飲食店の商圏範囲は半径500m!郊外店と都心店の違いも解説します
新規開業する飲食店も既存の飲食店も、商圏範囲の設定次第で売上に大きな影響をもたらす業種の一つです。出店する店舗の方向性が商圏範囲に合っていなければどんなに美味しい料理を出して、良い接客をしたとしても業績を伸ばすことは難しいでしょう。
では、飲食店の商圏範囲を決める時には何を意識すればいいのでしょうか。
今回は飲食店のエリアマーケティングや商圏範囲について基本的な考え方と注意点、新型コロナウイルスによる商圏範囲の変化について解説します。
目次
飲食店の商圏範囲はどのくらい?
飲食店の商圏範囲を設定する際、重要なのは「利用者がストレスなく来店できる範囲」を意識することです。
飲食店の場合、利用者は店に到着することが目的ではなく店で食事をすることを目的としています。店に行くまでの移動時間が長いと「もっと近いところで済ませよう」という意識が生まれ、利用頻度が低下するでしょう。利用頻度が低い顧客は固定客化が望めないため将来的にも貢献度が低く、業績向上は期待できません。飲食店の商圏範囲を設定する際には、利用者の移動手段や居住地域、動線を意識して、最もストレスなく店に来店できる距離を見極めましょう。
都心部の場合は半径500m程度
都市部の場合、飲食店の商圏範囲は半径500メートル程度です。都市部の飲食店には、利用者の多くが徒歩で来店します。そのため徒歩でも来店可能な距離、つまり都市部の飲食店の商圏範囲は半径500メートル程度が適しています。
一般的に、人が徒歩で進める距離は一分間に80メートルです。500メートル歩くのには7~8分かかりますが、道中に横断歩道などの障害物があることを加味すると片道10分程度となります。この程度の移動距離であれば多くの利用者がストレスを感じることなく来店できるでしょう。また、限られたお昼休みに来店する社会人もゆとりを持って昼食を楽しめるでしょう。
郊外の場合は半径3km程度
郊外の飲食店の場合、一次商圏の範囲は約3km程度となります。
郊外の飲食店は車で来店する利用者の割合が多くなります。車の場合、10分でおおよそ3km移動できるため、商圏内の環境要因によって変動はありますが一次商圏の範囲は約3km程度に設定しましょう。
ただし、幹線道路沿いの店舗では、他県や遠距離地域から訪れる利用者も多くなります。こういった広範囲の利用者を集める目的がある飲食店の場合、通常とは別の切り口で商圏範囲を設定しましょう。
飲食店の商圏範囲を決める時の注意点
飲食店の商圏範囲を決める時には、データの数値だけではない地理的なポイントや、視認性やコンセプトといった点も意識しましょう。商圏範囲を決める時に注意しておきたいポイントを3つ解説するので、出店計画を立てる際の参考にしてください。
商圏範囲を狭める障害物をチェックする
通常、商圏範囲は店舗物件を中心とした円形で構成されますが商圏範囲の中に障害物がある場合はその限りではありません。
例えば線路や河川、幹線道路等が商圏範囲を横切っている場合、その向こう側からの利用者は通常よりも少なくなるでしょう。商圏範囲の中に大型施設、人気の飲食店がある場合も同様です。
地図を見て半径を確認するときには、半径内にどんな施設があるか、地理がどうなっているのかなど、
自社商圏の分断要因がないかチェックしましょう。
顧客に関するさまざまなデータを地図にプロットすることで、商圏における自社の強いエリア・弱いエリアを分析できます。エリアマーケティングGISのTerraMapシリーズでは、プロットや色分けされた地図を確認し商圏の特性を調査可能です。
建物・看板の視認性も確認する
商圏範囲を元に出店する場所を決める場合、実際にその立地がどのように見えるかも確認しなければなりません。たとえ理想的な商圏範囲の中心であったとしても、店舗が見えず、作成した看板が見えなかったとしたら、人の目に留まらずお客様を逃してしまう可能性があります。
商圏範囲を決め、出店場所をピックアップしたら実際にその場所に訪れ、
道路からどのくらいの距離で見えるのか、周辺からの見え方を観察し「目立つ場所かどうか」をしっかりと確かめましょう。
商圏の特性と店舗のコンセプトを比較する
商圏の特性とお店のコンセプトを合わせるのも、繁盛店にするためには欠かせないポイントの1つです。
例え人通りが多く一次商圏にふさわしい場所でも、サービスが良かったとしても、その地域に暮らす人が求めているコンセプトの店でなければ利用者を増やすことはできないでしょう。学生街に高級飲食店、ビジネス街に子連れの家族世帯向けレストランといったような地域の特性とずれた店舗を作らないように、
商圏調査と潜在顧客のリサーチは必ず行いましょう。
飲食店の商圏設定は将来性も重要
飲食店を新たに出店する場合は今現在の商圏範囲だけではなく、将来的な商圏の変動も計画に組み込んでいきましょう。
現在、国内の人口は減少傾向にあり、将来的に過疎地化する場所も出てくる可能性があります。また、大規模な商業施設の開閉店や都市開発のよって人の動線が大きく変わることもあるでしょう。
そういった事柄で商圏内の人口や居住状況が変わると「現在売り上げが期待できる正しい商圏範囲」でも将来的に「商圏範囲から外れた場所」になってしまう恐れがあります。
商圏分析を行うときには、周辺地域の都市開発計画や大型施設の動向をリサーチして、一定期間安定して営業できる地域を探しましょう。
Withコロナ時代の飲食店の商圏
2020年9月現在、世界的に流行しているコロナの影響で飲食店経営やその在り方は大きく変わろうとしています。新型コロナウイルスへの感染を予防したいと考える人は不要な外出を避けてリスクを軽減しようと考えます。その筆頭が観光産業や外食産業でしょう。
しかし、今後も長く続くと予想されるコロナ禍において、いつまでも自宅に篭り続けるというのは現実的ではありません。現にSNSなどでは家で自炊し続けるのは辛いという意見も挙がるようになってきました。
今後の飲食店業界は「自宅で作る料理に飽きてきたから安全な場所で外食を楽しみたい」という層を取り込むことで競合に勝ち抜くチャンスが掴めるでしょう。
専門性と足元商圏が勝負の鍵
具体的に飲食店が行うべき対策は3つです。
まず大原則として、密集・密室・密着の三密を避ける店舗作りが必須です。客席間にゆとりを持たせ換気を徹底することで安全性を強調しましょう。
さらに、利用者が「コロナ禍であっても食べに行きたい」と思わせる専門性が高いメニュー、名物メニューの開発も重要です。そのメニューを食べることが「利用者の目的」になれば今後自粛期間が続いても一定の集客が見込めるでしょう。
最後に欠かせないポイントが足元商圏のニーズ調査です。電車やバスは人が密集するためコロナ感染を危惧する人は利用を避ける傾向があります。そういった人々が徒歩圏内で通える飲食店に流入するため、店舗周辺に住んでいる潜在顧客が何を求めているのかを改めてリサーチし、足元商圏のお客様から選ばれる店舗を作っていきましょう。
まとめ:飲食店の商圏範囲は郊外と都心で別に考えよう
飲食店で自店の商圏エリアを決める時は、出店する地域が都市部か郊外かを基準にして、ターゲットとなる利用者の使用割合が多い移動手段を調査しましょう。そしてその移動手段を使って「ストレスなく来店できる距離」を商圏範囲に設定してください。
また、2020年始めから感染が拡大している新型コロナウイルスへの対応も重要です。飲食店の利用者がどんなコロナ対策を求めているか、コロナを避けるためにどこに人の動きが集中するかを分析して厳しい状況でも勝ち残れる店舗開発を目指しましょう。