から、狙うべきセグメントを明確化する
- ポジショニング:セグメント内での自社・自店舗の立ち位置を明確化する
セグメンテーションでは年齢や職業、ニーズ、地域などで市場を分類します。ポジショニングでは、自社商品と他社商品との違いを明確にして、独自性を打ち出していくことがポイントです。
STP分析をおこなうことで市場の全体像を理解しつつ、自社が優位に戦えるポジションを発見しやすくなります。
4C4P分析
4C分析・4P分析とは、顧客と企業それぞれの視点でおこなうマーケティング戦略の考え方です。
【4C分析を構成する4単語】
- 顧客価値(Customer Value)
- 経費(Cost)
- 顧客利便性(Convenience)
- コミュニケーション(Communication)
【4P分析を構成する4単語】
- 製品(Product)
- 価格(Price)
- 流通(Place)
- 販促(Promotion)
4P分析は売る側の企業視点でのマーケティングの考え方であり、1960年代に提唱され始めました。しかし、プロダクト重視のマーケティングが限界に近づき、1993年には買う側の顧客視点での考え方である、4C分析が広まります。
これにより、顧客に購入してもらうにはどうすればよいのかを考えるようになり、顧客が求めるニーズを顧客視点で考える発想に転換されていきました。
PPM分析
PPM分析のPPMとは「Product Portfolio Management(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)」の略であり、経営資源を最適な割合で投下するための、事業の優先度を測定していく考え方です。
PPM分析では市場成長率とマーケットシェアの軸によって、自社がおこなう事業を4つの属性に分類します。
- 花形:成長市場で高いシェアを獲得し、収益性が高い事業。競争が激化しやすく、業績維持のための投資が必要。
- 金のなる木:低成長率の市場で高いシェアを獲得している事業。売上UPは見込まれないが、投資せずとも安定した業績が期待できる。
- 問題児:市場における伸びしろはあるが、シェアを獲得できていない事業。シェア獲得のための投資が必要。
- 負け犬:低成長率の市場で、なおかつシェアを獲得できていない事業。現状が続くようであれば、撤退も検討すべき。
経営資金が限られており、分配方法に迷った際はPPM分析が有効です。
5F(ファイブフォース)分析
5F(ファイブフォース)の「フォース」とは「脅威」を指します。「5F分析」は、5要素から、現在の事業における脅威と今後脅威となり得る要素を分析する手法です。
- 競合:競合他社との競争性
- 新規参入:競合他社の出現する可能性
- 買い手:消費者・顧客との力関係による収益性
- 売り手:サプライヤーや卸業者との力関係による収益性
- 代替品:他社商品・サービスに代替される可能性
5つの脅威を分析することで、業界の競争状況や自社の収益性を読み取りやすくなります。5F分析は、次に紹介するSWOT分析の前段階としても活用可能です。
SWOT分析
「SWOT分析」は、自社の内部環境とそれを取り巻く外部環境を同時に捉え、分析する方法です。
- 内部環境:強み(Strength)・弱み(Weakness)
- 外部環境:機会(Opportunity)・脅威(Threat)
例えば、内部環境の弱みとして人材不足、外部環境の脅威としては原材料の値上がりなどが考えられるでしょう。外部環境については、数年先まで考慮することがポイントです。
計4つのプラス要因とマイナス要因を整理することで、最大限に自社の強みを伸ばして機会を捉えるとともに、弱みや脅威となる要因への対策を練りやすくなります。
PEST分析
PEST分析は、2種類の自社の外部環境のうち、マクロ環境について分析する分析手法です。
- マクロ環境:政治・経済・社会・技術など、自社では制御不可能な要因
- ミクロ環境:市場・競合など、自社である程度コントロール可能な要因
マクロ環境を4つの視点で捉え、それぞれの要素が及ぼす自社への影響を調べます。
- 政治(Politics)
- 経済(Economy)
- 社会(Society)
- 技術(Technology)
特に新事業を構築する際は、自社を取り巻く市場や競合の現状を把握するだけでなく、外部環境についても情報収集・分析をおこなう必要があります。PEST分析で自社に影響を与える外部環境を理解し、トレンドを押さえたマーケティング戦略を考えましょう。
まとめ:適切な市場分析でマーケティングを成功させよう
- マーケティングには市場分析が欠かせない
- 4つの視点から市場分析をおこなうのがポイント
- フレームワークを活用すると市場を捉えやすい
マーケティングを成功させて経営目標を達成するためには、売り手と買い手が取引をおこなう「市場」を分析し、適切な施策を実施することが不可欠です。
市場分析の際は、市場の規模・市場の動向・競合の情報・顧客が持つ問題に注目し、自社の方向性を明らかにしましょう。実際の分析では、フレームワークを使うことで戦略の立案や意思決定をスムーズにおこなえます。
目的を明確にした上で市場分析に取り組み、自社のマーケティング戦略に役立てましょう。