エリアマーケティングとは?その定義と実施するポイントをご紹介
実店舗を構えてビジネスを続けていくためには、エリアマーケティングの知識と実践が欠かせません。とはいえ、何から始めたらよいか分からない、という方も多くいらっしゃるのではないでしょうか?
エリアマーケティングは、実店舗型のビジネスや特定の地域に向けた事業形態なら、とても重要な知識であり、店舗の経営者にとっても重要の施策になってきます。
そこで今回は、まさに今、自社・自店の販促に携わっていらっしゃるご担当者の皆さんに、今日からでも使えるエリアマーケティングのノウハウを、分かりやすくご解説していきます。
目次
エリアマーケティングとは「特定地域で売るための仕組みづくり」
エリアマーケティングとは、エリア(地域)でのマーケティング(売るための仕組み作り)の戦略と戦術を立てるための施策のこと。
つまり、自社・自店が出店している(あるいは、これから出店・営業しようとする)地域ならではの特性や環境を細かく分析し、その地域特性にあった営業・販売活動を行うためのマーケティング手法のことを指します。
実店舗でのビジネスや、地域での営業活動をおこなう際の必須プロセスとなっており、特定の地域で「売上を上げる」とか、「認知度を向上させる」といった課題に対して、非常に重要な施策の一つとなっています。
フィットネスクラブの新規出店をする場合のエリアマーケティングは
たとえば、もしあなたが「フィットネスクラブの新規店舗を出店する」というミッションを与えられたと仮定します。
新規店舗は、開業にあたって投下された資本が回収され、さらに利益を得られるお店とするために、月々一定以上の売上が見込まれる地域に出店される必要がありますよね。
そのためは、あなたはその出店予定の地域でどの程度の集客が見込めるのか、何名の新規会員を獲得できるかなど、事前にシミュレーションを立てなければいけません。
このシミュレーションを立てる際に考慮すべき要因としては、
- 男性と女性のどちらをメインターゲットとすべきか
- 年齢層はどの層なのか
- 月会費はいくらにすべきか
- 徒歩で通う人は多いのか、またその移動時間はどの程度か
- どのような設備を、どのくらい用意すべきか
などがあげられます。
もちろん、出店する際の条件は各企業によってさまざまですが、その自社・自店の条件をクリアできているエリアを選定しなければなりません。
加えて、出店するための土地・物件が空いていたとしても、近くに競合大型店舗があり、”カニバリ”(カニバリゼーション/共食い)状態になる可能性もあります。
また、その地域にターゲットとなるユーザー人口が少ない場合には、新規店舗を開店したとしても長く運営できないでしょう。現在は十分なターゲット人口が住んでいたとしても、「新しい鉄道路線ができて人の流れが変わる」など、将来的に人口が減っていくケースがあるかもしれません。
そのため、新規店舗を開業する際の事前のエリアマーケティングは、その地域で売上を上げ続けるために、非常に重要な活動の一つとなっています。
エリアマーケティングの目的とは?
上述の新規店舗事前リサーチはもちろん、ご紹介した以外にも、エリアマーケティングを実施するさまざまな目的があります。ここでは、その主な目的を”5項目”に整理してご紹介します。
目的その1:出店計画を策定するため
エリアマーケティングを実施する際には、まずは“出店計画の策定”を行います。
これはマーケティングのフレームワークの4Pに当てはめると、その重要性理解しやすいでしょう。
マーケティングの4Pは以下の要素で構成されています。
Price(プライス:価格)
Place(プレイス:場所)
Promotion(プロモーション:販売促進)
各要素のうち、実店舗を長期的に運営し続けるために、「場所」はとても重要な要素となっています。
加えて、しっかりと売上を上げられる「売る場所(=店舗)」を作るためには、不動産取引(売買/賃借)がからみ、莫大な初期費用(物件購入費用/賃借敷金等)もかかります。
通常、一度出店したあとは、そう簡単には移転できませんよね。
事前リサーチ不足で出店する場所を間違えると、マーケティング上の他の要素がいかに優れていても、実店舗として売上をあげ続けることはできないでしょう。それだけに、各社とも新規出店の前には非常に綿密なエリアマーケティングを行います。
目的その2:売上予測のため
「①出店計画)とも関係しますが、エリアマーケティングの強みは出店前に売上予測を立てられることです。
ご紹介したフィットネスクラブ新規出店の事例でいうと、
通常フィットネスクラブなどの業態であれば月会費制を取っていますので、獲得可能なおおよその会員数を試算すると、「会員数✖️月会費」でおおよその売上規模が決まります。
その売上規模が、家賃、インストラクター人件費や設備費と比べて採算が取れているかどうかで、新規店舗の成否を事前に判断できるでしょう。
目的その3:自社/自店舗の現状分析のため
エリアマーケティングは、新規出店が済んだらおしまい、ではありません。
既存店舗でも、自社の商圏からの集客状況が最適かどうか分析することで、売上を伸ばせる可能性があるかどうかを把握できるでしょう。
たとえば、ポイントカード制度や会員登録などのシステムを導入して、お客さんの住所情報を取得。自店舗を中心とした地図に住所情報を点で描き入れていくと「実は店舗からの直線距離は近いのに、A 地区からの集客は手薄だった」というような発見に結びつく可能性があるのです。
もしそのような気付きが得られれば、その地域に集中して折込チラシやポスティング、DM、Web広告を打つなどといった販促施策に結びつけられる可能性がありますね。
営業の効率化のため
比較的大きい事業規模の店舗では、同一行政区内に複数の店舗を展開しているチェーンも少なくありません。そのような企業では、店舗同士がよく連携を取って、販促施策が被らないように実施をしていかないと、重複や無駄が生じてしまいます。
たとえば、A町の住宅街の中心から、直線距離2キロメートルの距離にB店とC店があるとします。
こういった場合、両方のお店から新聞折込チラシを配布することはしませんよね。こういった場合では、「B店からは2キロだが、途中の川(大橋)がバリアとなってマイカーでの集客が難しいため、A町の〇〇エリアまでは、C店の商圏範囲とする」と決めていきます。
こういったように、ターゲットとなるユーザ層の分析だけではなく、自店舗への移動方法や地域性にフォーカスした分析も、エリアマーケティングの一つとなっています。
既存顧客、優良顧客の分析やトレンド把握
既存のお客さんでも、全員が同じ趣味嗜好を持っているわけではありません。
たとえば、同一店舗の周辺に戦前からの旧市街と、直近10年で開発されたニュータウンが含まれていたとします。
旧市街に昔から住んでいる年配層のお客さんと、10年前に子連れでニュータウンに引越してきた若い家族とでは、全く異なる購買行動をとります。
そのような購買行動の違いを、顧客管理・分析のツールやシステムなども併用して、お客様の特性データ収集。それぞれの居住地域の消費傾向や考え方の特性に合った商品をお客様にご提案する場合にも、活用できるようになるでしょう。
エリアマーケティング実施のポイントは「商圏」の把握すること
では、エリアマーケティングを実施する際のポイントは何でしょうか?
それは「商圏」の把握です。
「商圏(Trade Area)」とは、場所/地理的情報のことですが、
意味としては「自社・自店の潜在的顧客層が生活する範囲」を指します。
同じ地図を用いても、取扱う商品や店舗の形態(最寄品か買回品か/物品販売かサービス提供か)によって、商圏範囲は大きく異なります。
自社・自店にとって正しい商圏把握をすることが、商圏人口(潜在顧客)の顕在顧客化、そのための「売れる仕組みづくり」に繋がる第一歩となるのです。
ターゲットのユーザーがエリアにいることを確認
あなたが関わっている企業、店舗のターゲット(販売の対象者)が商圏内に何人いるか(商圏人口)を調査してみましょう。
例えば、調剤薬局と総合ドラッグストアなどではユーザー層が大きく異なりますが、取り扱う業種のターゲットが「この性別/年代層」と把握すれば、その商圏内の人口は地図と各種統計指標(国勢調査やデータ販売の会社の推計データなど)をかけ合わせることで算定可能です。数値化すれば、自店の商圏人口が想定より大きかった(小さかった)ということが分かるでしょう。
提供するサービスに需要があるかどうか
ポイント・カード・システムなどを併用することで、既存店、既存顧客の購買傾向について調べてみましょう。
その購買傾向と比較すると、商圏内の居住者は同じような購買傾向になりそうでしょうか?
実際に調査してみることで、もっと若い(年配の)人向け商品・サービスの方が、需要があるケースも少なくありません。
もし、新商品/サービスの売上がよくない場合、一度マーケティングの視点に立ち返って分析しなおすことも一つの有効なマーケティング施策になるでしょう。
ローカライゼーション
自店商圏内の男女比、年代比、家族構成などを細かくみていくと、提供する商品・サービスや販促手法について「ローカライゼーション(地域化)」していく必要がある場合があります。
一例として、食品スーパーが自店商圏の家族構成を調べたところ、「想定以上に年配の単身者世帯が多い」ということがわかりました。
その結果、単身者向けのお惣菜1人前パックの品揃えを拡充したところ売上が大きく伸びた、などの例があります。
施策の選択と集中
現在では「日本国内市場で同一商圏内に、競合他店が全く無い」ということは考えづらい状況です。
自店の商圏内で他店が強い地域と自店が強い地域、および他店に比べて自店が得意とする顧客層(性別/年代)などを分析から導き出すことができれば、その地域・ターゲットに向けて販促施策や価格施策などの「選択と集中」をすることで、施策効果を引き上げられます。
競合店の商圏エリアの分析
他店は、自店と全く同じ商圏範囲を持っているわけではありません。駐車場有無や最寄り駅から近さなどにより、来店のための所要時間が大きく異なります。商圏範囲の設定に際しては、物理的距離(何キロメートル)ではなく、徒歩/車/電車での移動に要する時間で計る、この時間距離という概念で線引きをするのが一般的です。他店の商圏を時間距離圏(15分圏/30分圏)で線引した時に、自店の商圏範囲に一体何%食い込んでくるものなのか。この大きさが分かることで競合の存在が「大きな脅威」なのか「大したことはない」ことなのか、も推測することができます。
まとめ:エリアマーケティングで商圏の最適化を
以前のエリアマーケティングでは「実際に足で歩いて、お客さんの顔を見るところから始める」といったようなことが行われていました。
しかし昨今では、パソコンや地図ソフトの性能が上がり、専用のツールも改良が重ねられ使いやすく、かつ安価になってきました。
事務室のパソコン上で試算する「机上の空論」でも、ある程度精度の高いエリアマーケティングの仮説を立てられるようになってきたのです。
競合する他店は、もう既にこの分析に真剣に取りかかっているかもしれません。あなたのミッションが新店開発であれ、既存店のテコ入れであれ、実店舗の施策見直しを迫られているのであれば、是非地図を取り出して具体的なエリアマーケティングの分析をはじめてみてください。
現在では、エリアマーケティングに特化した分析ツールもいろいろあります。その概要については、別コラムにてご紹介致します。