一次商圏はビジネス成功の鍵!範囲の目安を知って経営に活かそう
商圏は、ローカルビジネスで自社の影響が及ぶ範囲を指すマーケティング用語のこと。
新しい土地での起業や新規出店などエリアマーケティング戦略で幅広く活用される商圏は、店舗を中心とした半径距離と来店時間でおおよその範囲を定められます。
今回の記事では、商圏の中でも特に重要視される「一次商圏」について詳しく見ていきましょう。
商圏設定方法の概要については、以下の記事で詳しく解説しているのでぜひ参考にしてください。
目次
最も来店頻度が高い「一次商圏」の定義
一次商圏とは、商圏の中でももっとも顧客が多く、来店頻度が高いといわれる範囲です。一次商圏の人口をどれだけ抱え込めるかで店舗の運営状況は大きく左右されます。
まず、一次商圏の定義や特徴について詳しく紹介します。
一次商圏は徒歩15分圏内が主な目安
一次商圏の目安は「徒歩15分圏内」です。
なぜなら、顧客が買い物をするときに歩いて15分以内に到着できる範囲に店舗があれば、頻繁に利用する可能性が高くなるからです。
徒歩15分の距離を「徒歩1分=80m」という不動産業界の基準に照らし合わせて計算すると約1.2km。
一次商圏をざっくりと判断するときにはまず「自社を中心にして1.2km半径の円」を書いてみましょう。
障害物や地理で商圏の形は変わる
徒歩換算で算出された「1.2km半径」という商圏はあくまで地図上での概算です。実際の街中には幹線道路や踏切・河川などさまざまな「来店を阻害する要素」が存在します。
例えばコンビニが目の前にあっても「開かずの踏切」で通れなければ、少し遠くても足止めを食わない別のコンビニに行きますよね。商圏を決めるときには、実際に利用する顧客が「あの店に行くのは面倒だ」と思うような障害物を避ける必要があるのです。
地理や障害物を考慮して設定すると、商圏はキレイな円形にならないケースが多くなっています。
足元商圏と区別されることも
一次商圏の内側に「足元商圏」が別途設定される場合があります。足元商圏は徒歩5分圏内という超近距離範囲を指しますが、業種によっては一次商圏と同一視される場合もあります。足元商圏は、以前は競合が多い都市部のコンビニや飲食店などで重要視されていましたが、近年はやや傾向が変わりつつあります。
2020年以降、新型コロナウイルスの影響で消費者の外出意欲が低下し「より近場でニーズを満たすこと」を求める傾向が強くなりました。消費者の動向を受けて、足元商圏を意識してこなかった業種も顧客ニーズを満たす新たな商圏として注目し始めているのです。今後新しい生活様式が浸透しても競合から勝ち抜いていけるように、足元商圏について以下の記事で確認しておきましょう。
距離や移動時間以外に考慮すべき1次商圏の条件
一次商圏を距離や移動時間で決めるのは、最も基礎的な考え方です。実際の地域には、地図で見ただけではわからない人の流れや生活が存在します。たとえ商圏内だとしても、人の流れが無い地域では顧客の抱え込みは期待できません。
ここでは、それらを加味した一次商圏の解像度を高くするための条件について解説します。
既存顧客の約6~7割を占める
すでにほかの地域で出店したことのある業態の店舗を別の地域で開業、または出店する場合、
距離だけではなく既存顧客の割合で一次商圏を判断する方法もあります。
全体的な顧客や売上を見たときに、同じ属性の顧客数が6~7割程度を占めている範囲を一次商圏に設定することで、「実際にどの程度の範囲から顧客が集まっているのか」を明確にできます。
距離や地理で決めるとデータ先行型の商圏になりがちなので、顧客の割合を加味してよりリアルな商圏を見極めましょう。
地域の主な移動手段
一次商圏を設定する場合、商圏内に暮らす人々の「移動手段」も考えなければなりません。一次商圏の目安は徒歩15分ですが、エリア内の人口のほとんどが車移動だった場合、この目安は通用しません。
人々の主な移動手段が自転車や自家用車である場合「その移動手段でどのくらい時間がかかるのか」を考慮しましょう。また、移動手段が車の場合は、エリア内で車を所有している世帯がどの程度いるのか調べておきましょう。
商圏の分断要因を加味した商圏の形
商圏の設定でまず注目されるのは「距離商圏」と「時間商圏」です。
距離商圏とは、店舗からの半径距離で円を描いた範囲の名称です。
時間商圏は、徒歩や自転車・自動車などで店に来るまでどのくらいかかるかという移動時間を元にした商圏です。
これら2種類の商圏は、自店舗の商圏を決める際に重要な指標となりますが、それ以外にも商圏を分断する要因はたくさんあります。既存店舗と新店舗でも取り入れる商圏が異なるので、どのような手法で商圏を導き出せるのかチェックしておきましょう。
任意商圏
任意商圏とは、地図上にフリーハンド(任意の形)で商圏を作成する方法です。分析する地点を中心に自由な形状で商圏を設定できるため、鉄道や河川などを考慮した設定が可能です。
主に入り組んだ地形での商圏設定や既存店舗の売上・顧客で決めたい場合、自社競合を避けたい場合などに活用できます。
沿線商圏
沿線商圏とは、線路や幹線道路を基準としてその周辺に商圏を設定する方法です。
この方法を用いると、路線や道路をなぞるように細長い商圏が形成されます。線路沿いでの販促企画やロードサイド店舗の運営などに役立ちます。
逆算商圏(目標値商圏)
逆算商圏(目標値商圏)とは、国勢調査や推計データを元に商圏を設定する方法です。
まず、既存店舗の顧客データを分析して商圏の目安を作ります。その目安を元に、既存店舗の周辺で条件が合う顧客のいる範囲を設定します。事前データが無い地域で新規出店時に使われる、立地分析などの方法の一つです。
顧客商圏(シンボルカバー商圏)
顧客商圏(シンボルカバー商圏)とは、実際の顧客比率を参考にして商圏を設定する方法です。既存店のデータがある程度蓄積された状態で、商圏を設定し直す際に用いられます。周辺の顧客データを参照して商圏を引き直すという点では逆算商圏に近い設定方法です。
商圏には別の種類もある
商圏には、店舗周辺の一次商圏や足元商圏以外に、二次商圏・三次商圏などの範囲設定が存在します。一次商圏より来店率が下がる傾向はありますが、広い範囲の商圏についてデータを収集しておくと販促や集客に活かせるでしょう。
以下の記事で二次・三次商圏の範囲について距離や特徴を詳しく解説しているので、興味のある人はぜひ参考にしてください。
まとめ:一次商圏を知れば店舗の影響力が分かる
自店舗が影響を与えられる範囲を示す商圏は、どんな業種でも把握しておくべき存在です。特に影響力が大きい一次商圏は必ず設定し、その後の店舗運営で蓄積されたデータを元にブラッシュアップしていきましょう。
常に最新の一次商圏を把握していれば、顧客の動向や地域の特性を店舗経営に反映できます。エリアマーケティングGISなどの商圏分析ツールを使って、商圏の特性を掴んで商品やサービスの提供をおこなえば「顧客にとって必要不可欠な店」になれるでしょう。